アチーブメント代表取締役会長 兼 社長の青木仁志氏と、大槻経営労務管理事務所代表社員の大槻智之氏。働き方と教育のスペシャリストなふたりを紹介する。
![大槻氏と青木氏](https://goetheweb.jp/uploads/2025/02/soai-102-1-1200x800.jpg)
健全な葛藤のなかで、人は磨かれていく
大槻 もう10年になりますね。ちょうど社会保険労務士法人を父から引き継ぐタイミングで、お会いできました。
青木 そうでしたね。感心したのは、大槻さんが私の講座に出席されて、本当に素直に実践されておられたことです。お父さまが社労士会初代会長で、事務所のクオリティも社会的な信用力も高かった。その事業承継をするタイミングで出会えたことは、とてもよかったと思っています。
大槻 自身も労務管理のコンサルタントなのですが、青木先生のお話を聞いて仕事観が変わりました。理念、ビジョン、パーパスが土台にあって、そこから目標、計画、日々の取り組みがある。このピラミッドがしだいにはっきり見えてきて、何かを判断する時にもぶれなくなりました。
青木 何を大切に生きるのか、という気づきですね。自分に縁のある人を幸せにすることが、自分が幸せになる最も確かな道なんです。そして、顧客満足も社員満足も社会満足も高まる。
大槻 自分も含め周囲の経営者の多くが、自分の軸がはっきりしていないと悩んでいることに気づきました。彼らの横でピラミッドづくり、軸づくりをお手伝いしたい、と思うようになりました。
青木 損得ではなく、周りのお役に立とうという本質的な願望がとても重要なんです。だから、結果も出るんですね。
大槻 社会保険労務士として日本の労務環境を長年見てきましたが、働き方改革によって仕事に対する考え方が大きく変わったように思います。働きやすい環境が整備されたのはよいことですが、その一方で「パワハラ」「カスハラ」といったハラスメントに関する言葉が一人歩きしているようにも感じます。
青木 パワーハラスメントを恐れて上司が部下を叱れない、という話もよく聞きますね。
大槻 働き方の専門家として、社員が心理的安全性を持って働ける環境づくりに今後も取り組んでいきたいと思います。
青木 2024年、帝国ホテルで行われた貴事務所50周年記念のパーティーにお招きいただきましたが、見事に事業承継されて、本当に親孝行をされたな、と改めて思いましたね。
大槻 多くの失敗もしましたが、先生に教わった「過去は最善」という言葉に私を含め救われた経営者はとても多いと思います。その時は、その時の最善の選択をしたのだ、と。
![談笑する大槻氏と青木氏](https://goetheweb.jp/uploads/2025/02/soai-102-2-1200x800.jpg)
大槻経営労務管理事務所 代表社員。1972年東京都生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。1994年に日本最大級の社会保険労務士事務所である大槻経営労務管理事務所に入所。著書に『働きやすさこそ最強の成長戦略である』。
青木仁志(右)
アチーブメント代表取締役会長 兼 社長。1955年北海道生まれ。1987年、32歳で選択理論心理学を基礎理論としたアチーブメントを設立。以来、延べ50万人の人材育成に従事。著書に『一生折れない自信のつくり方』などがある。
青木 これもよく言うんですが、しなくてもいい苦労はしなくていいんです。ただ、健全な葛藤のなかで、人は磨かれていきます。自ら高い山を目指して、自分の責任で一生懸命登っていくなかで、人は育つんです。登り切れずに途中で引き返す悔しさも含めて。そういう環境を作ることが大事なんですね。
大槻 人の育成でも、悩んでいる経営者は多いです。これだけ社員のことを思っているのに、どうして通じないのか、と。離職率が高まって落ち込んでいる人もいる。問題は、伝わっていないことなんです。思いやりを伝える仕組みが必要だし、一緒に目指すものも大事になってくる。
青木 思いやりが伝わると、一緒にこれを目指していこう、という組織になっていきますよね。日本の繁栄って、やっぱり組織力だと思うんです。なのに、今だけ、金だけ、自分だけ、みたいな個人主義に走ったら危ない。だから、理念が必要なんです。日本をより良い社会にしていく。そういう志を持たないといけない。
大槻 そこが抜け落ちたまま、離職率を下げるために、いろんなものを与えたところで、あまりいい結果は生まないですよね。やはり志や理念への共感から始まることが大事になる。
青木 勝った負けた、という労使の戦いに入ったら、いいことは一つもない。損得人間、勝ち負け人間を育ててしまっている教育にも問題がある。
大槻 ふたりで食事すると、こういう話をたくさんさせていただいて、とても勉強になります。一人の弟子として、教わったことを世の中に還元するのが恩返しだと思っています。これからも頑張っていきます。