男性にとって数少ないアクセサリーでもある腕時計。だからこそ、時計選びには個性とともに語れる“ストーリー”も腕元に纏いたい! 今回は、時計ジャーナリストの広田雅将が、2022年のトピックスを振り返り、2023年の時計界を大胆予想する!
空前のブームが大きく変えた時計の見た目
ここ数年、大きな盛り上がりを見せている時計市場。以前から注目を集めてはいたが、高価格帯を中心にこれほどの伸びを見せたことはなかった。そんな状況は、当然時計のトレンドに影響を与えてきた。
Topic 01.時計ブームと技術革新がもたらす、カラフルな文字盤
際だって目立ったトレンドが、カラフルな文字盤の出現だ。2010年以前、高級時計の文字盤はお決まりの色しかなかった。ブルー、シルバー、そしてブラック。しかし、新しい消費者が今までにないカラーを求めたことに加えて、高価格帯が人気を集めたことから、各社は今までにない色にも挑戦するようになった。グリーンやレッド、そしてサーモンピンク文字盤などが好例だ。
また、オメガはPVD加工やCVDコーティングといった今までにない手法を使うことで、普及価格帯にもカラフルな文字盤を増やそうとしている。今までにない文字盤は、今後もトレンドであり続けるだろう。
Topic 02.スイスやドイツに引けを取らない、国産時計の存在感
そしてもうひとつのトレンドが、日本製時計の台頭だ。かつて、安価で丈夫というイメージのあったジャパンメイドの時計だが、2022年は、グランドセイコーが4000万円超えの「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」を発表したほか、カシオも高価なG-SHOCKでより注目を集めるようになった。まだ人気はアメリカとアジアに偏っているが、今後はそれ以外地域でも徐々に定着していくと考えられる。
Topic 03.ブームを経て多様性を増したラグスポ
そして「ラグスポ」の多様化も見逃せない。2015年以降、メタルブレスレットにスポーティな外観を持つラグジュアリースポーツウォッチが、時計市場を席巻した。しかし2022年は単にスポーティに振るのではなく、ドレッシーな要素を強めたモデルが数多く発表された。よりシチュエーションを選ばない時計。今年も、こういうドレスに振ったラグスポが、注目を集めるに違いない。
2015年頃から、時計のトレンドは機能やムーブメントよりも、明らかに文字盤やケースといった外装にフォーカスされるようになった。2023年以降も、こういった流れは変わらないだろう。春に開催される時計見本市では、かつてない外装の時計が多く見られるはずだ。
「ラグスポと限定版なら何でも売れる」と言われた2022年。ただし、過剰ともいえる時計ブームは各社に外装の改善を促した。カラフルな文字盤だけでなくケースの完成度は高まり、長年おざなりだったブレスレットも明らかに質が上がった印象。2022年とは、“装身具としての腕時計”がよりいっそうの進化を見せた1年だったと言えそうだ。反面、円安や需要の増加により輸入時計の価格は上昇してしまったが、その傾向は鈍化するだろう。