寺田倉庫 代表取締役社長・寺田航平氏と、WineBank 代表取締役社長・中野邦人氏。独立前のお客様だったという経営者ふたりのエピソードを紹介。【連載 相師相愛】
ぐるっと回って、ビジネスパートナーに
中野 寺田さんは独立前に勤めた会社のアドバイザーであり、私のお客様でもありました。
寺田 当時23歳だったでしょ。若いな、という印象でした。ハキハキして元気で素直で。
中野 もともと独立は考えたことがなかったんですが、経営者とたくさん会っているうちに、自分でもやりたくなっていったんです。思い切ってご相談したら、寺田さんの会社から出資までしていただくことになり。
寺田 ビジネスモデルと本人のやる気に賛同した、というところですね。面白いことをやっていくのを、一緒に伴走していきたい、という気持ちでした。
中野 資本政策の話など、経営者のイロハを丁寧に説明してくださって、ありがたかったです。
寺田 でも、けっこう苦労することになりました。骨格の事業は好調なのに、新規事業でいろんなことをやりたがるから(笑)。
中野 おっしゃるとおりでした。飲食関連でしたから、その骨格の事業にコロナが直撃したところで、後にWineBankとなる事業に出合うことができて。
寺田 ずっと飲食に関わっていたし、富裕層向けのマーケティングや資産運用の経験もあった。得意を生かすことは大事。過去の経験値を組み合わせることで、成功確率を高められます。
中野 寝かせることで、価値が上がっていくワインがあることには気づいていたんです。在庫で持っていたワインは2、3倍の価格になっていたものもあったし、年10〜15%上がっていくものもありました。ITをうまく使って、富裕層に購入いただいて運用するビジネスが展開できるんじゃないかと。保管はもちろん寺田倉庫で(笑)。
寺田 ぐるっと回って、一緒にビジネスをすることになった。
中野 まだまだ規模が小さいのでビジネスパートナーなんておこがましいですが、寺田倉庫と資本業務提携をさせていただくことになり、いろんなアドバイスもいただいて。ワインの時価を出したり、売り時を提案したり、ワインの管理をクラウド化する新たな売買の場をつくるなど、金融テクノロジーも使いながら事業を広げていきたいです。
寺田 株主でもあり、協業もするわけですが、実はライバルという側面もあるんです。私たちも頑張りますけど、ワインについての新しいサービスをどんどん出していってほしいですね。人の好みを可視化して見つけてきてくれる、なんてどうかな。
中野 ワインでできることはまだまだたくさんありますね。
寺田 時代とともに価値が継承されて上がっていくお酒は、ワインくらいでしょう。しかも、科学では解明できないさまざまな要素が詰まっている。ブドウ畑がたった50m離れているというだけで同じクオリティにならない。半径20㎡のワインだけが、50年も価値を維持したりする。その神秘性も魅力ですね。
中野 だからこそ、保管は大事になります。お客さまに提案して、まず聞かれるのは、どこに預けるのか、でした。寺田倉庫といえば、すぐに了解いただけます。実際、倉庫を見てもらえればわかりますが、保管する場所のしつらえからして安心感があります。
寺田 そう言っていただけると嬉しいですね。重厚な内装は評価をいただくことが多いです。1970年代から個人用タイプのセラーを始めた会社ですが、少しずつ進化して今に至ります。
中野 今日はワインラウンジにお邪魔していますが、実はこの部屋は初めて入りました。
寺田 そうでしたか。保管していたワインが飲み頃になり、親しい人を呼んで飲んでいただけたりする場所です。
中野 それにしても、寺田さんのところには、いつも人が集まってくる。それは、自分のためというよりも、相手に与えようという気持ちで動かれているからだと感じています。
寺田 中野さんは、変化に強いですね。最初に作ったビジネスモデルに執着してしまう人は意外に多いんです。でも、変化に対して機敏に反応した。挑戦していくことは、とても大切です。
■連載「相師相愛」とは……
師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。