圧巻の存在感を放つ絵画から彫刻、映像作品まで、さまざまな手法で作品を作りだす表現者たち。アート業界に新風を巻き起こす新進気鋭のアーティスト10人を厳選! 今回は、彫刻家の瀬戸優氏を紹介する。【特集 アート2023】
等身大の彫像で動物たちの生命感を表す
フクロウやヒョウ、オオカミ、サイにライオン……。猛々(たけだけ)しい野生動物の姿を、素焼きのテラコッタ(土器)としてかたどり、彩色して仕上げる。それが彫刻家・瀬戸優氏の制作スタイルだ。
創作の現場たる都内のアトリエへお邪魔してみると、空間のそこかしこに動物たちが佇んでおり、その息遣いまで聞こえてきそう。なぜ瀬戸作品にはかくも生々しい存在感が宿るのか。
「造形時に何より大切にしているのは、瞬発力。時間をかけず即興的につくっていきます。手の跡や粘土の表情、色の塗りムラが残るくらいでいいんです」
そのほうが作品のリアリティはぐっと増すという。なぜか。
「例えば動物の剥製を思い浮かべると、外側が実物の毛皮に覆われていて、目にした瞬間は『本物? 生きてる?』となりますよね。でもよく見れば死んだものと気づくので、生命感は読み取りづらい。僕の作品は、この逆を行きたい。パッと見て明らかに人の手がつくったものとわかるのに、じっくり見るほど生きているように思えれば、見る人に生命感を受け取ってもらえるのではと考えています」
ガラス製の玉眼(ぎょくがん)をはめこんであるのも、瀬戸氏の作品がリアリティを持つ要因だ。
「玉眼によって目に光を宿し、生命感を引きだそうとしています。本物の動物と対峙した時も、目を合わせる動作によって認識が完了するものですし」
10代でアートを志し、その気持ちがブレたことはない。
「高校生までは数学や物理が一番得意で、理系の大学進学を目指していました。ある時、自分の将来を真剣に考えて、一日中数学の問題を解いていろと言われたらつらいなと気づいた。美術ならどうか。小さい頃から絵を描くのは好きで、それなら何日でも続けられると思い、美大に進路変更しました」
以来、創作に邁進。学生時代から彫刻家を名乗り、グッズなどの販売も自ら手がけた。「つくりたいモチーフやテーマは無限」と言うとおり、新たなカタチを生みだす情熱は尽きない。
<How to See>
公式HP:www.yuseto.com
Instagram:@yu_seto1222