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2024.05.04

落合陽一、超貧乏インド旅行に一緒に行った同じ年の理系博士号を持つ社長とは

メディアアーティスト、ピクシーダストテクノロジーズ代表・落合陽一氏と、エネチェンジ代表取締役CEO・城口洋平氏。上場起業家ふたりのエピソードを紹介。【連載 相師相愛】

落合陽一氏と城口洋平氏(座り)
メディアアーティスト、ピクシーダストテクノロジーズ代表・落合陽一氏(左)と、エネチェンジ代表取締役CEO・城口洋平氏(右)。撮影場所:落合陽一「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」Gallery & Restaurant 舞台裏展示風景

規格外の同い年

城口 同じ年で面白い人がいるから、と運営者からイベントに呼ばれて、衝撃を受けたんです。自宅でゴキブリを1000匹飼っていて、電極を埋めこんで動かすという話をしていて。

落合 2011年10月だね。

城口 僕は在学中にも起業していましたが、母校の灘校でも東大でも会ったことのない、規格外のクオリティの人だな、と。

落合 感想をツイートしてくれて、リプライを送り合ったら共通の友人がたくさんいて、飲み会でも会うようになって。城口君の会社で働いてみたり。

城口 聞けば、落合君は当時まあまあ貧乏な生活をしてたから、ちょっと手伝って、と。

落合 面接官として参加したこともあったね。

城口 僕は政治家になりたくて法学部に入ったけど、起業家のほうが世の中を変えられると思って会社をつくった。でも、世界を目指す会社はつくれなかった。語学やサイエンスなど、自分にもスキルがなかった。落合君はそこに気づかせてくれた。

落合 それで会社を清算して丸刈りになるわけだよね。

城口 その前に議論したよね。それで決めたのが、ケンブリッジ大学の工学部でエネルギー工学を学び、博士号を取ること。試験の時は手伝ってもらって。

落合 入学前に、インドの旅にふたりで行ったね。本気で人生を悟りに行こう、と。ガンジス川に行き、アガスティアの葉も見に行って。

城口 超貧乏旅行だったから、寝台列車はひとつのベッドにふたりで頭を逆さにして寝て。でも、この時何よりびっくりしたのは、僕が人生をぼんやり考えている横で、落合君はずっと論文を書いてたこと。

落合 プログラムもね。

城口 僕よりハードワークをする人間は、見たことがないくらいに思ってたけど、落合君は違った。とんでもない努力に裏づけされた実力だったんだ、と。だから、ケンブリッジで理系の博士号が取れるくらいのハードワークをしないと、落合君の領域にはたどりつかないと思った。

落合 城口君がエネルギー系をやりたいという判断は極めて合理的だったし、違和感もなかった。それにしても僕たち、やってることも、考え方も、社会のなかの位置づけも、バッティングしないよね(笑)。

城口 でも10年経ってふたりとも上場会社の社長になった。理系の博士号持ってる同年代の社長はいない。これからも、お互い刺激的な関係でいたいね。

落合陽一氏と城口洋平氏(立ち)
落合陽/Yoichi Ochiai(左):
メディアアーティスト、ピクシーダストテクノロジーズ代表。1987年生まれ。2010年頃より作家活動を始め、境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開。筑波大学准教授、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーを務める。

城口洋平/Yohei Kiguchi(右):
1987年生まれ。東京大学法学部在学中に起業。ケンブリッジ大学工学部博士課程を経て、2015年にエネチェンジを起業。2020年にエネルギーテック企業として初めて東証マザーズ上場。

落合 話していて、いつも楽しい。しかも城口君は流儀に風格と品格がある。だから、交流関係が広い。

城口 落合君は圧倒的な努力家。僕が知る限り、一番の努力家。レベルが違う。才能もすごいけど、努力がすごい。

落合 毎日、全力で働いてます。それは間違いない(笑)。でも、城口君はアルマーニのジャケットが着られなくなるから、とジムで鍛えていたりして、バランスが取れているよね。

城口 今は、犬と過ごすのが人生のすべてのようなところがあるんだけど。僕はロンドンに住んでいて、今回は犬を置いての東京出張だから、寂しい。

落合 そういえば、共通の友人の女性が病気になったとき、人一倍、心配した城口君の動きは本当に素早かった。ご主人よりも早かった。

城口 母校の灘校はたくさん東大の医学部に入るので。あのときは高校、大学の母校のネットワークをフルに使った。おかげでピンポイントの専門を持っているドクターがいて、3日で解決した。早くなんとかしたくて、婚約者が病気になった、と偽ったのは申し訳なかったんだけど。

落合 それは悪いウソじゃないから、いいんじゃないかな。でも、僕がさあ考えようと思ったときには、もう解決してて(笑)。やっぱりナイスガイだと思った。

城口 落合君で覚えているのは、自分の会社がナスダックに上場したのに、ぜんぜん何とも思ってなかったこと。ちょうど大学の研究員2人とロンドンに出張に来ていて会ったんだけど、2人の研究員は上場の意味を理解してなかった(笑)。落合君も興味なさそうで。ちょっとくらい、喜びなさい(笑)。

落合 そういえば、お祝いパーティとか一度も出たことがない。

城口 でも、同い年で世界を変えられるエントリーチケットを手にしている立場のふたりだと思う。これからも、いい距離感で人生を楽しんでいこう。

■連載「相師相愛」とは……
師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。

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