現役を退いたのち、野球解説をはじめ、タレント業、YouTuberとしても活躍する五十嵐亮太さん。引退後に乗ったバイクが新たな気づきを与えてくれた。 【特集 人生を変える最強レッスン】
「現役時代のドキドキワクワクな刺激がバイクには詰まってます」
プロ野球選手時代、その甘いマスクから「球界のキムタク」とも呼ばれた元速球派投手の五十嵐亮太氏。逞しい体躯によく似合っているのが、愛車のBMW R18だ。
縦置きされた水平対向エンジンのシリンダーが左右に張りだした個性派で、排気量1800㏄、総重量358㎏という大型マシン。これを手なずけるのは誰にでもできることではない。
「みんな、横振れが気になるらしいんですが、僕にはそれが感じられなくて、一発で“乗れた”感覚がありました。バイクが倒れても、跨ったまま起こすこともできます。バイクとの1対1の勝負に勝った感じ(笑)」
ハーレー ダビッドソン、ドゥカティ、トライアンフ、インディアン、ホンダなど、名だたる大型バイクを試乗したなかから、BMW R18を選んだ。
「ずっと大きなバイクに乗りたかったんです。購入まで1年くらい考えました。BMWを選んだのは、もともとドイツ車好きというのもあったから。水平対向エンジンも調べるほどに魅力的に感じて。引退してちょっとデカくなったこの身体に似合ったのも決めた理由です(笑)」
現役時代はできなかったスキーとバイク
五十嵐さんのバイク趣味において大きな位置を占めているのが、現役時代に在籍していたヤクルトのツーリング部の存在だ。伊藤智仁氏(現一軍投手コーチ)らOBや球団スタッフなどで構成され、都合が合う時にツーリングに出かけている。
「バイク選びも彼らにアドバイスしてもらいました。よく富士山のほうに走りに行ったりしています。みんなで走るのは楽しいですね」
大型バイクとなると、街乗りは億劫になりそうなものだが、「案外イケる」のも魅力だそう。
「BMWのバイクは都会でも似合う。仕事の際の移動手段としても乗っています。バイクだとウキウキしながら仕事に行けちゃう(笑)」
バイク趣味は、引退したらやってみたいことのひとつだったという。身体が資本であるアスリートにとってヘルメットひとつ被って生身で駆る二輪車は、大きなリスクを背負う。その危険性ゆえに現役選手の時は乗れなかった。特に在籍していたメジャーでは、バイク禁止が契約事項にあった。そんなこともあり、引退試合のあと、早々に大型バイクの免許を取った。
「バイクとスキーは引退したら絶対にやりたかったふたつのこと。スキーも現役時代はやっちゃいけないことでしたから。スキーは引退して、割とすぐ滑れたんですが、バイクは免許を取ったり、何を買うか迷ったりと、少し時間がかかりましたね。このふたつ、よく考えてみたらどっちも風を感じられるんですよ。“風が好き”ってちょっとダサいかな(笑)。風って自然と対峙している、ちょっと戦っている感じがするんです」
スピードボールで鳴らし、勝負の世界にいた五十嵐さんらしいコメントだが、実際バイクの世界に踏みこんでみて気づいたことがあると言う。
「自分が知らなかった世界を知ることができたのは大きいです。360度どこを見ても、ヘルメット以外に邪魔するものが何もない世界がバイク。シートベルトさえありませんから」
新たなことへの挑戦が、人生をさらに豊かなものにする。
「僕は何事もやってみないとわからないという、チャレンジ志向の人間。バイクへの挑戦が刺激を与えてくれたのは確かです。もちろん今、選手時代のあのヒリヒリした感覚は二度と味わえませんが、バイクには違った刺激、ドキドキやワクワクがある」
最近は自身のYouTubeも開設。趣味同様、仕事も充実していると言う。
「今も生放送など、失敗しちゃいけない状況はあります。でも、現役時代の緊張感を知っているから、乗り越えられるんです。仕事も趣味も“刺激的”に楽しめている僕は、明らかに人生を楽しめていると思います」
この記事はGOETHE 2024年10月号「総力特集:人生を変える最強レッスン」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら