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ART

2023.12.23

磯村勇斗「間違いなく一番好きなアーティスト」と語る、キース・ヘリングの魅力とは

2023年12月9日〜2024年2月25日の期間で、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて開催している展覧会「キース・へリング展 アートをストリートへ」。その東京展スペシャルサポーターであり、へリングを「一番好きなアーティスト」だと話す、俳優・磯村勇斗さんにへリングと展覧会の魅力を聞いた。

磯村勇斗
東京展のスペシャルサポーターを務める磯村さんは本展の音声ガイドも担当。「(キース・ヘリングへの)好きな気持ちを乗せました」というナレーションは必聴だ。

教科書で見たキース・ヘリングの絵にビビッときた

「アートはみんなのために」

その信念のもと1980年代のアメリカ・ニューヨークを中心に地下鉄やストリートなど、公共空間でアートを描き始め、瞬く間に注目を集めるアーティストとなったキース・ヘリング。

その思いの通り、へリングの作品は世界中の人々から愛され、この世を去って30年以上が経った今でもそれは変わらない。しかし、へリングの作品を目にしたことがあっても、パーソナリティの部分はあまり知られていない。

現在開催中の展覧会「キース・へリング展 アートをストリートへ」では、アイコニックなモチーフや6メートルの大型作品など、へリングの世界観を体現する150点もの作品とともに、へリングがどのような人生を歩んできたのかを紐解き、その正体に迫っている。

キース・ヘリング
ニューヨーク市営地下鉄にて撮影されたキース・ヘリング。
Photo by ©Makoto Murata

その東京展のスペシャルサポーターを務めるのが、俳優の磯村勇斗さん。大のへリングのファンでもある磯村さんが初めてへリングの作品に触れたのは、大学生の頃だったという。

「大学で美術を専攻していたのですが、アメリカン・ポップカルチャーを勉強していた時にキース・ヘリングの絵が教科書に載っていて、それを見た時に、ビビッときたんですよ。何かわかんないけど、『この絵が好きだ』って。

どの作品だったかは覚えていませんが、《スリー・リトグラフス》の『人の梯子』のような人の集合体でした。絵なので止まっているはずなのに、なんで動いて見えるんだろうって思ったんですよね。身体の動きを表現する線(アクションライン)の効果や人のちょっとした動き具合だとは思うんですが、止まっている絵をこんなにも楽しく見せることができるんだと、衝撃を受けました。そこから他の作品を見るようになって、どんどん好きになっていきましたね」

周りに何と言われようが好きなことを貫き通す

磯村さんは、へリングの絵に対する思いも魅力のひとつだという。

「キースはとにかく絵を描くことが大好きで、誰に何を言われようが自分の“好き”の気持ちを貫き通してとことん描き続けた。僕自身も周りに反対されながらもずっと役者をやりたいって口にしてやってきたので、そのマインドはすごく共感します」

31歳でこの世を去ったキース・ヘリングが伝えたかったこと

そんなへリングだが、アーティストとしての活動期間はわずか10年程。しかしそのなかで、社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足など、社会へのメッセージをアートで訴え続けてきた。

奇しくもへリングが亡くなった年齢と同じ31歳、そして俳優デビューから約10年という磯村さんは、展覧会で改めてへリングが残した作品に触れ、驚きを覚えたと話す。

「10年という短い中で、絵を描いてきて、それが今なお、世界で知られているっていうはやっぱり不思議。もちろんキースの魅力もあると思いますが、今でも僕らに刺さるっていうことは、キースが生きていた時代から変わってない部分があって、その問題に僕たちも向き合っていかなければならないとキースの作品は教えてくれる。20代でいろいろなものが見えていたっていうのが、僕の中では考えられないですね」

数多くある展示作品のなかでも特に惹かれたのが《ブループリント・ドローイング》。パートナーをエイズで亡くし、自身もエイズと診断されたへリングが亡くなる1ヵ月前である1990年1月に版画で過去のドローイング作品を再制作した17点のシリーズだ。

磯村勇斗
磯村さんが特に惹かれたという《ブループリント・ドローイング》の展示スペース。

「作品が展示されている空間作りも含め印象に残っていて、ちょっと暗い中に、モノクロの版画で作られた作品が並んでいます。キースが死の宣告を受けて、今までやってきたアート人生を振り返りながら制作した作品なのですが、悲しい部分を感じつつも、でもすごいパワフルで、結構皮肉な部分もあったりして。さらにそれを暗く描くのではなく、明るく描いているところが、やっぱりすごい。痺れましたね。ぜひ、注目していただきたい作品です」

《ブループリント・ドローイング》の他にも晩年の作品からはへリングの信念を強く感じさせられた。

「死を知りながら、物作りをするっていうのは、どんな気持ちだったんだろうか。その時代にキースが描いた絵を見ると、 《ブループリント・ドローイング》もそうでしたが、どの作品も明るく生きていこうとしていたんじゃないか、そして作品を見てくれる人の立場に立って、『アートはみんなのために』を、最後まで心の中に秘めながら描いたんじゃないかな、と感じさせられました。

今回の展覧会では、キース・ヘリングが、どのような人生を歩んできたのか、皆さんが見たことのある絵の背景にはどういった思いがあるのかを知れるチャンスだと思います。ぜひ皆さんに、お越しいただけたら嬉しいです」

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=山本倫子 

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