PERSON

2024.11.28

広島の新4番・小園海斗はなぜ、着実にレベルアップできたのか

オフに行われたプレミア12でセカンドとして出場​し、スーパーラウンド初戦となるアメリカ戦で大活躍を見せ​た、広島・小園海斗がスターとなる前夜に迫った。

報徳学園時代の小園海斗
報徳学園時代の小園海斗。

チームの中心になりつつある広島の新4番

以前のコラムでは2024年ブレイクしてゴールデングラブ賞を受賞した矢野雅哉(広島)を取り上げたが、同じ広島でもう1人、今後チームの中心として期待されているのが小園海斗だ。

プロ入り6年目の2024年シーズンは初めて全143試合に出場し、いずれもキャリアハイとなる151安打、61打点、13盗塁をマークし、4番を任される試合も多かった。

オフに行われたプレミア12でもセカンドとして出場。スーパーラウンド初戦となるアメリカ戦でも2本のホームランを放つ大活躍を見せ、侍ジャパン定着に向けて強烈にアピールしている。

1年生とは思えない打者としての才能

そんな小園は兵庫県の出身で、中学時代は中学硬式野球の名門・枚方ボーイズで藤原恭大(現・ロッテ)などとともに活躍。当時から評判の選手で多くの高校から誘いがあったというが、地元の報徳学園に進んでいる。

高校でも入学当初からショートのレギュラーに定着。初めてプレーを見たのは2016年7月14日に行われた夏の兵庫大会、対須磨翔風戦だった。

相手チームのエースは当時3年生でドラフト候補だった才木浩人(現・阪神)だったということもあって、この試合のスタンドには多くのスカウト陣がつめかけていた。そこで1年生の小園は驚きのプレーを見せることとなる。

第1打席こそ三振に打ち取られたものの(振り逃げで出塁)、第2打席、第3打席と連続でセンター前ヒットを放ち出塁。

140キロを超えるストレートにもまったく振り負けることなく、完璧にミートしていたことを今でもよく覚えており、当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「少しバットを揺らしながらタイミングをとるのは気になるが、振り出しの鋭さはとても1年生とは思えない。ただ当てるだけでなくしっかり振り切ってインパクトも強く、才木のストレートに力負けしない。

打球の速さもチームのなかでも目立つレベル。フルスイングしてからすぐに走り出し、トップスピードになる脚力も十分で、足を緩めることなく全力疾走を怠らない姿勢も素晴らしい。

ショートの守備も捕球、送球の形が良く、プレーに落ち着きがある」

第2打席で放ったセンター前ヒットの一塁到達タイムは4.05秒を記録。これは内野ゴロで駆け抜けたとしても俊足というレベルであり、いかに足を緩めずに次の塁を狙っていたかがよくわかるだろう。

このヒットを足掛かりにチームは先制点を奪い、才木を攻略して5対1で勝利をおさめている。

常に全力疾走を怠らず、積極性を失わない姿勢

その後も小園のプレーを見る機会は多かったが、見る度に体も大きくなり、攻守ともに順調にスケールアップしていた印象が強い。

そして最も強烈なインパクトを残したのが3年夏に出場した甲子園大会の初戦、対聖光学院戦だ。

第1打席でレフト、第2打席ではセンター、第4打席でも左中間へと3本のツーベースを放って出塁。その後すべてホームに生還し、チームは3対2で接戦を制したのだ。

もう一つ驚かされたのがショートの守備である。他の選手と比べても明らかに2~3mは後ろで守り、そこから軽快な動きと強肩でゴロをアウトにしていたのだ。

体つきも特に下半身周りが充実しており、高校生のなかに1人だけ大学生か社会人が混ざっているように感じた。当時のノートにもこのように書かれている。

「春と比べても一回り体が大きくなり、それでいながらプレーのスピードはまったく落ちていない。

146キロのストレートに対しても難なくミートし、ヘッドがしっかり走るので左方向への打球も速い。甘いボールは初球からどんどん振れる積極性も素晴らしい。

打球の速さ、勢いは他の選手と明らかにレベルが違う。下半身が強く、変化球に対してもしっかり体を残して流れずに振れる。ベースランニングのスピードも抜群で、足を緩めずに次の塁を狙う姿勢も素晴らしい。

(中略)

守備位置深くても打球に対する反応が素晴らしく、前の動きも左右の動きも軽快。捕球から送球の流れもスムーズで、フットワークも流れるよう。高校生のショートとしては言うことないレベル」

この年の甲子園では春夏連覇を果たした大阪桐蔭の根尾昂(現・中日)が注目を集めていたが、ショートらしさで言えば小園のほうが大きく上回っていたことは間違いないだろう。

入学してきた時から評判のいわゆる“スーパー1年生”は少なくないが、そこからここまで順調に成長した例は珍しい。

体つきやスイングの力強さももちろんだが、常に全力疾走を怠らず、積極性を失わない姿勢も成長できた要因の一つではないだろうか。

プロでも2年目こそ苦しんだものの、それ以降は年々着実にレベルアップしているように見える。

元々守っていたショートは冒頭でも触れたように矢野が任されているが、サードやセカンドでも見事なプレーを見せており、選手としての幅が広がっているのもプラスだ。

今後も広島はもちろん、侍ジャパンを牽引する活躍を見せ続けてくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ1月号』が2024年11月25日に発売となる。今回の特集は“シャンパーニュの魔力”。日本とシャンパーニュの親和性の高さの理由に迫る。表紙は三代目 J SOUL BROTHERS。メンバー同士がお互いを撮り下ろした、貴重なビジュアルカットは必見だ。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる