圧巻の存在感を放つ絵画から彫刻、映像作品まで、さまざまな手法で作品を作りだす表現者たち。アート業界に新風を巻き起こす新進気鋭のアーティスト10人を厳選! 今回は、現代美術家のAKI INOMATA氏を紹介する。【特集 アート2023】
コントロール出来ない面白さ
自身の創作活動を、「人間以外の生きものとの、協働作業です」と言い表すのが、現代美術家のAKI INOMATA氏だ。
都市をかたどった3Dプリンター製の「やど」をヤドカリに提供してみたり、ミノムシにカラフルな布片をわたして装いを新たにさせたり。生きものにさまざまな働きかけをすることによって、その応答を作品化していくのが、彼女のいつもの創作手法である。
リアルな動物たちと真正面から向き合うAKI INOMATA氏の作品は、人間と動物が種の垣根を超えて安易にわかり合えるといった考えと、はっきり一線を画している。
「生きものと一緒に創作していると、こちらが考えつきもしないことばかり巻き起こります。他者と自分がいかに違うかを、毎度思い知らされるんです。私なんかが到底コントロールできない振る舞いと向き合うことで、相手も自分も変わっていくのが面白い」
現在、森美術館のグループ展(2023年3月26日まで)でお披露目中なのは、ビーバーに角材をわたし、齧(かじ)って彫刻をつくってもらう『彫刻のつくりかた』(2018)だ。人体を少し抽象的に表したような彫像が会場に並び、ビーバーたちの見事な彫刻家ぶりに驚かされる。
「ビーバーによる造形美を存分に楽しむのもいいですし、作品のつくり手とはいったい誰なのかということを考えるのも面白いですよ。角材を齧(かじ)ったビーバーがまずはこの作品の実作者かと思えますが、木をわたした私こそ作者だと主張することだってできそう。またどの彫像も螺旋状になっているのは、木材の節を避けながらビーバーが齧ったから。ということは、ただの材料と思っていた木それ自身がビーバーを巧みに操り、この造形を導いたとの考えも成り立ちます。他者との協働には、どこまでも想像を膨らませる余地があって、興趣(きょうしゅ)が尽きません」
AKIINOMATA氏の作品の鑑賞者は、世の摂理やものごとの関係性について、作家とともにつど探究させられるのだ。
<How to See>
公式HP:www.aki-inomata.com
Instagram:@akiinomata