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2023.06.23

2023年度版「世界のベストレストラン50」速報。 1位は初の南米勢、日本は苦戦

世界で1000人を超える食の識者の投票により、レストランのランキングが決まる「世界のベストレストラン50」。その影響力は年を追うごとにまし、世界のガストロノミーの潮流を決めるといわれている。果たして、今年はどんな動きがみられるであろうか。2023年6月20日(現地時間)、スペイン・バレンシアで発表されたランキングをお届けする。

初の南米勢から頂点を極めた「セントラル」

南米勢として初めて「世界のベストレストラン50」の頂点に立った「セントラル」の面々。

頂点を極めたペルー「セントラル」

2023年で21年目を迎えた「世界のベストレストラン50」は、ダイバーシティの実現へ向けて、新たな一歩を踏み出したようだ。というのも、1位に輝いたのは南米・ペルーの名店「セントラル」。欧米以外の国が初めて頂点に上り詰めたという、新しい時代を記念するアワードとなったからだ。シェフのマルティネス・ビルヒリオは、クスコにも「ミル」をオープンし、そちらを切り盛りするのは夫人のピア・レオン。雇用を創生するなど、まさに二人三脚で社会活動にも熱心に取り組んできた、今の時代を象徴するレストランともいえる。

2022年、東京に「MAZ」を開き、話題にもなったが、今回の受賞で、愛するペルーの料理を世界に広めるという夢がまたひとつ叶った。

世界各国に広がるガストロノミーの波

そのほかに注目したいのが、12軒という、ニューエントリー店の多さだ。なかでも目を見張るのが、ドバイからのニューエントリー2軒だ。1軒の「トレサンド スタジオ」は、いきなり11位へのランクイン。これまでの長い歴史の中で中東からの入賞はなかったことを考えると、これもまた、今回のアワードの象徴的なできごとといえる。一昨年から、ミドルイーストアワードが設立された、その効果が早くも表れているのだろう。現在の南米勢の活躍も、サウスアメリカアワードができたことにほかならない。ベスト50には、ガストロノミーによる地域おこしの側面があるといっても過言ではないのだ。

そのほかにもフランス、イギリス、タイ、コロンビア、日本と広範囲な国からニューエントリーレストランが出ている。日本は、「アジアベスト50」でいきなり2位にランクインした「セザン」が37位に入った。

インバウンドを起爆剤に、再浮上したい日本

日本勢の結果は、「傳」21位、「フロリレージュ」27位、「セザン」37位入賞という、やや残念なものに終わった。日本のガストロノミー業界を牽引し続けている「NARISAWA」が惜しくも51位、昨年41位にランクインした「ラシーム」が60位と後退する結果となったが、昨年1年の投票権を持つ評議員の動きを考えると、コロナ禍の影響がまだ残っていると解するのが妥当だろう。

アジアのトップが、シンガポール「オデット」の14位。アジアベスト50で1位だった「ル デュ」が15位ということを考えると、欧州、南米に比べて評価が低いと考えざるを得ない。まだまだ、アジアまで、フーディが到達していない状況なのだろう。今年のインバウンドの勢いを鑑み、2024年度に期待したい。ただ、美食大国フランスやペルーのような国からもニューエントリー店が入っていることを考えると、日本にもそうした勢いのある後進が必要ともいえる。

2023年「世界のベストレストラン50」

2023年の舞台は、スペイン・バレンシア。

変わらぬスペインの強さと世界情勢

2023年の50位の中でも、圧倒的な強さを見せているのがスペインだ。2位、3位、4位を占めたほか、6店が入賞をはたしている。しかも、マドリッド、バルセロナ、ビルバオ近郊、バレンシア近郊と、スペイン全土から入賞しているところも層の厚さを物語っている。

