“白ワインの最高峰”と言っても過言ではないのがブルゴーニュの「ドメーヌ・ルフレーヴ」が造るピュリニー・モンラッシェだ。2025年1月に当主のブリス・ド・ラ・モランディエール氏が来日、ドメーヌ・ルフレーヴのワイン造りの哲学と、自身のキャリアについて語ってくれた。

50歳を過ぎてワインを一から学んだ、元凄腕ビジネスパーソン
「ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ レ・ピュセル 2022」を口にした時、香水を思わせるようなフローラルで華やかな香りと透明感に満ちた美しい味わいに圧倒された。生産者は“ピュリニー・モンラッシェ随一”と称される「ドメーヌ・ルフレーヴ」で、ジョセフ・ルフレーヴ氏が20世紀初頭に一族の畑を相続、ドメーヌを設立した。
飛躍の転機となったのは第二次世界大戦が終了した1950年頃。当時は、まだワインの樽売りをしていた時代で、ドメーヌの評判を聞きつけたアメリカ人から「ボトルで売って欲しい」と依頼され、元詰め(ドメーヌでボトリングすること)を始めたことだった。
「ドメーヌ・ルフレーヴ」の高い評価は世界的に広まり、さらに、後継者たちのたゆまぬ努力によって、今日の名声が築かれたのだった。ワインの世界でも著名なのがジョセフ氏の孫であるオリヴィエ氏とアンヌ・クロード氏で、オリヴィエ氏は自身のワイナリー「オリヴィエ・ルフレーヴ」を設立してドメーヌを離れ、一方、その後を継いだアンヌ・クロード氏はビオディナミ栽培の大家として注目され、さらにドメーヌの名声を引き上げた。

フランス・ブルゴーニュ地方。シャルドネ100%。バラやカトレア、洋梨など花と柑橘の香り。セージやセルフィーユなどのハーブのニュアンスも。ピュアな酸としなやかなミネラル、バランスのよい味わいが丸い球体を思わせる。この上なく上品で華やか。750ml/¥176,000
だが、アンヌ・クロード氏は2015年に急逝、その後継者として白羽の矢を立てられたのが、オリヴィエ氏とアンヌ・クロード氏の甥にあたる現当主のブリス・ド・ラ・モランディエール氏だった。幼少時からワインを身近に育ってはいたが、大学卒業後はワインとはまったく関係のない製造業に従事し、成功を収めていた。会社の経営者として3,000から5,000人の従業員を抱えたこともあったというビジネスパーソンだった。
「30年間、海外でインターナショナルな企業を率いてきましたから、ファミリーの面々は私ならドメーヌを統率できると考えたのでしょう(笑)。とはいえ、肝心のワイン造りについては何も知らない。ですから、ポリテクニーク(職業教育の大学)に入学し、栽培や醸造を一から学びました。50歳を過ぎてね(笑)。もちろん、ドメーヌの歴史についても。そこで決心したのは、代々の歴史を大切にしつつ、ファミリーが造っていた“喜びのあるワイン”をみずからの手で生み出すことでした」

ド・ラ・モランディエール氏があらためて認識したのは“テロワールに敬意を払うこと”で、これをワイン造りの大きな目標とした。彼の考える“テロワール”とは土壌や気候だけでなく、ピュリニー・モンラッシェという村そのものであり、そこで生きる人々や土地の文化までも意味するという。「ワインを生み出すのはブドウ。この地で育つブドウの個性をボトルに詰めたい」。彼が純然たるビオディナミを継続するのもそういった考えからだ。
「ビオディナミは自然に従う謙虚なもの。あらゆる生命を大切にする栽培法だと思います。虫などの生物のみならず、雨や風などとも一緒に生きている感覚がありますね。ですが、ビオディナミ農法農法であることが大切なのではありません。飲んだ人が『ルフレーヴらしいワインだね』と笑顔になる。それが、私たちにとってとてもううれしいことなのです」

ドメーヌ・ルフレーヴのピュリニー・モンラッシェは、毎年名だたるワイン評論家やコンペティションにおいて高得点を連発、ワイン愛好家にとっては垂涎の1本となっている。
だが、このワインの魅力はそれだけではない。ボトルの奥にある土地の声に耳を傾け、生産者の思いに向き合ってみれば、奥深く品格に満ちた表情を見せてくれるはずだ。
問い合わせ
ラック・コーポレーション TEL:03-3586-7501