東京・六本木で日本酒の祭典を開催する中田英寿氏。本誌でもおなじみの食のスペシャリストの想いとは――。

元サッカー日本代表。引退後2009年より日本全国を巡る旅を開始し、各地の食文化を深く掘り下げる。なかでも日本酒は400を超える酒蔵を訪問。2015年にはJAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立し、日本酒開発や日本酒アプリ「Sakenomy」を手がけるなど幅広く活動する。
中田英寿が手がける日本酒の祭典
中田英寿氏がオーガナイザーを務める厳選された日本酒と人気レストランの食事が楽しめるイベント「CRAFT SAKE WEEK」。2016年から東京・六本木ヒルズを舞台に開催され、2025年で7回目を迎える。今回も毎日変わる日本酒のテーマに合わせて、日替わりで酒蔵が10蔵ずつ登場。4月18日から29日までの12日間の会期中に、日本各地から合計120蔵が集結する。
また美酒だけでなく、予約困難、あるいは隠れた名店など国内外で高い評価を得ているレストランのシェフたちが腕を振うことでも注目されている。供されるのは日本料理や焼鳥、フレンチ、イタリアン、スパニッシュ、エスニック、中国料理など多彩なジャンルに及んでいるのも特徴だ。そこには日本酒業界の発展に尽力する中田氏の意図がある。
「さまざまな味わいの日本酒を幅広いジャンルの料理と一緒に飲んでみるという体験をとおして、和食だけでなく、どんな料理にも日本酒が合うということを知ってもらう機会になればと思っています。イベントでは外国の方も多く来られるので、結果として日本酒市場が国内外に広がっていくきっかけになれば嬉しいです」

日本酒の味わいを深める粋な空間演出
日本の食文化を楽しみながら新たな創造にもつなげていくことも目的とする「CRAFT SAKE WEEK」では、会場の設(しつら)えにもこだわっている。毎年テーマを変え、新進気鋭の建築家に空間演出を依頼。2025年はMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏氏と原田麻魚(まお)氏が担当する。
インスタレーションのテーマは「棟上(むねあ)ゲ」。“建て方”と呼ばれる家の工事で、最後の部材・棟木をとりつける際、無事に骨組みができあがったことに感謝し、日本酒が供される。その空間を、六本木ヒルズに再現。木材とワイヤーを、テンセグリティ構造(張力と圧縮を利用した骨組み)を用いて組むことで、木が空に浮いているようなインスタレーションに仕上がっている。また木材は檜を使用。その香りが会場を包みこみ、より味わい深い一杯を演出する。
年々進化している日本酒の“今”を体感
最終日の4月29日は、毎年最多の来場者を誇る「チーム十四代」が登場。日本酒新時代を切り拓き、その入手困難さから幻の酒とも呼ばれる「十四代」。蔵元である高木酒造を筆頭に、高木酒造と親交が厚く、切磋琢磨しながら日本酒業界を盛り上げていく10蔵がイベントのフィナーレを飾る。
高木酒造の髙木辰五郎氏は中田氏とは15年来の仲であり、「CRAFT SAKE WEEK」には初回から参加。これまでのイベントの進化を見てきた人物でもある。
「年々パワーアップしています。来場者も、リピーターはもちろん、もっと日本酒のことを知りたいという方たちも増えているので、お酒を注ぎながら会話も弾みます。私たち酒蔵にとっても励みになり、嬉しいことですし、中田さんの思いが届いているのだと実感します」(髙木氏)
また中田氏はイベントをとおして出品された酒の売れ行きや、似た味わいの銘柄のなかでランキングを出すなど、詳細なデータを蔵元にフィードバックしている。それも日本酒業界の発展を願ってのことだ。
最終日はレストランも圧巻。チーム十四代を率いる髙木氏も「毎年名店ばかりで素晴らしい」と絶賛するレストランは、フレンチ、イタリアン、日本料理、焼鳥、焼肉と多彩なジャンルの、予約が取れない名店がこの日のためだけに特別に出店する。これだけの酒蔵とレストランが一堂に会することはおそらくない。この貴重な機会を逃してはいけない。

CRAFT SAKE WEEK 2025
日時:2025年4月18日(金)~29日(火・祝)15:00〜22:00(L.O.21:30)、土曜・日曜・祝日12:00〜21:00(L.O.20:30)
場所:六本木ヒルズアリーナ
料金:スターターセット¥4,200(オリジナル酒器グラス+飲食用コイン12枚)
※2回目以降の来場の際は、スターターキットの酒器グラスを持参すると、追加コイン購入のみで楽しめる。
HP:http://craftsakeweek.com
日替わりのテーマに合わせて酒蔵が登場。18日「泡の幕開け」/19日「SAKEテロワール」/20日「進化する伝統」/21日「SAKEの自由形」/22日「SAKE TRIP」/23日「歴史が醸す一献」/24日「新風SAKE」/25日「SAKE DIVERSITY」/26日「SAKEレジェンド」/27日「ジューシーフレッ酒」/28日「職人が愛するSAKE」/29日「チーム十四代」。