ART

2023.03.23

「人間以外の生きものとの協働作業」気鋭の現代美術家・AKI INOMATAとは

圧巻の存在感を放つ絵画から彫刻、映像作品まで、さまざまな手法で作品を作りだす表現者たち。アート業界に新風を巻き起こす新進気鋭のアーティスト10人を厳選! 今回は、現代美術家のAKI INOMATA氏を紹介する。【特集 アート2023】

現代美術家・AKI INOMATA氏

現代美術家・AKI INOMATA
1983年東京都生まれ。動物とともに制作した作品シリーズを続々と発表。ニューヨーク近代美術館や十和田市現代美術館など国内外で展覧会多数。現在、森美術館「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(2023年3月26日まで)に出品中。

コントロール出来ない面白さ

自身の創作活動を、「人間以外の生きものとの、協働作業です」と言い表すのが、現代美術家のAKI INOMATA氏だ。

都市をかたどった3Dプリンター製の「やど」をヤドカリに提供してみたり、ミノムシにカラフルな布片をわたして装いを新たにさせたり。生きものにさまざまな働きかけをすることによって、その応答を作品化していくのが、彼女のいつもの創作手法である。

AKI INOMATA『やどかりに「やど」をわたしてみる』

ヤドカリが世界各地の都市を模した“やど”を背負う『やどかりに「やど」をわたしてみる』。

AKI INOMATA『girl, girl, girl…』

ミノムシが美しい布片をまとっていく『girl, girl, girl…』。

リアルな動物たちと真正面から向き合うAKI INOMATA氏の作品は、人間と動物が種の垣根を超えて安易にわかり合えるといった考えと、はっきり一線を画している。

「生きものと一緒に創作していると、こちらが考えつきもしないことばかり巻き起こります。他者と自分がいかに違うかを、毎度思い知らされるんです。私なんかが到底コントロールできない振る舞いと向き合うことで、相手も自分も変わっていくのが面白い」

現在、森美術館のグループ展(2023年3月26日まで)でお披露目中なのは、ビーバーに角材をわたし、齧(かじ)って彫刻をつくってもらう『彫刻のつくりかた』(2018)だ。人体を少し抽象的に表したような彫像が会場に並び、ビーバーたちの見事な彫刻家ぶりに驚かされる。

ビーバーが齧った木彫

ビーバーが齧った木彫と、人による模刻、機械による模刻を比べて展示。

「ビーバーによる造形美を存分に楽しむのもいいですし、作品のつくり手とはいったい誰なのかということを考えるのも面白いですよ。角材を齧(かじ)ったビーバーがまずはこの作品の実作者かと思えますが、木をわたした私こそ作者だと主張することだってできそう。またどの彫像も螺旋状になっているのは、木材の節を避けながらビーバーが齧ったから。ということは、ただの材料と思っていた木それ自身がビーバーを巧みに操り、この造形を導いたとの考えも成り立ちます。他者との協働には、どこまでも想像を膨らませる余地があって、興趣(きょうしゅ)が尽きません」
 
AKIINOMATA氏の作品の鑑賞者は、世の摂理やものごとの関係性について、作家とともにつど探究させられるのだ。

AKI INOMATA『進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)』

化石のCTスキャンデータから復元したアンモナイトの殻とタコを出会わせた『進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)』。

<How to See>
公式HP:www.aki-inomata.com
Instagram:@akiinomata

【特集 アート2023】

TEXT=山内宏泰

PHOTOGRAPH=古谷利幸 撮影協力=森美術館

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ1月号』が2024年11月25日に発売となる。今回の特集は“シャンパーニュの魔力”。日本とシャンパーニュの親和性の高さの理由に迫る。表紙は三代目 J SOUL BROTHERS。メンバー同士がお互いを撮り下ろした、貴重なビジュアルカットは必見だ。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる