2025年から新たに掲げられたスローガン「Designed to Win(勝利のために)」を旗印に、挑戦的なコレクションを展開するタグ・ホイヤー。2024年にCEOに就任したアントワーヌ・パン氏に、注目のモデルからブランドが描く未来まで話を聞いた。

フォーミュラ1のタイムキーパー復帰を祝うコレクション
2010年代、タグ・ホイヤー ジャパンの代表として手腕を発揮し、業界でも知られた存在となったアントワーヌ・パン氏。このたび、世界全体でブランドを統括するCEOとして“凱旋帰国”を果たした氏の表情は、挑戦心に溢れていた。
「2025年、私たちはフォーミュラ1の公式タイムキーパーに返り咲くことができました。その事実を祝うように、今年はモーターレースに関連した新作を数多く発表しています」
エントリーモデルに位置する「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」からは、デザインを大きく刷新した9モデルを展開。刺激的なカラーコンビネーションや立体的でアイコニックなインデックスを採用し、モータースポーツへの情熱を大胆に表現した。さらに革新的なソーラーグラフ テクノロジーを搭載して先進性も備え、次世代のファンを取りこむ。

ソーラークオーツ、SSケース、径38mm。¥286,000
「タグ・ホイヤー カレラ デイデイト」も、一目でそれとわかるエレガントな存在感はそのままに、さらなるアップデートをはかった。
自社製ムーブメント「TH31-00」を新搭載し、パワーリザーブは約80時間を実現。視認性や存在感を高めた3Dダイヤルデザインや、工具を使わずにSSブレスのコマ詰めができるクイックチェンジリンクシステムなど、ディテールも進化した。
「また、私たちのコレクションの頂点といってもいいのが、『タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ | F1®』です。私たちは1962年からフォーミュラ1に関わり、“マスター”だと自負するクロノグラフ技術をもって、歴史をともに歩んできました。フォーミュラ1が誕生から75周年を迎えるにあたり、斬新かつ究極のモデルでお祝いしたかったのです」
「タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ | F1®」は、ふたつの時間を同時に計測できる自動巻きスプリットセコンド クロノグラフ ムーブメント「TH81-00」を搭載。加工の難しいセラミック素材を使い、金属製容器を使用することなくワンピース状ケースを作りあげた。
また、スターティンググリッドポジションをイメージしたクロノグラフカウンターのカラーや、スタート時の一瞬の緊張感と興奮を捉えた名フレーズ「LIGHTS OUT & AWAY WE GO(ライトが消えた。一斉にスタート!)」を描いたカウンター、サーキットの縁石に見られる紅白パターンをハンドペイントしたローターなど、随所にフォーミュラ1らしいディテールを凝縮。タグ・ホイヤーにおける至高のモデルとなっている。

世界限定10本(予約完売)。自動巻き、ホワイトセラミックケース、径41mm。¥22,286,000
ブランドのアイデンティティが宿る「Designed to Win」という言葉
タグ・ホイヤーは2025年から、「Designed to Win」というスローガンを提唱。これは、かつてのアンバサダーであったアイルトン・セナが語った「I'm not designed to come second or third, I'm designed to win(私は2位や3位になるために生まれたのではない。勝つために生まれたのだ)」から取ったものだ。165年目を迎えるタグ・ホイヤーの本質的な価値観を表していると、パン氏は語る。
「私たちのアイデンティティについて真摯に向き合った結果、これほど相応しい言葉はないと確信しました。ここでいう『design(デザイン)』とは、ファッションとしての見た目だけでなく、自分自身の形をも指しています。私たちは、この『モナコ』に象徴されるように、常にアヴァンギャルドな時計を生みだしてきた。アヴァンギャルドとは、常識や限界を超え、押し上げていくことです。一人ひとりが持つポテンシャルをさらに広げていくためのサポートを、私たちは時計を通じて実践していきたいのです」
この想いを広く伝えることこそ、CEOとして果たすべき使命だとパン氏は信じている。
「CEOの仕事は、このアイデンティティをより多くの人に知ってもらうことに尽きます。さらなる精度を求め、タイムキーパーとしての使命を果たすという自分たちの価値観を深掘りしていきたい。タグ・ホイヤーから生みだされるエネルギーはとてもポジティブで、クリエイティビティにあふれたものであり、プロダクトをはじめ、さまざまなイベントやコミュニケーションを通じてそれを広げていきたいと思っています」

自動巻き、SSケース、径41mm。¥605,000
組織のメンバーを支えるのがリーダーの役目
気取ることなく、内なる想いを打ち明けてくれたパン氏。ブランドを牽引するリーダーとして大切にしていることを尋ねると、綿密なコミュニケーションにあると答えてくれた。
「『Designed to Win』は、タグ・ホイヤーで働く私たち組織のメンバーにも通じる言葉です。組織のなかに、誰一人として大事ではない者はいません。皆大切で、『勝つために生まれてきた』人たちなんです。そうした気持ちがもっと高まり、全員で同じ方向を向くことができれば、もっとすばらしい結果を生み出せるようになるでしょう。月に1回以上全社員ミーティングを実施し、そうした想いを伝えられるよう、密なコミュニケーションを図るように努力しています」
CEOの仕事は指示を下すのではなく、熱い想いを秘めたメンバーとビジョンを共有し、鼓舞し、サポートすることにあるのだとパン氏は断言する。これはタグ・ホイヤー ジャパンにいた頃、お互いを尊敬する日本人の精神性から学んだことでもあるという。
「なによりもクリエイティブであることが、この仕事の魅力です。今回の『タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ | F1®』もそうですが、多くの人と関わり、共創していくのが楽しみで仕方ありません。多くの智慧が重なることで、叡智は築かれていくもの。私たちはプロフェッショナルの集団として、これからも魅力的なプロダクトをお届けしていきたいと考えています」

1994年、DFSおよび中東担当のジュニア・セールス・マネージャーとしてタグ・ホイヤーでのキャリアをスタート。ブシュロンやゼニスで手腕を発揮した後、タグ・ホイヤー ジャパンの代表として日本国内のブランディングを強化。その後はブルガリやベルルッティを経て、2024年にタグ・ホイヤーのCEOに就任した。