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2024.01.20

BMW100周年記念バイク、新型 R 1300 GSの実力再考【試乗体験記】

2023年で、BMWが初めてモーターサイクルを発表してから100周年となった。その記念すべき年にデビューしたのが新型「BMW R 1300 GS」だ。スペインで開催された国際メディア試乗会へと一足先に試乗したモーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がレポートする。

冒険バイクの代名詞“GS(ゲレンデ・シュポルト)”

ドイツの高級車ブランドとして知られるBMWだが、実は4輪よりも前から2輪を製造してきた。1923年に発表された初代「R32」以来、水平対向2気筒エンジンとシャフトドライブを組み合わせたパワートレーンは現在まで続くBMWモトラッド(BMWのバイク部門)の象徴になっている。

なかでも、GSシリーズは近年世界的に人気が高まっている“アドベンチャーバイク”の始祖的存在。その最上位ともいうべきGSは、長らくベンチマークとしてライバルからも熱い視線を注がれ、続々と刺客が送り出されているものの、長年にわたって培われた研鑽と孤高のアイデンティティは未だ難攻不落、といっても過言ではない。

ちなみにアドベンチャーバイクとは4輪でいうところのクロスカントリーSUV的な立ち位置で、例えるならばディフェンダーやGクラス、はたまたラングラーか。とりわけこちらのGSは道なき道を走破できるガチなオフロード性能を誇るマシンだ。

10年ぶりにフルモデルチェンジしたBMW R 1300 GS。今回試乗したのは欧州仕様。先般発表された日本導入モデルの価格は¥2,843,000~。

エンジンと車体、電子制御のすべてを一新

今回10年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型「R 1300 GS」は本当の意味で完全新設計だ。伝統の水平対向エンジンはフル水冷化され、ギアボックスをエンジン下に配置するなどコンパクト化。排気量も1300ccに拡大することで最高出力9psアップの145ps/7750rpmを実現。同時に最大トルクも向上した。

R 1300 GSのスタンダード仕様。バイク界におけるアドベンチャーブームの火付け役でもあるGSシリーズは、初代デビューから40年以上にわたりフロントランナーとして今なお走り続ける。

車体も従来の鋼管タイプからプレス鋼板とアルミ鋳造を組み合わせた新設計フレームとなり、独特のサスペンション機構もEVOタイプに改良。車重もトータルで12kg軽くなっている。

電子制御も進化し、ライディングモードやコーナリング対応のABS&トラコンに加え、前走車を自動的に追尾するACCや衝突低減ブレーキなどBMWが4輪で培ってきた最先端テクノロジーを投入。さらに停止時に車高を下げて足着きを良くする新機能まで搭載するなど、まさに電子制御隙なしのメガ盛りマシンとなっているのだ。

左右に飛び出したシリンダーブロックが特徴の縦置き水冷水平対向2気筒エンジン。DOHC4バルブに改良型シフトカムを搭載、排気量1300ccからGS史上最強の145psを発揮する。

弾けるサウンド、デザインも洗練された

見た目で大きく変わったのがXデザインのヘッドライト。今までの左右非対称のロボット顔から大きく印象が様変わり。全体のシルエットもかつての軍用車的な無骨さはなく、滑らかなラインで構成されたまるでスポーツカーのような雰囲気に。

水冷ボクサーエンジン(左右のピストンが互いに打ち合うように動くことからそう呼ばれる。水平対向エンジンとも呼称する)はちょっと乗り出しただけで、扱いやすさはそのままに普段使う常用域のトルクが図太くなっているのが分かる。

新型はスロットルを持つ右手とエンジンの直結感が濃厚で、回転数によってバルブタイミングを可変する改良型シフトカムの効果とも相まって加速も一段と強力に。新型マフラーが奏でるドライで弾けたサウンドにライダーの気分も高揚していく。

進行方向にクランク軸からドライブシャフトまでを一直線に並べた独特のパワートレーン構造。クランク下にミッションを収めた2階建て構造としエンジン長を短くコンパクト化。

オンロードスポーツ顔負けの走り

最初に試乗したのはキャストホイールの「スタンダード」仕様。ライディングポジションは従来と比べて全体的にややコンパクトになった感じで、シートは着座スペースが前後に長くなりライポジの自由度が増えたのは嬉しい点。標準シート高は850mmで足着きも従来モデルと同等レベルだろう。すぐに感じるのは軽さ。

以前はコーナーで車体を倒し込んだときにエンジン部分に重い塊が乗っている感じがあったが、新型ではそれが見事に消えている。“テレレバー”と呼ばれるBMW独特のフロントサスペンション機構による抜群の安定感はそのままに、ハンドリングは明らかに軽快になった。

