現代美術家の横尾忠則さんのアトリエには取材やインタビューでときどきおじゃましているのだが、今回はちょっと変わった訪問になった。横尾さんはまた来月に大きな展覧会を控えていて、絵の話から、生きていく上で心がけるべきことまで、今回もまた熱く話を展開してくれた。

2025年4月に展覧会「横尾忠則 連画の河」開催
数ヶ月前に〈ビジュツヘンシュウブ。〉という「コミュニティ」を立ち上げて、活動をしている。「コミュニティ」とは「オンラインコミュニティ」とか「サロン」という呼び方をする場合もあるが、ある領域やテーマを設定し、それに積極的に関わろうとする人たちを集めて活動する、あるいはメディアとなろうとするもの。
僕についていえば「美術」と「編集」をテーマにした「コミュニティ」をつくった。これまで自分が出版社の社員編集者としていくつかの雑誌の編集に関わり、出版社退職後はフリーランスとして、さまざまな雑誌で原稿を書いたり、書籍、展覧会カタログの編集をしたり、そして並行して、いくつかの大学で授業を受け持ったりした経験を活用したいというのがあったからだ。
具体的にこれまでの活動をいうと、活躍中のアーティストにトークをしていただいたり質問したり、有名建築家が設計した建物を見に行ったり、アーティストのアトリエ訪問をしたり、ちょっとした文章講座をした。

今回のレポートはそのアトリエ訪問。世田谷にある横尾忠則さんのアトリエを訪問した。横尾さんについては今さら詳しい説明は要らないと思うけれど、1960年代から活躍している日本を代表する現代美術家で、60年代にはパリ青年ビエンナーレの版画部門で最優秀賞をとっていたり、70年代の前半にはニューヨーク近代美術館で展覧会をやっていたりする。

僕が初めて横尾さんにインタビューさせていただいたのは80年代終わり頃で、雑誌は『ポパイ』だった。そのことは横尾さんは覚えていてくれてなかったが、1999年に『ブルータス』の表紙のアートワークをお願いして以来、何かと世話になっている。一緒に奈良の唐招提寺に取材に行ったり、その足で兵庫県宝塚市に宝塚歌劇を見に行ったりもした。横尾さん自身の展覧会があればもちろんインタビューするし、何年か前、オノ・ヨーコ&ジョン・レノン夫妻の展覧会があったときは横尾さんと夫妻の関わりについて話を聞いたこともあった。
今回は〈ビジュツヘンシュウブ。〉のメンバーと横尾さんのアトリエを訪問し、まず僕がインタビューする形で始めた。2025年4月26日から世田谷美術館で始まる「横尾忠則 連画の河」についての話から聞き始めた。和歌の上の句と下の句を複数人で分担して詠みあう「連歌」をヒントに、昨日描いた絵をもとに、今日は別の自分として絵を描く、そして翌日はまた別の自分が絵を描き連ねていく、独自の手法「連画」を展開する。そうやって、日々の時間を繋いでいくのだ。

「横尾忠則 連画の河」
会期: 2025年4月26日(土)~6月22日(日)
開館時間: 10:00~18:00(入場は〜17:30)
休館日:毎週月曜 ※4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館。5月7日(水)は休館
会場:世田谷美術館 1階展示室
横尾さんはこれまでの著作などでも、基本的に「考えるな、感じろ」とか、「思考じゃなく、体感せよ」というような話をされていて、誰もがアタマデッカチになってしまう現代人、現代社会に忠告、警告をしてきた。確かに横尾さんは全身で生きている感がある。横尾さんが言うと説得力もあり、わかるような気もするのだが、我が身を振り返ると、実践としてはなかなかその境地に至れないのが常だ。それでも、折りに触れ、そんな横尾さんの言葉を思い出さねばと心がけたいと思う。いや、思うではダメで、自然に身についていなければいけないのだろう。考える前に体が動くように。

展覧会に関して話を聞いた後、10名ほどの参加者全員が、横尾さんにいろいろな質問をした。こうして、アーティストと直接話をしたりするのがこのコミュニティ〈ビジュツヘンシュウブ。〉の活動の一つだ。現在も会員を募集中なので、興味のある人はこちらから詳細を見てほしい。

それにしても、横尾さんは1936年生まれ。来年は90歳になる。あの若さや感覚の鋭さはどこから来るのだろう。4月からの展覧会を楽しみにしておこう。
Yoshio Suzuki
編集者/美術ジャーナリスト。雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がける。また、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。前職はマガジンハウスにて、ポパイ、アンアン、リラックス編集部勤務ののち、ブルータス副編集長を10年間務めた。国内外、多くの美術館を取材。アーティストインタビュー多数。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。