日本国内のバレーボール界、海外リーグ、そしてロンドン五輪での銅メダル獲得――トップアスリートとして走り続けてきた狩野舞子さん。引退後もバレーボールの普及活動などに携わる彼女が、実は今並々ならぬ力を注いでいるのがゴルフだ。彼女がそこまで虜になったきっかけやアスリートならではのゴルフライフを聞かせてもらった。インタビュー前編。

アスリートの感情を揺さぶった、ゴルフとの出合い
日本国内のバレーボール界からイタリア、トルコと世界最高峰の海外リーグにも挑戦し、ロンドンオリンピックでは銅メダルを獲得した元バレーボール日本代表の狩野舞子さん。2018年の引退後は、解説や普及活動に加え、女子アスリートが競技に集中できる環境づくりを目指す『Woman's ways』の理事としても活動している。
そんな彼女が、今いちばんハマっているのがゴルフだ。
「仕事以外、生活のほとんどがゴルフです(笑)」という言葉どおり、インスタグラムやYouTube「マイコチャンネル」には、仕事やトレーニング風景と並んで、プロゴルファーとのラウンドや有名レッスンプロの指導に挑戦する姿が並ぶ。バレーボール選手という恵まれた体型を活かした豪快なショットは、見ているだけでも気持ちがいい。
かつては打ちっぱなしに行っても、そこまで魅力を感じていなかったというゴルフ。転機となったのは、初ラウンドでの“ある悔しさ”だった。
「自分より小柄で華奢な女性に、あっさり負けたんです。ゴルフ歴1年だったので、初心者の私が負けるのは当然なんですけど……とにかく悔しくて。一気にアスリートの血が騒ぎました(笑)」

1988年東京都生まれ。バレーボールの名門「八王子実践」ではエースとして春高バレーなどで活躍。久光製薬スプリングスに入団後は全日本代表で国際大会にも出場。その後故障などによりチームを退団。世界最高峰と言われるイタリア、トルコの2大海外リーグに挑戦した後、ロンドンオリンピックで銅メダルを獲得。日本に復帰後、2018年6月に現役を退き、現在はバレーボールの解説や普及活動のほか、女子アスリートがストレスなく競技に集中できる環境づくりや課題解決を目指す『Woman's ways』の理事としても活動中。
1年に138回コースへ?! 思い通りにならないのがゴルフの魅力
以来、とにかく実践を積もうと時間があればゴルフコースへ。
「最初の1年は、138回行きました(笑)」と、なんと3日に1回以上コースを回るほどゴルフの虜に。
「それまでずっとやっていたバレーボールは室内競技。だから、自然の中でするスポーツはこんなに気持ちいいんだと初めて知ったんです。そんなところもゴルフを好きになった理由のひとつです」
実は練習のし過ぎで、この時はとうとう肋骨を疲労骨折。限界までとことん追求してしまうのも、やはりアスリートならではなのだろう。
一緒にラウンドするのもバレーボールに限らず元サッカー選手や野球選手などアスリートが多い。彼らも例外なく、確実にゴルフにハマっているという。
「そもそも身体能力が高いから、どんなスポーツもこなせるのがアスリート。それでもゴルフだけは本当に思い通りにならないと、全員が言うんですよね。私もそうでしたけど、その悔しさが挑戦心をかき立てて、次へ次へと火をつけちゃうのだと思います(笑)」
ミスの後は“新しい自分”。狩野舞子流・切り替え術
頂点を極めたアスリートでも、思うようにいかないのがゴルフ。メンタルスポーツとも言われるように、一度の失敗がついつい後を引いてしまうことも多い。ミスをした時にどう気持ちを切り替えるのか。現役時代から一貫する狩野さんの考え方がある。
「バレー選手時代から、起こってしまったことを嘆いて後悔するのではなく、ミスをしてしまったなら、次のプレーから最善を尽くすと考えていました。ゴルフでも、林に入ったら、最初の頃はとにかく出そうともがいていましたが、今はまず軽く前に出して2打目でしっかり狙えばいいと思うように。
ミスの残像が残っていると、またやるんじゃないかって思ってしまう。だから、ミスの後は“もう新しい自分になったんだ”と切り替えることが大事だと思っています」

初めて向き合った個人競技が、知らなかった自分を引き出した
バレーボールというチーム競技をしてきた狩野さんにとって、個人競技であるゴルフは改めて自分自身を知るきっかけにもなったという。
「チーム競技という性質上、勝ち負けは個人の要素だけではないのがバレーボール。だから現役の時はそれほど負けず嫌いという自覚はなかったんです。
でもゴルフは、技術もメンタル維持もすべて自分次第。だからこそ、負けると本当に自分自身に悔しい気持ちが湧き上がってくる。初めて自分もこんな気持ちになるんだと気がつきました」
現役の時と同様、自分の感情をあまり表に出さないタイプだというが、ゴルフでは違う一面も見える。
「ミスショットしてもあえて淡々として『まあこんなもんでしょ』と悔しさを隠しています。とはいえ、気心知れた人たちと一緒だと『くそー!』って言っちゃうこともあります(笑)」
ゴルフは真剣勝負という狩野さんにとって、その悔しさは自分への反省と期待でもあるという。
「全然練習していない人は、悔しがる権利もないんですよね。現役時代を考えれば、全然練習もしてないんだからできるわけがない。悔しかったら練習しろ! と自分をなだめています(笑)」
※後編に続く




