『革命のファンファーレ』『夢と金』などビジネス書分野においても大ヒットを生み出してきた西野亮廣氏が、「過去最高傑作」と語る新刊『北極星 僕たちはどう働くか』が発売された。そこに書かれた真実と、本作への思いを語るインタビュー。後編は、自分の「やる気」をハンドリングする方法、そして自身のピンチを救った習慣を語る。#前編

ドーパミンは成功の副作用
西野亮廣氏の最新刊『北極星 僕たちはどう働くか』では、「金」「心」「販売・集客」の3章にわたって、働くうえでのそれぞれの向き合い方を語っている。
その「心」の章で、西野氏は「モチベーション」について触れる。
モチベーションは、「頑張ろう」と思った結果として生まれるものではない。
多くの場合、人が動き出すのは、「いけるかもしれない」と感じた瞬間だ。『北極星 僕たちはどう働くか』より
そしてこう説明するのである。
モチベーションはガチャ。
西野氏いわく、最初から「モチベーション」が備わっている人は少ない。それよりも、動きながら「いけるかもしれない」と思ったものに対して自然と「モチベーション」が湧いてくる場合が多いのだという。
それはつまり、動かない人に、モチベーションが宿ることは永遠にないということだ。
「『いけるかも』という期待を感じた瞬間に、ドーパミンが出てモチベーションになるんですよね。で、この『期待』って、ちっちゃな成功のあとに出てくる。ってことはドーパミンって、成功の副作用なんですよ。
なら、このちっちゃな成功をたくさん積んでいけば、どんどんモチベーションが上がって頑張れる。で、何で成功できるのかは誰にもわからないから、基本的にガチャなんです。ならとにかくガチャをたくさん回すしかない。やる気がなくてもモチベーションがなくてもなんでもいいから、とにかくなにかを今日からやってみる。農業を始めてみたり、書道をやってみたり、全然知らない街に行ってみてもいい。とにかく移動して情報を仕入れて、巻き込まれてしまえばいい。それがうまくいったら夢になり、モチベーションになる。ただ、それだけの話なんです」
西野氏はさらに「モチベーションを自分の意志で操ることはできる」と、続ける。
「やる気って、腸内環境も大きく影響しているみたいです。最近、自分の腸内菌をひととおり調べてもらったんですよ。で、僕には人と比べて異常に多い菌があったんです。それが『持久力菌』。これが多いと、なんかとにかく頑張れるらしいです(笑)。
なんだ、頑張れるかどうかって、単に菌のおかげなんだって思いました。ならみんな、その菌が栄養とするものをいっぱい摂って育てればいいじゃんって。モチベーション以前に、集中力が続かないっていう人はシンプルにこの持久力菌を育てたらいいんじゃないかなと。
つまり、ずっと感情や根性だと思っていたものは、菌とかドーパミンとかそういうものの影響でしかなかった。だったらハンドリングしていくことってできるじゃん、そう思うんですよ」

成功のだいたいは“まぐれ”である
「成功への期待」は、ドーパミンを出しモチベーションにつながる一方で、「成功体験」によりかかりすぎると、判断ミスをする場合が多いとも西野氏は本書で説く。時にまぐれで起こる「奇跡的成功」を自身の「成功体験」と思いこみ、再現性がないにも関わらず「あの時もできたんだからイケる」と、誤った道へ突き進んでしまう人が多いのだという。
しかし西野氏もまた、数々の成功体験を積んできた。『えんとつ町のプペル』の絵本は80万部以上を売り上げ、ブロードウェイで人脈をつくり、大ヒットミュージカルの出資者の座を得ることもできた。自身は一体「成功体験」とどう向き合っているのだろうか。
「成功はだいたい『まぐれだ』と思うことにしています。そして、うまく行ったことからは早々に撤退するようにしています。
例えば『本を売ろう』となった時にいくつかの施策がありますよね。Aの道、Bの道、Cの道を試して、Bがうまくハマったとする。だからといって以後ずっとBを擦り続けてしまったら、自分の時間をすべてBに充てることになってしまいます。もしかしたらEの道、Gの道にもっとすごいものが見つけられるかもしれないのに。
だから『Bがうまくいくのはわかった』と、そこで撤退。で、また新しい道を探します。最悪、失敗が続いてもまたBに戻ればいいだけですから。そうやってデータをどんどん取るつもりで、いろんな道に進んでみるんです」
2025年にはミュージカル『えんとつ町のプペル』をKAAT神奈川芸術劇場で上演。制作費に4億5000万円かけた作品だが、公演直前に「チケットを全部売り切っても赤字」という事実が判明した。当時、西野氏のプロジェクトを運営する会社、CHIMNEY TOWNの代表を退いて、ミュージカルの運営を後進に任せていた西野氏は、ちょうどこの頃に代表に復帰。そこからわずか1ヵ月で講演会を増やし、上演がない日には舞台セットツアーを組み、さらに上演期間中のスタッフの人員整理も行って赤字を補填、最終的にこのミュージカルは黒字となった。
「その時は本当に死んだと思いましたよ。(会社の)代表に復帰して蓋を開けてみたら、ミュージカルが大赤字になるぞと。さらにその頃はブロードウェイでの出資作もあり、とにかく1ヵ月で、銀行融資以外で1億円用意しないといけない状態になっていました。これ、みなさんも自分ごとだと考えてみてください、ゾッとするでしょう!? とにかくもう、自分の手札で1億稼げるものってなんだろうと必死で考えました。そのなかで、過去成功したオンラインの講演会を思い出して、これなら最短でなんとか稼げるのではないかと。このカードで行こうと、すぐに動き出しました」
過去に人気を集めたオンラインスクール「キンコン西野の“親子で通える”お金の学校」を再び開講、さらに多くの人を集め、この窮地を救った。
モチベーションはガチャ。だから常に多くのガチャを回しておく。
これまでそうやってさまざまなことに挑戦してきた西野氏は、過去に結果を出すことができたもののなかで、確実に成功を再現できるものを掘り返すことができた。ガチャを回し続ける。行動し続ける。そうして得た手札が多い者は、その自らの手札によって救われる。
「それは間違いないです。ガチャは、とにかく回しまくっておくのがいいんです」
本書の初版は10万部。それが、発売前重版で早々に12万部である。5万部売れればベストセラーと呼ばれるビジネス書のジャンルにおいて、あまりに莫大だ。本来であれば出版社側に売れ残りの大きなリスクを背負わせる数となるが、今回西野氏はこの出版社のリスクを自身が背負うことを決めた。「事業投資型クラウドファンディング」で資金を集め、その金でもって出版社側の売り上げをあらかじめ保証するのだ。
「これまで何冊か本を出させてもらいましたが、本を出すって出版社が常にものすごいリスクを抱えているんですよ。だから小部数スタートになったり、企画が通りにくかったりする。でも、本を出すって本当にそれしかないのかな、他に方法はないのかなって、今回実験してみているんです」
これもまた、西野氏が回した新しいガチャのひとつ。こうして得る無数の手札が重なり合って、誰も見たことのない景色がこれからも浮かび上がっていくはずだ。
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年兵庫県生まれ。1999年漫才コンビ「キングコング」結成。これまでの著書に『革命のファンファーレ』『新世界』『夢と金』など。2019年に「にしのあきひろ」名義で出版した絵本『チックタック ~約束の時計台~』を原案にした最新映画『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』が2026年3月27日公開。
衣装クレジット:ジャケット¥99,000、シャツ¥59,400(ともにカンタータ/クリシェ TEL:03-6407-0300)

