GOURMET

2023.06.28

名店の系譜を継ぐ江戸前鮨で食通を魅了する、銀座「鮨 こばやし」

正統な江戸前とは? 江戸前鮨の仕事とは? 江戸前の意味があやふやになってきた昨今。名店出身の鮨職人の店で「正統」に今一度触れてみたい。今回は、銀座の「鮨 こばやし」を紹介する。

「鮨 こばやし」のカウンター

江戸時代の立喰屋台を思わせるような屋台屋根のある内装。6席のカウンターをひとりで手際よく切り盛りする店主、小林徹靖氏。

名店で磨いた腕と心で、舌の肥えた客を魅了

銀座の『鮨 太一』で4年、『新ばし しみづ』で4年半修業と聞けば誰もが興味をそそられる。石川太一氏とは、『太一』を開く前の修業先『鮨 逸喜優(いっきゅう)』で出会い、その人柄に魅せられ慕うようになり、しつけ親として成長を助けてもらったとか。

「若いうちに海外も見ておいたほうがいい」と言われ、石川氏の元を巣立った後はパリの「OKUDA」の鮨部門を開業から3年間ひとりで任された。そして帰国後「しみづ」へ。「『鶴八』系の流れを汲む江戸前の仕事はとても勉強になった」と小林徹靖氏。二番手まで務め上げて2022年12月独立にいたった。

鮨職人として華やかな経歴だが「鮨屋ですから普通の鮨を握りたい」と極めて硬派。

赤酢の利いたやや硬めのシャリをふわっと握る。ひと手間かけたネタは柔らかく寄り添い、シャリと一体化して喉を通る。エッジが効いているけれど優しい江戸前鮨の粋を実感。

「鮨 こばやし」の鮪の赤身

鮪の赤身。

「鮨 こばやし」の小肌

小肌。握りはいずれもいい意味で派手さがないオーソドックスなスタイル。口に入れるとシャリとネタの一体感が喉を通るまで続き、小林氏の静かな鮨愛を感じる。つまみも握りもお好み、あるいはおまかせなど自在に対応してくれるのも嬉しい。

「鮨 こばやし」の毛蟹の酢の物

毛蟹の酢の物。つまみは鮨ネタを利用してシンプルに。

昼は握りのみのおきまりなら8000円と懐に優しく、お好みでもおまかせでもと頼み方は客しだい。両親方の紹介でやってくるツウな客との世間話も軽妙に交わし、決してネタや仕込み自慢はしない。

筋の通った姿勢に名店の系譜を感じさせてくれる。

鮨 こばやし/Sushi Kobayashi
住所:東京都中央区銀座8-2-10 銀座誠和シルバービル1F
TEL:都合により非掲載
営業時間:12:00~14:00/17:30~22:00
定休日:不定休
座席数:カウンター6席
料金:昼おきまり¥8,000~、夜おまかせ¥18,000~、昼夜ともにお好み可

TEXT=藤田実子

PHOTOGRAPH=太田隆生

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