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2023.02.03

鮨処 たけ原|食いしん坊を満足させるパンチ力はあるが食べ疲れない、恵比寿の新店

断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでも次世代を担う若手職人による店は絶対に行きつけにしておきたい。今から通って応援したい、10年、20年後の名店になる可能性大の鮨店から、今回は恵比寿の「鮨処 たけ原」を紹介する。

恵比寿「鮨処 たけ原」の店内

店は恵比寿ガーデンプレイス近くのビルの3階に。小体(こてい)だが、落ち着く空間に6席のカウンターを備える。

鮨への情熱と大らかな人柄が滲む握りで高みを目指す

名は体を表すというが、握りにも鮨職人の人柄が滲むものである。

2022年、恵比寿にオープンした『鮨処 たけ原』の店主、中武智樹(なかたけともき)氏は、宮崎県出身の24歳。高校卒業と同時に上京し、築地の鮨店で寸暇を惜しんで働いた。怒涛のように過ぎていく毎日のなかで仕事を覚えることに必死だったというが、現在、前の店の常連で席が埋まることもあると聞けば、その人柄と、いかに努力を重ねてきたかがわかる。

カウンターの空気感をふんわりとなごませる朗らかさはおそらく天性のものだが、中武氏が鮨職人として愛される理由は、存在感のある握りにもある。

ふくよかなフォルムで、見た目からも伝わる量感。食べるというよりも“頬張る”といった表現がしっくりくる握りは、食いしん坊の心を一瞬で捉える。粒の大きさと甘みが特徴の岐阜県のハツシモを使ったシャリには、100種以上を試したなかから3種の赤酢をブレンドし、パンチが出るように調整。

恵比寿「鮨処 たけ原」の小肌

小肌(写真は ¥18,000の夜のおまかせの一例 )。3日寝かせて、脂の量が多い場合は長めに酢で締める。身が厚く、噛みしめるほどに豊かな旨味が。

恵比寿「鮨処 たけ原」の車海老

車海老。大分県産の60g超えをボイルし、大トロと同じ温度のシャリを合わせる。思わずエビ反りになる美味しさ。

恵比寿「鮨処 たけ原」の中トロ

中トロ。口どけのよさを意識しながら厚みを持たせて。

厚みを持たせて切る腹カミの中トロや「大トロの次に登場する5番バッター」として、並々ならぬ気合いを注ぐ小肌、ぷりっと歯を押し返すような弾力のある大ぶりの車海老など、いずれもネタの量感はあれど、付け台に置かれた瞬間にすっと“沈む鮨”は、シャリに空気を含ませながら握る技にある。白身、光り物、赤身、貝類とネタに合わせるシャリの温度も熟考し、パンチはあるが食べ疲れないように工夫。

「自分が食べることが大好きなので、気がついたら自分の胃袋サイズのコースになっていました」と笑う姿も明朗そのもの。

鮨界の“幸せ請負人”として、飛躍する日は近い。

鮪を切る、恵比寿「鮨処 たけ原」の中武氏

青森県・大間の鮪は仲卸「やま幸」から。腹カミを贅沢に切りつける。「シャリとのバランスを考慮しながら厚めに」。

鮨処 たけ原/Sushidokoro Takehara
住所:東京都渋谷区恵比寿3-30-12 Mercury Ebisu3F
TEL:03-5424-1885
営業時間:12:00〜14:00、17:30〜23:00
定休日:水・日曜
座席数:カウンター6席
料金:昼のおまかせ ¥10,000、夜のおまかせ ¥18,000

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=上田佳代子

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