PERSON

2024.11.17

「企画づくりのカギは“枯れた技術の水平思考”」気鋭放送作家の仕事術とは

テレビ・YouTube・ライブ・ラジオ・広告・映画・ドラマ・ボードゲーム制作など、多岐に渡る活動をしている放送作家・白武ときお氏。2024年10月に、自身が仲間とともにゲームデザインを担当したボードゲーム『サンレンタン』が発売されたことを記念してインタビューを実施。第2回は、アイデアの発想法と今後の野望について。

放送作家の白武ときお氏。イメージカット。

“分析と逆算”で新しいアイデアを生みだす

これまでにテレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』や、霜降り明星のYouTube『しもふりチューブ』などを手がけ、今話題になっているボードゲーム『サンレンタン』のゲームデザインも担当した人気放送作家の白武ときお氏。

ジャンルにとらわれず縦横無尽に活躍する白武氏のアイデアは、どこから生まれてくるのだろうか。

「テレビ番組の場合、少し前までの自分だと『ただ面白い番組を!』と考えていたんですが、最近は“分析と逆算”で考えるようになりました。

例えば、テレビ局の方から『ゴールデンタイム(19時〜22時)に流すバラエティー番組を考えてほしい』という要望があったら、まず『この要望がなんのためにあるのか』を考えます。そして、他のテレビ局で放送されている“裏番組”を見て、内容が被らないように逆算する。また、『そのテレビ局の編成はどのMCを評価しているのか?』『視聴率が獲れると思っているのか?』といったことも考えたうえで、数字が獲れそうで自分も面白いと思えるものを作っていきます」

また、テレビ番組だけでなくYouTubeやWEBメディアなど多様な媒体をうまく使っていくためには、企画の“出し口”を選ぶことも重要だという。

「自分が考えた企画をどのメディアに出すのが最も効果的か。『これは紙媒体の方がいいな』とか『ラジオの方がウケるんじゃないか』など、企画に応じて露出方法を変えたり、相性がいいディレクターさんに渡したりしています」

放送作家の白武ときお氏。ポートレート
白武ときお/Tokio Shiratake
1990年京都府生まれ。2011年に放送作家としてデビュー。著書に『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』がある。2024年10月16日に発売したボードゲーム『サンレンタン』(幻冬舎)のゲームデザインを担当。

海外でも通用するバラエティ番組のフォーマットを作りたい

高校生の頃から憧れていた放送作家という夢を実現させた白武氏。今の仕事には、学生時代からさまざまな映像作品や本などを見続けてきた蓄積が役に立っていると語る。

「アイデアを考えるうえで必要なのは、まず過去のあらゆるジャンルの作品を楽しんで、研究すること。過去にどんな企画が組まれてきたのか、これまでのエンターテイメントの系譜を知っておくことが大切だと思います。

どんな業界やジャンルでもいいのですが、なにか自分の“持ち場”だと思うものを決めたら、その第一人者になれるくらい徹底的に勉強して知識を蓄えておく。そうすれば、同じ業界で働く人たちともコミュニケーションが取れるし、舐められないで済むかもしれません」

これまでエンタメ業界が辿ってきた歴史を知ることで、業界全体を俯瞰してみることができる。しかし、過去の作品をそのまま企画にしてはいけないとも話す。

「昔は、テレビ番組ごとにオリジナルの企画やゲームを必死に考えていたように思います。ただ、今はネットやYouTubeの影響もあり、バズッたものがあるとそれがあっという間に広がっていくので、ただ面白い企画を真似するだけみたいなことも許容されるようになりました。

立てる打席がある限り、僕はなるべく新しい企画やゲームを作っていきたい。過去の企画に自分なりのアレンジを加えたり、今の時代の要素を掛け合わせたりしていかに新しく見せられるか。そういうところに力量が表れると思います」

そんな白武氏が尊敬する人物のひとりに、かつて任天堂に所属していた横井軍平氏がいる。電卓の技術を応用した『ゲーム&ウオッチ』や、当時安価になっていたモノクロ液晶を使って開発された『ゲームボーイ』など、数々の名作ゲームを手がけた日本を代表するゲームクリエイターだ。

古い技術の新しい使い道を考えることで、まったく新しい価値を生みだす。そんな横井氏の“枯れた技術の水平思考”という哲学は、白武氏にも影響を与えている。

「僕は、プレイステーションみたいに常に最先端の技術で戦い続けるというタイプではありません。すでにあるアイデアの“掛け算”をすることで、新しいものを生みだしていく、そんな横井軍平さん的な任天堂の考え方に共感します」

そんな白武氏に、今後の野望について聞いた。

「『SASUKE』や『ドキュメンタル』のような、海外でも通用するバラエティ番組のフォーマットを今考えているのですが、なかなか企画が通らない。それをカタチにできるよう頑張っていきたいです。また、『ハリーポッター』や『かいけつゾロリ』のような児童書の分野も興味があって構想を進めているのと、漫画の原作も進めている案件があるので、実現していきたいですね」

作り手としてエンタメの世界に貢献したいと話す白武氏の挑戦から、目が離せない。

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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