GOURMET

2023.06.29

名店の技を継承し進化させた、青山に佇む江戸前鮨の店「あき」

正統な江戸前とは? 江戸前鮨の仕事とは? 江戸前の意味があやふやになってきた昨今。名店出身の鮨職人の店で「正統」に今一度触れてみたい。今回は、青山の「あき」を紹介する。

「あき」のカウンター

樹齢350年、吉野檜の一枚板のカウンターが圧巻。東京の店は真っ白だが、山口の店は、遊郭をイメージしてワインレッドの内装で粋を表現していたとか。大学では舞台演出を専攻と聞いて納得。

名店の精神性を進化させ、現代の粋を体現

青山の住宅街にあり、一見、鮨店とは思えないモダンな店構え。「あき」という表札だけを頼りに真っ白な廊下に入り、右手の木の格子戸を開けると美しい檜のカウンターが。

さらに「いらっしゃいませ」と現れた店主・冨田彰房氏の襟の高いモダンな出で立ちにも驚かされる。「樹齢350年、全長8.5mの吉野檜のカウンターと器、握りを引き立てるために何も置かないことにしたんです」と話す冨田氏。

実家は山口県の老舗鮨店。三代目の父は八重洲「おけい寿司」の初代の元で修業した人物だ。しかし冨田氏は店を継ぐ気がなく、大学卒業後は証券会社に就職が決まっていたが、江戸前鮨の名店のなかでも“艶やか”な立ち居振る舞いで人気を誇る「鮨 松波」の大将に出会い一念発起。

弟子は取らないことで有名だったが伝手(つて)を頼って頼み込み、5年8ヵ月の修業を積んだ。そして父と10年店に立ったのち、山口の店を閉めて東京へ。

「いい仲買いさんとの出会いもあり、素材は絶対の自信。仕込みは昔ながらの江戸前が基本」と冨田氏。

「あき」の赤貝

赤貝。剥いた時に出るエキスに浸けて洗い、香りと旨みを増幅させる「血洗い」という昔ながらの仕込みをしている。

「あき」の車海老

車海老。蒸し立てを味噌を内側に残して握る。

「あき」の鰻

鰻はつまみで。蒸し上げてから炭火で炙り、ふわふわな食感に香ばしさをプラス。銀粉をトッピングして艶やかに。冷酒はHARIOの酒ディスペンサーで。

握りの技も掌の体温が鮨ネタに極力移らないよう、ふんわり握りながら形を鮮やかに整える本手返しを徹底して「粋」を追求している。

あき/Aki
住所:東京都港区南青山2-7-24 Le Noble MinamiAoyama 1F
TEL:03-6447-2012
営業時間:18:30~22:00 
定休日:不定休
座席数:カウンター8席
料金:コース¥22,000、¥27,500、¥33,000

TEXT=藤田実子

PHOTOGRAPH=太田隆生

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