PERSON

2024.12.30

「ミスを指摘すると不貞腐れる部下」と向き合う3つのコツ

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

あなたは今年、何人の同僚にイラッとしましたか? 今回の相談はそんな職場の人間関係についてです。

「ミスの指摘や助言をすると、怒って不貞腐れてしまう人がいます。そういう人を怒らせずに、助言を受け入れてもらうにはどうしたらいいのでしょうか?」

部下や取引先、そして家族でも、「ここが間違ってるよ」とか「こうしたほうがいいよ」と指摘すると、不機嫌になったりヘソを曲げてしまうことってありますよね? そんな相手にはどのように向き合えばいいのでしょう?

そこで今回は、吉本NSC講師という職業柄、たくさんの生徒を指摘し、たくさんの生徒に憮然とされてきた僕が、「指摘すると怒る人への対処法」をシェアしたいと思います。 

怒る人は、「指摘」を「私的」に受けとってしまう

まず、指摘すると怒る人は、なぜ怒っちゃうんでしょう?

僕の経験だと“怒る人は「指摘」を「私的」に受けとってしまう”からなんです。

例えば、提出資料の誤植を指摘したとき。こちらは誤字や脱字の存在を伝えただけなのに、「そんな冷たく言う?」や「細かすぎるでしょ?」などの“私的な見解”を入れたり、「徹夜で作業したのに!」「また上司に叱られたよ……」などの“私的な感情”を挟み込んでいるんですね。

なので僕は、吉本の生徒たちに事前にこう伝えています。

「僕ら講師は指摘することが仕事なんで、これから何度も指摘します。だけどそこに『またお前か』とか、『同じこと言わせやがって』とか、私的な感情を入れないように努力するので、よろしくお願いします」と。

そう、私的に受けとる部下は決して0人にはならないけど、まずは“指摘する側の人間が、部下のミスを私情を挟んで見ないようにする”ことが大切。

できれば僕のように宣言をして、もしそうなっていないときは“部下から指摘される”といったチームにしておくほうが健全な組織になるんですね。

相手にとってほしい態度をとらせるコツ

次に、あなたが指摘したときに、部下にとってほしい態度や姿勢はどういったものですか?

きっと多くのリーダーポジションの人は、「冷静に」「感情的ならず」「間違いは真摯に受け止めてほしい」などと思っているのではないでしょうか? では、どうすれば部下はそうなってくれるのでしょう?

答えは“あなたがそれを示す”です。

いくら部下がミスを繰り返しても、ガミガミ怒ったり、間違いを正して屈服させてやろうとは考えず、あなたは冷静に、感情的にならず、真摯な振る舞いで対話をする。

そう、まずは私たちが“そうであってほしい態度”を示すべきなんですね。

ミスをした理由を打ち明けてほしいのなら、まずは自分が過去にしたミスを打ち明けてみたり、譲歩してほしいのなら、こちらも何かを譲歩してみる。

僕の知見では、指摘に対して不機嫌になる人は、話し手の「言い方」「リズム」、そして「(指摘を受けた)場所」によって反射的に意固地になるケースがほとんどなので、相手にとってほしい態度で、あなたが対話をスタートさせることが大切なんです。

人と「つながる」と、人を「つなぐ」は大違い

最後にもう一つ、指摘に対して不機嫌になる部下の共通点があります。

それは「普段から思うところがある」という点。つまり日常から、あなたや上司に対して「何かしらの不服」があり、指摘の内容にかかわらず、それをテコにして怒りが噴き出すんです。

このパターンへの対処がもっとも難しいのですが、私たちリーダーが気をつけておくべきなのは“「人とつながる」と、「人をつなぐ」の違い”を知ることです。

私たちは他者とつながりを求めて生きていますが、上司やリーダーは、ときに“権力や立場といった「鎖」をつかって、自分と部下をつないでしまう”ことがあります。

「上司の言うことは絶対」「時間は全てオレ合わせ」といった類のものは、すべてその「鎖」です。

このような「つながり」と「つなぐ」を履き違えているリーダーは、ある日、とても大きな怒りや反旗を掲げられがちなので、気をつけておきたいポイントです。

もしも今回シェアしたことを、すでに理解・実行している人がいたら? それでも怒りだす部下は、もはやその人の課題なので、気にしないようにしましょうね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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