「自分の強み」を見つけるコツは、若手が避けがちな○○との交流にあり！

放送作家、NSC（吉本総合芸能学院）10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

卒業が近づき、吉本NSCではこんな質問が増えてきました。

「なかなか自分の強みやキャラが見つけられません。見つけるにはどうしたらいいのでしょう？」

4月からプロの芸人としてのキャリアがスタートするけど、数千人がひしめく芸人界で、どうやって自分の強みやキャラクターを打ち出していけばよいのか分からない。

これは、同僚や他社ライバルの中でしのぎを削っているビジネスパーソンも抱えている悩みではないでしょうか？

そこで今回は、M-1王者をはじめ数々の人気芸人のブレイクスルーをサポートしてきた僕が感じている、「現代人が見落としがちな、自分の“強み”の見つけかた」をシェアしていきます。

「強み」の発見者は、いつも外側からやってくる

冒頭の相談をしたNSC生たちに、「どうやって見つけようとしている？」と聞くと、ある共通点が浮かんできます。

• 英語が得意なので→もっと語学を磨きたい
• スイーツ好きなので→その分野のバイトを始めたい
• 歴史が得意なので→資格を取ろうと考えている
• 筋肉に自信があるので→どんどんジムに通いたい

どのプランも素晴らしいです。しかし、強みを見つける想像力が、すべて“これまで自分が見つけてきた趣味や特技の延長線上”に留まっているんですね。

なので僕は、「とてもいいね」と肯定したあとに、こんなふうに伝えています。

「見落としている視点が一つあるよ。それは、強みを見つけるのは、自分でなく“周りにいる他人”でもあるってこと。強みの発見者は外側からやって来たりもするよ」と。　　

私たちは、20歳なら20年間、40歳なら40年間、「自分のことは自分が一番分かっている」「自分はアレが好きでアレは苦手だ」と自己分析をして生きています。

しかし、イヌ派だと思っていたのにネコにどハマりしたり、よく知らずに避けていたインド映画に急にハマったり、偏見や先入観によって“頭の中のキャビネットに色眼鏡をコレクションしている”こともあります。そんな凝り固まった色眼鏡を外すキッカケを与えてくれるのが他者だったりするんですね。

では、そんなメンター（助言者）は、どうすれば得ることができるのでしょう？ そのコツを、芸人さんのエピソードをもとに紐解いていきましょう。

芸人さんに学ぶ「強みの発見者」と巡り合う方法

なかやまきんに君の活躍ぶりは言うまでもないですが、NSC時代は一番下のクラスにいた彼がブレイクできたのは、芸名をつけたFUJIWARA原西さんをはじめ、陣内智則さん、小籔千豊さん、サバンナさんら、先輩芸人の助言やブランディングのおかげ。きんに君は「先輩が僕のキャラや芸を作った」と言っています。

ギターを弾きながら毒を吐く芸風のR-1王者・お見送り芸人しんいちさんは、ブレイク前はサンドウィッチマンの地方公演に付き添いドサ回りをしていました。

ある日、富澤さんが楽屋に置かれたギターを見つけ、「お前は悪口が得意なんだから、ギターを弾きながら悪口を言ってみたら？」と助言したことで、R-1王者となる芸が生まれました。

こういった、他者が「思いもしなかった自分」を発見してブレイクスルーにつながったエピソードはたくさんあります。

ハリセンボン春菜さんの代名詞、「角野卓造じゃねーよ！」は、彼女たちの持ちネタから生まれたのではなく、ロンドンブーツ淳さんとトークしたことがキッカケですし、そんなロンドンブーツの金髪と赤髪というキャッチーなアイコンは、極楽とんぼ加藤さんのアドバイスでした。

他者から「強み」を見つけてもらった人に共通しているのは、現代の若者がもっとも苦手意識をもっている“先輩（上司）との交友も大切にした”という点です。

なかやまきんに君は、先輩に顔を覚えてもらうために、毎日同じユニフォームを着て吉本に通っていましたし、「お見送り芸人」という名前からも分かるように、しんいちさんはサンドウィッチマンの仕事や私生活に付き添い、日夜「お見送り」をしていたし、ロンブーの亮さんも、お酒が飲めないのに、お酒が好きな加藤さんの誘いを受けていたのです。

皆さんは、「先輩」や「上司」というだけで一線をひき、交友を絶っていませんか？　

同じ職種の先人は、目障りに見えるかもしれませんが、目が覚める金言をくれるメンターにもなるということは、頭の片隅に入れておきたいものですよね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。