最も変わったのが顔つき。軽量・薄型設計のフルLEDヘッドライトを取り囲むX型のDRL(デイタイムランニングライト)が印象的。新たにオプション装備として電動スクリーンとヘッドライトとの間に前方レーダーを配置している。ワインディングも得意。オンロードスポーツモデル顔負けの軽快な走りを楽しめる。

今回EVOテレレバーに進化したことでステアリングの反応もよりダイレクトになり、まるでオンロード専用のスポーツモデルのような感覚でワインディングを楽しめる。

フロントサスペンションはEVOテレレバーに進化。フォークとは別にアームを介して独立したショックユニットを持つBMW独自の構造は踏襲しつつ、ハンドリングを向上させた。

また、新型では前後ブレーキが互いに連動したフルインテグラルタイプが採用され、レバーを握るだけで安定したブレーキングが可能。加えて4種類のライドモード(エコ、レイン、ロード、エンデューロ)と連動して出力とサスペンション特性、ABSとトラコンの介入度を最適化してくれる……という至れり尽くせりのスーパーマシンなので、とにかく快適で安心なのだ。

その日は市街地や高速道路やワインディングをトータル350kmほど移動したが、疲れ知らずに走破することができた。

優れたコントロール性とトラクション性能でダート走行も楽々こなす。オフロード性能を高めた「GSトロフィ」仕様。試乗車はオプション装備のワイヤースポークホイールとブロックタイヤ、スポーツサスペンションを装備したガチな仕様だった。

250kgの巨体を意のままに操る快感

続いてブロックタイヤと20mm長いスポーツサスペンションを装備した「GSトロフィ」仕様に乗り換えてオフロードでも試乗してみた。動的な軽さはオンロードで感じた以上で、大きな石が転がるガレ場でも600ccクラスのアドベンチャーバイクのような感覚で臆せず飛び込んでいける。

それは中速トルクに厚い瞬発力のあるエンジンと低重心化による安定感、そして改良された前後サスペンションによる走破性の高さによる相乗効果だと思った。

道を選ばず長距離を安全かつ快適に高速移動できる性能が求められるBMWの“GS”。瞬発力のあるエンジンがカタパルトのように重量級の巨体を押し出す。ビッグアドベンチャーならではの豪快な走りだ。

ちなみにテレレバーは操舵やブレーキング操作とは独立してサスペンションが作動するため、通常のバイクに比べて路面からの衝撃を受けにくい。それがEVOに進化したことで、オフロードでもさらに路面追従性が高まっている。

リアサスペンションもスイングアーム長を伸ばしたEVOパラレバーのおかげで路面を捉えるトラクション性能が向上、アクセルを開けすぎたときの後輪の滑り方も穏やかになり扱いやすくなった。

その気になればジャンプやヒルクライムも軽々とこなすが、250kg近い車重とサイズ感はビッグネイキッドと同等レベルである。そう考えると、オフロードでここまで意のままにコントロールできる“自在感”は凄いと思った次第。

荷物を積むための大容量パニアケースなど、純正アクセサリーも豊富に用意。まさにオールマイティ、長距離移動も楽ちんだ。

新たにオプション装備された各種最新デバイスも試してみたが、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)はスムーズかつ正確に前車を追従しつつ、SWW(レーン・チェンジ・ワーニング)は死角にいる車両を確実にとらえてバックミラー内の点滅で知らせてくれた。

そして何といっても今回の目玉は車高調整機能だろう。車速が15km/h以下になると自動的にサスペンションが沈んで車高を30mm下げてくれるという優れモノ。しかもその動きが本人には気付かないほどスムーズなのだ。

佐川健太郎(ケニー佐川)
1963年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、各種ライディングスクールで講師を務めるなどセーフティライディングの普及にも注力。元MFJ公認インストラクター。日本交通心理学会員。二輪車安全運転指導員。

オンもオフも別次元に進化した新型R 1300 GSは、荷物を積んで1日に数百キロを移動しながら、余裕しゃくしゃくで林道に分け入り山奥のキャンプ場を目指せるマシンである。最高のアドベンチャーバイクが誘う冒険の旅は、きっと人生にスパイシーな愉しさを与えてくれるはずだ。

問い合わせ
BMW R 1300 GS https://www.bmw-motorrad.jp/ja/models/adventure/r1300gs.html

TEXT=ケニー佐川 EDIT=ダニエル利樹(ANGIE Castro)

PHOTOGRAPH=BMW Motorrad 

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