ビーケージャパンホールディングス 代表取締役社長・野村一裕氏と、崎陽軒 代表取締役社長・野並晃氏。最初の会社の先輩後輩である経営者ふたりのエピソードを紹介。【連載 相師相愛】
20代前半に会社の寮で出会ったふたり
野村 就職氷河期で採用人数が少ない時代だったから、ふたつ下の後輩が入ってきてくれたのは、嬉しかった。
野並 職場は別でしたが、キリンビールの兵庫にあった寮が一緒で、歓迎会もしてもらって。
野村 ノナは、飲むと真っ赤になってたよな。
野並 お酒弱くて。先輩の方々のおかげで、少しは飲めるようになりました(笑)。
野村 仕事が終わって寮に戻ると「ノナお帰り、待ってたよ」とよく飲みに誘っていた。
野並 はい、よく誘っていただきました。仕事で疲れている時はしんどい時もありましたが(笑)。
野村 若手だけで集まって、ああでもない、こうでもない、と会社や仕事の話を本当に真剣にやっていて。ノナは後輩だけど正論を言っていて感心していた。
野並 思ったことは、口にしてしまうタイプなんです。先輩は怖かったんですけど。
野村 スポーツをやってた人たちも多く、ハキハキ、うるさい系が多いなかで、落ち着いてたよね。熱いみんなの壁打ち相手になってくれていた。飲んですぐ寝ちゃってたけど。
野並 先輩たちの議論は終わらないんですもん。帰り際になって、よく起こされましたね。
野村 それにしても2年半、崎陽軒の社長の息子だといっさいあかさなかった。3年で会社を離れると決まっていたことも。
野並 噓はついてないですよ。言わなかっただけです。
野村 でも聞いた時はびっくりして、崎陽軒のホームページを見てみたら、ノナにそっくりのお父さんの写真があって。
野並 野村さんこそ、あれだけキリンビールを愛しておられたのに、辞められたことには驚きました。
野村 ちょっと愛しすぎちゃったんで、外で一度修業して醒ましてきたほうがいいんじゃないかと思って(笑)。
野並 そしてバーガーキングを展開する会社で経営者になっている。私のようにレールを敷かれた社長ではありませんから、これは本当にすごいことですし、また驚きました。ユニークな取り組みもたくさんされてて。
野村 今もいろんな人に壁打ちの相手になってもらってる。
野並 壁打ちって、実は自分にアイデアがないとできないと思うんですよ。やっぱりすごい。
野村 それにしても20代前半に会社の寮で出会ったふたりが、こうやってスーツを着て、経営者同士で対談してる。人生は本当に面白いね。
野並 キリンビール時代にも競合と激しい競争がありました。ハンバーガー業界も、競争が厳しいんじゃないですか?
野村 もしかしたら戦いに行くのが好きなのかな。
野並 でも、昔から常に消費者の目線でしたよね。「売り場じゃないぞ、買い場だぞ」とよく言われていて。今も挑戦的なことをされていますよね(笑)
野村 自分にとって何が楽しいか、何にワクワクするか、を大事にしている。あくまで決めるのはお客さまですが、常に挑戦していきたいですね。
野並 同じようなことはできないな、と思って見ています。チャレンジングという言葉以上、ですよね。だからラグビーをたまたまテレビで見ていて、選手がハカをやっていると、ああ野村さん、この先頭が似合うなぁ、と思ってしまったり(笑)。
野村 実はうまくいかなかった取り組みもたくさんあるんだけどね。バットを振らないと、ボールには当たらないから。あと、流行りものには追随しない。これはポリシーかな。
野並 私なんて、大したアイデアを持っていない。人の力を借りるしかないです。
野村 創業家のオーナーがアイデアばかり出したら、それはそれで問題でしょう。創業直後なら、別かもしれないけど。
野並 それでも、次から次へと、ほんとすごいですよ。
野村 超大手もいるなかで、常に尖っていないと振り向いてもらえないから。
野並 そうですよね。崎陽軒も、初代社長の野並茂吉が栃木県鹿沼市出身ということからシウマイによる町おこしをしてきました。最近では、福井県と2022年に相互協力協定を締結し、2024年春の北陸新幹線・福井敦賀開業をフックに福井の自慢の食材を使用したお弁当を売りだします。地域活性化のひとつのきっかけになればと思っています。私も野村さんに負けてられないです!
野村 いつか何か一緒に仕事ができるといいよね。ハンバーガーとシウマイのコラボレーションとか(笑)さっそくこの後、考えよう。
■連載「相師相愛」とは……
師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。