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2024.09.30

若い頃の「タフな経験」は、未来に出合う不測の事態で「心のフタ」になる

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

今あなたはタフな環境にいますか?

  • 体育会系の上下関係がつらい
  • ブラックな仕事をさせられている
  • 何をしても、まっとうに評価されない

こういった職場からは「すぐに逃げてもいい」が現代のセオリーですし、現に一つでも「不都合なこと」があれば、すぐに辞めてしまう若者が多い時代です。

ですが、間もなく50歳になり、(自覚はないですが)吉本NO.1講師と呼ばれている僕が、自分の「人格」の造形について振り返ってみると、今の僕をつくっているパーツの大部分は、つらく、歯がゆく、理不尽といったタフな経験で得たモノ。

そして、「タフ」な経験が、未来で待ち受ける“まさか”に対処する「フタ」にもなってきたと感じるんです。

では今週は、そのあたりを深掘りしていきましょう。

早年のタフな経験は「飛び級」と同じ

僕はよく同世代の仕事仲間に、「なんでド後輩に、いつも敬語なの?」と言われます。

10代の芸人、番組ADなど、誰であってもデフォルトは敬語。その理由は“一番ラクだから”だし、上下関係なんて“遠い昔にやり終えたゲーム”だからです。

15歳のとき、僕は甲子園で7度優勝の名門校に入り、毎日しごかれました。校内では3つの言葉(はい/いいえ/なんですか?)しか使えず、暴力は当たり前。神聖なグラウンドに水が溜まれば「お前の口で吸え」、アリがいたら「食え」と言われたこともありました。

そんなタフな経験をすると、もはや上下関係は、やり倒したRPGゲームくらい全体像やバグ(不具合、欠陥)が分かってくるので、“いい大人になったら振りかざすモノじゃない”と若年で気づくんです。

今、厳しい上下関係の渦中にいる皆さん。あなたのタフな日々は、視点を変えれば、より良いリーダーになるための思考を手に入れる先行体験。言わば「飛び級」のようなもの。そんな一側面もあると伝えておきたいです。

キャリアの土台づくりは「方向」より「スピード」

一緒に番組をつくっているテレビマンには、「台本を書くのが異常に速いですね」と言われます。

これは下積み時代に、スピードを鍛えられた賜物です。

よく成功者は、「スピードよりも、自分がどこに向かっているか? 方向のほうが大切だ」と言いますが、僕は「方向よりスピード」のほうがキャリアの土台づくりには必要だと思っています。

21歳のとき、僕は劇場で下働きをはじめ、小道具づくり、舞台進行、マネージャーの代行など、あらゆる雑用を言い渡されました。200ページの脚本を書いてもギャラは500円で、書けども書けども金欠。

「自分がどこに向かっているか?」と方向を見定めるヒマもなく、ただ「眼前の仕事を早く終わらせて眠る」ことだけを考えて息をしていました。

振り返れば、それはくっきりとした「ブラック」だったのですが、そのとき五体に沁み込んだ「処理スピード」は、現在も衰えることはありません。

今、きつい仕事をしている皆さん。つらければ逃げてください。さまざまな理由で逃げたくない、あるいは逃げ出せない方。あなたのタフな仕事は、いつか必ず「ココにつながるのか!」というサプライズとともに伏線回収されます。そんな楽しみもありますからね。

タフな経験が未来の「まさか」にフタをする

15歳~20代半ばまで、ブラックの見本市みたいな場所にいた僕が一番よかったなと思うこと。それは、めまぐるしく起こる「まさか」=「仕事上の不測の事態」に対応するメンタルです。

社会は決して生きやすい場所ではなく、イラっとさせる人、仕事ができない人、悪評を流す人など“まさかの人が、まさかのハプニング”を寄こしてきます。

そんなとき、いちいち反応し、心をかき乱されていたら、自分のフォームを崩し、評価を下げるだけ。

タフな場数を踏んでいると、そんな人々や事態に振り回されることなく鷹揚に対処できる。そう、「タフ」な経験は、怒り、苛立ち、負の感情といった乱心に「フタ」をする戦利品にもなるんですね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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