今、行くべき沖縄の美食レストランをまとめてお届け! ※GOETHE2024年9月号掲載記事を再編。
1.フレンチの匠が新天地・沖縄で魅せる集大成「デルニエ・シャピートル・K」に潜入
ミシュランガイドの“レッド”に対して“イエローグルメガイドブック”と呼ばれ、世界中の食通に愛読されている『ゴ・エ・ミヨ』。2024年版では沖縄のレストランが8軒選出されていることからもわかるとおり、最近はそのレベルも注目度も急上昇している。
食も人生の楽しみのひとつと捉える人にとって、自分が拠点を置く場所の美食レストランをいくつか知っておきたいものだが、その答えを那覇に求めるならば美栄橋の「dernier chapitre k」は、絶対に外すことのできない1軒だ。オープンは2024年3月と新しいが、厨房で腕を振るうのが、日本のフランス料理業界の黎明期を支えた井上桂三シェフと聞けば、そのニュース性の高さに驚く人も多いだろう。
18歳の時に伝説のレストラン「ステラマリス」で修業を始め、吉野建シェフの右腕として頭角を現し、24歳で渡仏。その後、フランスの名だたる店で働き、帰国後は当時、国分寺のグランメゾンとして知られた「シェ ジョルジュ・マルソー」へ。40歳の時に西麻布に構えた自身の店には、食通はもちろん同業者も多く訪れた。
2.まるでアート! 古宇利島にある注目の沖縄フレンチ「6 SIX」
コバルトブルーの海と古宇利大橋を望む眺めが素晴らしい「6 SIX」。コースがスタートした途端次々に運ばれてくるアミューズブーシュに目が釘づけに。色も形も食材も実にさまざまな14、5品ものミニチュア料理がテーブルを埋め尽くす。
器使いもユニークで、作家ものもあれば、サボテン、乾燥させた豆の鞘、石、流木など森や海で見つけたもの、ワイヤーや木の端材で手づくりしたものなどモダンアートさながらだ。
シェフの小杉浩之さんは名古屋でフランス料理店を営んでいたが、2018年に沖縄に移住。
「この土地が持つパワーが自分のなかに宿ってインスピレーションを刺激してくれた。アイデアが次々に湧いてくるんです」
沖縄の食材を中心に熟練のフレンチの技術と卓越したセンスで唯一無二のひと皿に仕立てる。
3.沖縄食材のみを使用、うるま市の注目フレンチ「モヴェズ エルブ」に潜入
食通たちを惹きつけてやまない、本島中部の小さな食空間「Mauvaise herbe」。オーナーシェフは東京からフランスでの研鑽を経て、沖縄で出張料理人として活動する小島圭史さん。自らの料理人生を11皿のコースに仕立てて提案する。
「調味料以外すべての食材は沖縄から」。そんなひと言を添えたメニューには、「根」「葉」など自ら採取する野草やハーブ、「マベ」「シロガシラ」「琉球猪」など駆除対象の有害鳥獣類や未利用資源が名を連ねる。小島さんの料理はそれらの“命”と向き合うことに始まり、寝かせ、発酵、塩分調整、離水など、時に気の遠くなるほど丁寧な下ごしらえを経るものもある。
4.“パスタ好き”が集う人気イタリアン「PASTAIONE」が、沖縄に移転オープン
店名の「パスタイオーネ」とは“パスタ好き”を表す造語だという。その店名で親しまれた麻布十番の人気イタリアンが場所を沖縄に移し、第二章をスタートさせた。
新たな核となるのは、ピエモンテやトスカーナを中心にイタリアを8年間渡り歩き、東京で手腕を開花した玉城愛子シェフの骨太な料理。旬菜を絡めるガルガネッリやピチ、イカ墨を練りこんだタリオリーニなど本場仕込みの技が生む手打ちパスタのアレンジメニューを中心に、「セーイカのタリアテッレ仕立て」「あやはし牛のLボーン炭火焼き(要予約)」など、県産食材を軸にしたイタリア各州の郷土料理が脇を固める。
5.幻の名店シェフが開業、沖縄の注目カウンターイタリアン「Totto」に潜入
東京で熟した食への情熱を抱え、イタリアで4年半。フィレンツェからヴェネトに渡り、オステリアの立ち上げにも携わった潮平里志シェフ。幻の名店ともいわれた北谷のレストラン「ARDOR」のシェフとして沖縄に帰郷後は、地元食材の可能性に焦点をあて続ける。その精度を極めるため、2022年秋に開店した自身の店が「Totto」だ。
宜野湾市嘉数の住宅街。どこかラボのような店内奥には、手入れの行き届いた厨房とL字に組んだ8席のカウンター。ここで驚きに満ちた8皿のコースが供される。
「4%の塩で発酵させた青パパイヤ、3日間低温で乾燥させた赤ピーマン、水分を抜き燻製にかけた玉ねぎなど、丁寧に素材の美味しさを引きだします」と潮平シェフ。