恵比寿に店を構えて20年、食通に愛され続ける日本料理店『賛否両論』のマスター、笠原将弘氏。日々食に全力投球する男が選ぶのは、素材を生かして丁寧につくられた正統派ご飯のお供だった。
白いご飯と数種類のお供があれば、他に何もいらない
「店では〆に炊き込みご飯をお出ししていますが、個人的には白いご飯が好き。白いご飯と美味しいご飯のお供が数種類あれば、メインはいらない。そう思うようになったのは、年のせいかな(笑)。ご飯のお供がずらりと並ぶ朝食ブッフェなんて理想的ですね」
幼少期から父の営む焼き鳥店を手伝い、名門懐石料理店で9年間修業するなど、独立前も含め、人生のほとんどを日本料理と対峙してきた。そんな“ご飯を炊くプロ”が、今最も好きなお米の銘柄は、佐賀県の「ゆめしずく」、青森県の「青天の霹靂」、新潟県の「米山プリンセス」。
「おいしいご飯を炊く秘訣は、『お米はゴシゴシ研ぎすぎない』『30分以上浸水させ、お米の芯まで水分を行き渡らせる』『ざるにあげてしっかりと水気を切り、鍋に移したら新しい水を注いで炊く』の3つ」
理想は土鍋を使って炊くことだが、たとえ炊飯器でも上記3つのポイントを押さえれば、いつもとは、一味も二味も違うご飯になるという。ちなみに『賛否両論』では土鍋を使い、最初は強火にかけ、ふたの穴から蒸気が出てきたら中火にして5分炊き、その後弱火で15分炊いて、火を止めた後5分ほど蒸らしている。
「土鍋で炊くのは難しいと思われがちだけど、お米1合あたり水180㏄という水加減さえ間違えなければ大丈夫。炊飯器より早く炊けるし、おいしいし、最高ですよ」
笠原将弘の究極のご飯のお供4選
1. 雲月「小松こんぶ」
塩加減、柔らかさ、どれをとってもパーフェクト!
「地方に行くと必ずといっていいほど、その土地ならではのご飯のお供を買って帰ります」
そんな“ご飯のお供フェチ”、笠原氏をして、「塩加減もやわらかさも、すべてにおいてパーフェクト」と言わしめるのが、京都の懐石料理店、雲月の「小松こんぶ」。厳選した昆布を極細にカットし、「塩辛くなく、柔らかく、えぐみのない味」に仕上げた、同店のロングセラーだ。
「初めて口にしたのは、4年前。僕が甘いものが苦手だと知っている仕事仲間が、バレンタインデーにチョコレート代わりに贈ってくれたんですが、一口でそのおいしさにはまりました」
以来、自分用に買い求めるだけでなく、ギフトや手土産にも活用するほどのお気に入りに。
「贈り物の鉄則は、日持ちがして、常温で保存できて、手軽に食べられること。その点でも、この塩昆布は最適です」
2. 岡畑農園「白干梅」
しょっぱくて酸っぱい、懐かしさを感じる昔ながらの梅干
1968年、紀州でも指折りの梅の産地、田辺市上芳養に創業した岡畑農園。使用するのは、自社農園でていねいに栽培した完熟梅のA級品。 なかでも傷や斑点がなく、皮が薄くて、果肉の柔らかなものだけを人の目で選別し、最新技術も取り入れながら、安心・安全・おいしさにこだわった、唯一無二の梅干をつくっている。
笠原氏の推しは、塩だけで漬けた「白干梅」。薄味の梅干が主流となっている今、塩分20~23%と昔ながらの味を伝える貴重な逸品だ。
「仕事がらみでいただいたのですが、昔ながらのしょっぱくて酸っぱい、懐かしさを感じる味。果肉も柔らかくて、1粒でご飯1杯いけちゃいます」
3. 風土食房「ネギイチバン」
卵かけご飯と合わせるのにハマり中!
生産量日本一を誇りながら、埼玉の深谷ねぎや群馬の下仁田ねぎなどに押されて、いまひとつ注目されていない千葉県のねぎ。それを全国にアピールすべく、千葉県を中心に放送しているラジオ局、BAYFM78とのコラボで生まれたのが、この商品。千葉県産の長ねぎを粗みじん切りにし、千葉県産ショウガと千葉県産丸大豆醤油を合わせるなど、千葉愛が満載。塩、唐辛子、ごま油、ひまわり油もプラスされ、子供でも食べやすいピリ辛具合に仕上がっている。
「ねぎを使った万能調味料ですが、ご飯にかけてもめちゃくちゃおいしい! 私は、卵かけご飯にかけるのにハマっています」
4. 小が理商店「塩うに」
おにぎりでいただいた時の感動は忘れられない!
「東日本大震災の復興支援で現地に行った際、小が理商店さんと知り合いました。いろいろな海産物加工品を扱われていますが、どれもおいしくて、誠実につくられていることが伝わってきます。『塩うに』はおにぎりでいただいたのですが、あの時の感動は今も忘れられません」
岩手県宮古市で100年以上の歴史を誇る小が理商店は、冷凍・冷蔵技術のない時代から、三陸の魚類を卓越した技術と知恵で加工。6月から7月下旬にかけて三陸で捕れるうにを、宮古産の塩を使い、昔ながらの製法で仕上げる「塩うに」は、コクと甘みがたっぷりと。特別な日に味わいたい、贅沢なご飯のお供だ。