機械式時計の魅力は、精密に動くメカニズムにある。リューズに触れ、時計を動かす。それだけでも喜びになる。【特集 時計をつける悦び】

操るという悦び
機械式時計の基本的なメカニズムは、約400年前に完成している。そしてそれ以降は新機構の開発や精度の向上といったアップデートを重ねながら、現在へと継承されている。
過去と現在とで最も大きな違いは、メカニズムの表現にあるだろう。かつては黒子だったムーブメントは、今では時計の魅力をさらに増幅させるための大切な要素であり、そのメカニズムを操作するということ自体が大きな喜びとなっている。
例えばスケルトンダイヤルは、見せることを前提としてデザインされるようになっており、構造や部品の配置にこだわる。ブリッジの磨きやパーツの色さえも表現のひとつだ。また高精度機構のトゥールビヨンは、キャリッジがくるくると回転する様子を愛でるだけでなく、その精密さで知的好奇心を刺激する。
メカニズムが見えること自体は、実用品としての時計とは無関係である。しかし時計を操作し、時が動きだす瞬間を愛でるのは、時計愛好家にとってはかけがえのない時間でもある。
時計に触れ、時を操る。細部から見えてくる時計ブランドの過剰ともいえるこだわりが、その時計を身につける喜びへとつながるのだ。
1.ジラール・ペルゴ|ロレアート スケルトン
50周年を迎えた傑作「ロレアート」。自社製のキャリバーGP1800は、柔らかなカーブを描いたスケルトン構造。内部の精密なメカニズムが紡ぎだす瞬間を、心ゆくまで堪能したい。10時位置のスモールセコンドは、スイープ運針を採用。

2.IWC|ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショック・アブソーバー XPL トゥールビヨン・スケルトン
エンジニアリング部門であるXPLが開発したSPRIN-g PROTECT®ショックアブソーバーシステムをトゥールビヨンと融合させた。高度な機構でありながら、10,000Gを超える衝撃にも耐えるという超高性能ウォッチだ。

3.コルム|ゴールデンブリッジ アバンギャルド
天才時計師ヴィンセント・カラブレーゼが考案した特殊なバゲット型ムーブメントは、パーツすべてが縦一列に並び時を刻む。自動巻き機構はリニア・ワインディング式で、ムーブメントの裏側に設置する。世界限定50本。

4.フランク ミュラー|ラウンド グランド セントラル トゥールビヨン
創業以来得意にしてきたトゥールビヨン機構を、ダイヤルの中央にセットして時計の主役とした。さらに精密なギヨシェ彫りや新鮮なビザン数字インデックスなど、フランク ミュラーらしい美学を楽しめる。

この記事はGOETHE 2026年1月号「特集:つける悦びを知るLUXURY WATCH」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら



