大人の嗜みとして「毎日着用する相棒」にはこだわる、時計好き経営者のA氏。腕時計のみならず、その趣味世界を彩る物選びのマインドについて話を聞いた。
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自分目線で選んだ、日常使いする相棒たち
「大人ならば、ビシッとした時計をつけておきたいんですよ」
起業家であり投資家のA氏は、これまでにさまざまな時計を着用してきた。
「若い頃は、ロレックスや色んなブランドの高級時計も着用してましたが、社員たちにプレゼントしてしまったりして、今は手元にほとんどないですね。ここでお見せしているのが、愛用中の“一軍”です」
ルイ・ヴィトンのウォッチケースに並ぶのは、大好きなオーデマ ピゲとリシャール・ミル。いずれも個性的なモデルが多い。
「腕時計は毎日着用しますし、時間も着用する前に合わせています」
A氏にとって腕時計は、“きちんとした大人”に欠かせない重要なアイテム。その日の気分に合わせて着用している。
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「多分、日本では僕しかもってないかも?」と話すオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン クロノグラフ」は、ホワイトセラミックとゴールドのコンビからなる独自表示のコンプリケーション。
上顧客のみが招待されるオーデマ ピゲのスイス見学ツアーで工房を訪れた際、「実際の製品を初めて見た!」と現地で働く職人から言われたほどのレアモデルだという。
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「いわゆる高級時計の概念が覆されますよね。本当にいい時計だと思います」と、絶賛するのはフルーツやお菓子などをモチーフにしたリシャール・ミルの「RM 16-01 オートマティック フレーズ」。
ブランドにおいては薄型に位置するも、ファンタジックな世界を高級時計に落としこんだ技術とセンスが、A氏のアートな感性を刺激しているようだ。
パートナーも時計の世界へ
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A氏と知り合った当初は「全然時計好きではありませんでした」という夫人も、A氏の時計好きを横目に影響を受けている。
「ある日突然、妻がインスタを見て、“この時計素敵!”と言ってきたのが、この『ロイヤル オーク コンセプト フライング トゥールビヨン“タマラ・ラルフ”』だったんです。
トゥールビヨンだし、デザイナーとのコラボだし、とても希少で高額なのはわかっていたんで、ちょっとお茶を濁していたんです(笑)。ただ、無邪気に“すごく可愛くない?”と何度も推されたので、最終的にはプレゼントしました。いい時計であるのは間違いないですし、一生モノになりますからね」
今やさまざまな時計を所有しており、A氏さながらにウォッチライフを充実させているという。
アートやワインも“自分流に”楽しむ
高級時計愛好家のなかにはクルマ好きという人も多いが、A氏は「クルマはそこまで興味がない」と話す。もちろん所有はしているが、「ガツガツ乗れる日常使いできるものが好き」と、スポーツカーなどには、それほど入り込めないそう。
その代わりというわけではないが、自宅には、現代アートとワインのコレクションが数多く置かれている。時計を着用する感覚を「スニーカーに近い」と例えるA氏だけあって、ポップアートへの想いも強い。
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1980〜1990年代に青春時代を送ったA氏は、レトロフューチャーな世界観をポップに表現したものが好み。生まれたばかりという子供のベッドの脇にはバンクシーの絵が掛けられている。
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「アートには全然詳しくはないんですが、モダンなものが好みです。ゆくゆくはピカソなんかも手に入れてみたいんですけど、なかなか買えませんよね。これもタイミングかな。オークションにたまに出てくるんですが、習作の鉛筆画だったりして、なかなか目当ては出てきません」
また、ワインも多数コレクションしている。
「ワインは自分で飲んで消費できるから、コレクションしても溜まっていかないのがいいですよね。時計やアートと違って(笑)。
結局、買い物ってその時の自分の思いに正直でいられるのが心地よいと思います。逆に言えば、欲しくもないものを、“高く売れるから”というような思いで買うのは、自分らしくないと思うんです」
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欲しいものを、欲しい時に買う。自分の気持ちに忠実でいることこそ、趣味を楽しむために一番必要なことかもしれない。