放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。今回のゲストは桝本さんと旧知の仲であるM-1王者・とろサーモンの久保田かずのぶさん。第7回は、久保田さんがSNSの炎上とどう向き合っているのかについて。

炎上してもダメージはあまりない
桝本 オンラインカジノ問題について久保田は明確に否定してるけど、報道や世の中の反応はどう感じてた?
久保田 俺みたいな芸風のやつが「やっていない」と言っても、「いや、絶対やっただろ!」と言うやつはいるじゃないですか。でも、エゴサーチしても俺の名前あんまり出てこなくて、実はそんなに叩かれてもいないです。例えば、人気者が疑惑かけられたら叩かれるやないですか。何でかといったら、その人に対して「素晴らしい」「素敵」とかきれいなイメージしかないから。でも、俺は別にそういうイメージもないし、正直ダメージもあまりないです。
桝本 久保田は炎上を何度も経験してるから、「人に責められたときにどう立ち直るのか」というビジネスパーソンにも参考になるような話も聞いてみたいな。
久保田 炎上した時って、いろんなことを言われますけど、自分のなかではさほど重いものとして受け止めてない部分もあります。もちろん、ある程度は自分自身を見つめ直しますよ。でも、「お前らが言っているほど悪いことじゃねえからな!」と思っている部分が10のうち3くらいはあるんです。その3の振る舞いを続けたことで、今も自分が芸人をやれてるし、生きていけてると思うんです
桝本 でも、久保田みたいに気持ちが強い人ばかりじゃない。
久保田 周囲からもいろいろ言われてしんどくって、「もう会社に行きたくない」と思うこともあるかもしれません。でも、あんたが「会社に行きたくない」って苦しんでいるその瞬間さえも、時間が経った時には笑い話として人に話せるようになってるはずなんですよ。
「太陽が照っている時は木の枝が伸びる。雨が降った時には木の根が生える」という俺の好きな言葉があって。起きることすべてに意味があるということですよね。だから、全部をネガティブに取らんといてって思います。ポジティブになるというよりは、少しだけ前向きになるだけで十分なんじゃないかなと。「怒られたな。じゃ、どうしようかな。次こういうことやってみようかな」って考えれば。
桝本 久保田らしい言葉やな。いいなあ。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)および、よしもとクリエイティブアカデミー(YCA)の講師。2連覇した令和ロマンをはじめ、多くの教え子をM-1決勝に輩出している。
SNSの使い方しだいでクリエイターも育つ
桝本 SNSの使い方も上手いよな。俺はSNS休止中なんだけど、この連載の編集者に「SNS復活してください!」ってよく言われるから、上手いやり方を教えてほしいわ。
久保田 言葉悪いけど、SNSなんてものはゴミ箱で、無責任に生きたいクソッタレ人間の集まりだと思ってます。
桝本 ひと言でいうと掃き溜め(笑)。
久保田 だからあんなものは、俺のことを叩きたくなるようなことを遊び半分でやっとったらいいんですよ。この前に投稿したのもそう。新幹線で熊田曜子さんと会ったから、挨拶して横に座って、「熊田さん、すみません。写真撮らせてほしいんですけど、俺に寄り添う感じで寝たふりしとってください。どうせ不倫旅行とか言われますわ」って頼んで撮影して。案の定、ネットニュースの見出しは「不倫旅行」で炎上。その時も、「バカどもが! お前らは俺の術中にハマってるんだよ!」って思ってました。
でも、桝本さんがSNSを使うことにはメチャクチャ意義があると思うんですよ。桝本さんがSNSをやらなくなる前にXで、「今日のNSCの授業にこんな面白いやつおった」ってよく発信してましたけど、それって生徒からしたらすごい嬉しい。ああいうSNSの使い方が、クリエイターを育てるってことやと思います。
桝本 いやいや、とんでもない。
久保田 俺も桝本さんに褒められたかったですよ! 何もお笑いのことなんか知らずにNSCに入ってきて、講師に「宮崎から出てきた久保田ってやつがおるけど、こいつが面白かった」って言われたら、そりゃ嬉しかったはずやから。
桝本 今のSNSの使い方の話は、たしかにすごくいいなと思いましたね。NSCの授業で生徒と絡んだ時の手応えを毎日発信していけばいいのかなって。
久保田 マジで桝本さんの声を聞きたい人はいっぱいいるんで、明日からXを再開してください!

1979年宮崎県生まれ。幼なじみの村田秀亮とお笑いコンビ・とろサーモンを結成し、2017年に『M-1グランプリ』優勝。ピンでも『ドキュメンタル』の優勝で2000万円を手にするなど幅広く活躍。MCバトルでの活躍や絵画作品も評判を呼ぶ。2025年に発売した自伝的小説『慟哭の冠』もベストセラーになっている。