その次に目立つのは、今回1位に輝いた「セントラル」を有するペルーだ。入賞は4店舗。こちらは逆にリマに集中しており、リマが美食の都として、急成長してきたことがよくわかる。また、ここ数年評価が高いのがイタリアだ。7位入賞の「リド 84」を含め5店舗。フランスでは、ハイエストニューエントリー賞を受賞した「テーブル バイ ブルーノ ベルジュ」が注目株だ。逆にフランスが誇る三ッ星店は軒並み51位~100位にとどまった。

ハイエストクライマー賞を受賞したニューヨークの「アトミック」も要注目だ。北欧勢では「ノマ」と「ゲラニウム」が殿堂入り(1度1位になると、ベストオブベストといわれ、ランキング外になる)したため、デンマークからは「アルケミスト」の5位、スウェーデンの「フランツェン」30位にとどまっている。

前日のカンファレンスや、シェフによるベストトークでは、盛んにサステナイビリティの問題、ダイバーシティの問題が取り上げられていた。

「世界のベストレストラン50」も、単なるレストランランキングではなく、発信力のあるシェフたちによる社会への影響や社会進出が、ますます重視されるアワードになってきていることは間違いない。

 
 

2023年度版「世界のベストレストラン50」ランキング一覧

1Central セントラル (ぺルー)
2Disfrutar ディスフルタール(スペイン)
3Diverxo ディヴェルソ(スペイン)
4Asador Etxebarri アサドール エチェバリ(スペイン)
5Alchemist アルケミスト (デンマーク)
6Maido マイド(ペルー)
7Lido 84 リド84(イタリア)
8Atomix アトミックス(USA)
9Quintonil キントル(メキシコ)
10 Table by Bruno Verju(フランス)
11Tresind Studio トレシンド スタジオ(アラブ首長国連邦)
12A Casa do Porco ア カサ ド ポルコ(ブラジル)
13Pujol プジョル(メキシコ)
14Odette オデット(シンガポール)
15 Le Du (タイ)
16 Reale レアレ(イタリア)
17 Gaggan Anand ガガン アナンド(タイ)
18 Steirereck シュタイラーエック(オーストリア)
19 Don Julio ドン フリオ(アルゼンチン)
20 Quique Dacosta キケ ダコスタ (スペイン)
21 Den 傳(日本)
22 Elkano エルカノ(スペイン)
23 Kol コル(イギリス)
24 Septime セプティーム(フランス)
25 Belcanto ベルカント (ポルトガル)
26 Schloss Shauenstein スコロスシャウエンスタン(ドイツ)
27 Florilege フロリレージュ(日本) 
28 Kjolle クジョル(ペルー) 
29 Borago ボラーゴ(チリ) ※oにアクサン
30 Frantzen フランツェン(スエーデン) 
31 Mugaritz ムガリッツ(スペイン)
32 Hisa Franko ヒシャフランコ (スロベニア)
33 El Chatoエルチャト(ボゴダ 
34 Uliassi ウリアッシ (イタリア)
35 Ikoyi イコイ(イギリス)
36 Plenitude プレニチュード(フランス)
37 Sezanne セサン(日本)
38 The Clove Club ザクローブクラブ(イギリス)
39 The Jane ザ ジェーン(ベルギー)
40 Restaurnt Tim Raue レストラン ティム ロー(ドイツ)
41 Le Calandre ル カランドレ(イタリア)ルバーノ
42 Piazza Duomo ピアッツァ ドゥーモ(イタリア)
43 Leo レオ(コロンビア)
44 Le Bernardin ル ベルナルダン(アメリカ)
45 Nobelhart & Schmutzig ノブルハット&シュマッツ(ドイツ)
46 Orfail Bros Bistro オルフェイル ブロス ビストロ(アラブ首長国連邦)
47 Mayta マイタ(ペルー)
48La Grenoullere ラ グルヌイエーレ(フランス) 
49 Rosettaロゼッタ(メキシコ)
50 The Chairman ザ チェアマン(香港)

TEXT=小松宏子

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