中川政七商店 代表取締役会長の中川政七(淳)氏と、地主 代表取締役社長の西羅曜旦(てるあき)氏。奈良・東大寺学園の同級生ふたりのエピソードを紹介。
中高じゃ決して優等生だったわけでもなかった
西羅 淳(じゅん)の第一印象は、背はデカいけど、声はデカくなくて、トーンが落ち着いてて、これは仲良くなれそう、と思った。
中川 同じクラスになったのは高1だったけど、西羅は中学からヤンチャで有名で、男子校の中では異質の存在だった。
西羅 中学受験で東大寺学園に入って、レベルの高い同級生を目の当たりにして、同じ土俵で勝負するのはやめよう、と。
中川 おかげで男子校に楽しい話題をたくさん提供してくれた。
西羅 いや、学園祭だってまじめにやってたよね。PR委員長として地元企業から協賛金を集めて運営に活かしていた。あ、考えたら今と似たようなことを当時からやってたな(笑)。
中川 西羅は堂々としていて、上の人に可愛がられる。仲間内では、大胆で強気なように見せて、実は場を和まそうといつも周りに配慮してくれていた。すごく優しい奴なんです。
西羅 無理矢理だ(笑)。
中川 大学に入ってからは、ほとんど会わなくなったけど、不動産投資の仕事をしていたのは知っていた。一度、相談したこともあるよね。昔の友達に仕事の話をすることはまずないのに。
西羅 どんどん有名になっていって、淳は頑張ってるなぁと。僕も頑張ろうと思った。それに
しても、前社長の本と淳が出した本が、本屋の平積みで隣になってたことがあって、驚いた。
中川 あ、西羅の会社やと思って、その本、買ったよ。でも、西羅が社長になったと日経新聞に出ていたのには僕も驚いた。
西羅 社長就任のお祝いにご飯に行こうと誘ってくれて、同級生4人で食事に行ったよね。
中川 その時、仕事の話を真剣にする西羅の姿を見て驚いた。
西羅 いつもふざけてる訳じゃないでしょ(笑)。
中川 だったら、仕事の面でも一緒にやっていけたらと思って、学生が地域産品のセレクトショップで本気で商売を学ぶ「アナザー・ジャパン」の協賛をお願いしたら、快諾してくれて。
西羅 初めて淳と仕事の話をまじめにしたよね。でも、日本の工芸を元気にするんだ! というビジョンを、本気でやろうとしているんだと改めて知って、一緒にやっていきたいと思った。
中川 それからポーター賞の受賞のお祝いもしようとなって。
西羅 中高の同級生に受賞者がいるなんてまずない。業種は違えども、同じ経営者として、志を持って頑張れる気心知れた仲間がいることは本当に嬉しい。人生は本当に面白い。
中川 たくさんの先生方やこれまでの受賞者も参加するポータークラブで西羅が表彰されることになって。西羅が挨拶する時は、めちゃくちゃ緊張したなぁ。変なこと言わないかな、と(笑)。でも、立派にスピーチしていた。
西羅 当たり前や。でも、ポーター賞の受賞は嬉しかった。ガッツポーズが出たもの。『これまでになかった不動産のマーケットを作る、日本の大地主になる』と言い続けてきたけど、すぐに理解されるビジネスモデルではなかなかなくて。ポーター賞をいただけたことは、今後の発展にプラスになると思った。
中川 中高じゃ決して優等生だったわけでもなかったふたりがポーター賞を受賞する。僕も嬉しかったな。
西羅 偉そうに言うわけではまったくないけど、経営者ってやっぱり孤独。気兼ねなくなんでも話せるわけではない。でも、中高の同級生で経営者仲間がいると、本当に気兼ねなくて、あっという間にあの頃に戻れてしまう。一緒にご飯を食べてると、他にはなかなかない、いい時間を過ごせるよね。
中川 社会人になってからの友達もいいけど、昔の友達はやっぱり特別だと思う。加減がいらない、というのかな。ギリギリのところまでしゃべれる。
西羅 たしかに加減はないなぁ。
中川 西羅の場合は、常識に囚われないから、余計にそうでしょ。それこそ、そこが誰も真似できないとこだしね。
西羅 会社でも、常識はこうだ、世間はこうだ、という話が出たら注意するようにしている。周りばかり気にするな! と。
中川 ふたりとも今年50歳。より面白く生きたいね。