フレンチの本場・パリにて2020年、フランス版ミシュランガイドの三つ星を「レストラン KEI」で、アジア人で初めて取得した日本人シェフの小林圭さん。以降、その三つ星をキープし続けるという偉業を成し遂げている。そんな彼は、一方で時計好きという一面をもち、オーデマ ピゲのアンバサダーも務めている。料理界のトップランナーが、時計界でも揺るぎない地位を築く名門・オーデマ ピゲに惹かれる理由、そして料理と時計の意外な接点とは。
名門時計が刻む1秒は、ただの1秒ではない
小林圭さんが腕時計そのものに惹かれたのは、料理の世界に飛び込んだ10代の頃。師匠のシェフが腕につけていたロレックスのクロノグラフ「デイトナ」がきっかけだ。時計自体に特に興味があったわけではないが、その見た目や機構は印象に残ったそう。
「当時、私の腕時計の知識はゼロ。デジタルと機械式の違いもわかりませんでしたが、だからこそ、本体を振ってゼンマイが巻き上がる自動巻きの存在は、自分にとっては不思議な存在でしかなかったんです。こんなことで時計が動くなんて、何か魔法でもかけられたかと思い、機械式時計の世界に引き込まれていきました。また、白のコックコートに腕時計という姿も格好いいな、と」
興味を抱いたとはいえ、修行中の身だった当時。腕時計を手に入れるまでには至らなかったという。長い期間を経て2011年、いよいよパリに自身の店「レストラン KEI」をオープン。そこから腕時計への興味を再燃させるなかで、オーデマ ピゲというブランドに惹かれていったという。
「自分は特にユニークな存在、つまり“これしかない!”という唯一無二の存在に惹かれます。そういうものを身につけたいですし、そうしたものを身の回りに置いていたい。オーデマ ピゲの『ロイヤル オーク』は、まさにそんな腕時計です。家族経営という、ブランドとしての独自性にも惹かれますし、何より職人魂を感じるつくりは工芸品としても素晴らしい」
アンバサダーとして、オーデマ ピゲの拠点であるスイスのル・ブラッシュにも足を運んでいる。
「実際の工房の様子は、思い描いていたとおりでした。世界のトップと言われるところは、やはりこういうことかと。ひとつひとつの部品の切削や、面取りなどの仕上げにおいて、細かく工程が分かれていて、それを職人たちが緻密な作業で組み上げていく。この時計が刻む1秒には、こういった職人たちの精魂が込められているんだなと。ただの1秒じゃない。そういう時計だからこそ、心が昂るし、四六時中身につけていたくなります」
モノづくりに携わる者として、オーデマ ピゲへのリスペクトを惜しまない小林さん。時計づくりの工程を目の当たりにしたからこそ、それまで抱いていた思いが確かなものであったことに感動を覚えたようだ。
「いいモノをつくりたい、妥協したくない。今目の前にあるモノをいかにして最高な品質にもっていくか。彼らはそれしか考えていないんです」
こうした言葉から、研鑽を積んで三つ星シェフとなった自身の姿勢と重なる点も感じていることが窺える。
誰もが認める「世界一」という存在を目指して
小林さんが取材中につけていたのは、「ロイヤル オーク “ジャンボ“ エクストラ シン」。クラシカルな八角形ベゼルのスタイリングに強く惹かれながら、フレンチシェフとしての心も動かす要素がある。
「何より美しいのは、赤いグラデーションダイヤル。見た瞬間に、“絶対欲しい”と思ったんです。なぜなら、ワインの色に似ているから。グラデーションが醸しだす色の深みはもちろんのこと、どんな光が当たるかによっても赤の色みが変わってくるので。奥深いですよね」
チタンケースに収まっている本モデルは、ステンレススティールケースやプラチナケースの“ジャンボ”に比べても、軽量性が高く、バルクメタリックガラス(BMG)と呼ばれるアモルファス構造の金属をベゼルに採用している点も特徴的だ。
「強度のあるベゼルは、傷にも強くて頼り甲斐がある。軽くて強いという点は、扱いやすいなと感じます」
一方で、普段着けることが多いというブラックセラミックの「ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク」についても、その魅力を語ってくれた。
「ダブル バランスホイールは僕にとって、ムーブメントが“厨房”に似ている感じがするんです。ふたつあるテンプのうち、一方が前面から見えるダイヤル側、もう一方が背面からしか見えない裏蓋側にある。このふたつの動きがシンクロすることで精度が上がるわけですが、レストランの厨房も表に見えるものと裏側で支えるもののふたつがきちんと機能しなければ、いい料理は提供できません。
また、傷がつきにくくて軽いセラミックケースも、清潔感が求められる料理人にとっては相性がいいなと。クラシカルなスタイルの見た目、傷つきにくさ、そして軽量性。この3つの点で料理人にあった時計だと思っています」
クリエイターとして、モノづくりの本質を見極める解像度が高い小林さんだからこそ、同じように妥協のない時計づくりに邁進するスイスの名門、オーデマ ピゲに魅力を感じるのだろう。それゆえに、そのオリジナリティについてもひとかたならぬ思いがある。
「自分で“世界一”だと名乗ったところで、誰かがそれを認めていなければ意味がありません。“皆が認める世界一”でなければ。それはオーデマ ピゲをはじめとする、いわゆる名門時計ブランドもそう。皆が認めるだけの本質があります。
だから私も、“富士山の頂上ではなく、エベレストの頂上を目指す”との思いを持って飛び込んだ料理の世界ですから、世界一と認められる存在になるための努力を日々続けていくだけです」
オーデマ ピゲのアンバサダーが自身に与えてくれるもの
オーデマ ピゲのアンバサダーとなったきっかけは、昨年、同社を退職した元社長フランソワ-アンリ・ベナミアスさんとの親交があったからだそう。
「自分の兄貴的な存在で、話をいただいた際には、ふたつ返事をさせていただきました」
自身も愛情を注ぐブランドからのオファーとあれば、受けるのは至極当然のようだが、その理由は愛情だけではない。
「どうせやるならば、自分を昂らせてくれる存在のためにやりたい。もちろんお金のためでもありません。この看板を背負うからこそ、自分が常に全力でいられるし、攻め続けられると思うんです。
自分は料理の世界において、クラシックでありたいと考えています。クラシックでありながら、未来に向かって常に挑戦を続けているオーデマ ピゲの姿は、自分の理想像と大いに重なる部分があります。でも、共感ではありません。共感なんて言ったら、オーデマ ピゲのファンに怒られますから(笑)」
謙遜しながらも、世界のトップに君臨する名門と同じ土俵に立っていたいという思いが、言葉の端から滲みでる。
「この思いは、憧れというものでもなくて、とにかく同じ次元で共存していたいということ。そしてそのなかで、オーデマ ピゲにも負けない存在感を自分が料理の世界で放ち続けることが大事。だから、モチベーションを保っていけるんです」
小林さんが大事にするのは、レストランでの勝負だ。また来ようと思ってもらうため、常に最高の瞬間をゲストに提供することを心がけている。
1日1日を無駄にせず、常に前に向かう姿勢が「レストラン KEI」を成長させていく。この日々を「勝負」と呼んでいるのだ。
「だから、その勝負で勝ち続けるためにも、オーデマ ピゲのアンバサダーを務めることは重要。これは、自分を高める手段でもあるんです」
問い合わせ
オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0000
公式サイト:https://www.audemarspiguet.com