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2024.01.16

2024年新型ポルシェ マカンを試乗速報! BEVになって進化する“虎の子”の実力とは

ポルシェの生産拠点であるドイツのライプツィヒ工場にて、2024年にデビュー予定の新型ポルシェ マカンに関するワークショップが報道陣向けに開催された。2023年12月、情報解禁となった最新速報をジャーナリスト藤野太一が本国からリポート。

管制塔のようにも見えるポルシェ工場のランドマーク。旧東ドイツ領ザクセン州に新設されたライプツィヒ工場は、カイエンの製造開始とともに生まれた。“ダイヤモンド”の愛称で親しまれている。

2030年までに80%超の市販車を内燃機関から電気自動車(BEV)へとスイッチしていく目標を掲げるポルシェ。2019年にBEV第1弾となるタイカンが登場、そして2024年には第2弾となる新型マカンがデビューする。

ポルシェは電気自動車の開発に関してアウディとタッグを組んでいる。ポルシェ タイカンとアウディe-tron GTは同じBEV用の「J1」プラットフォームを採用。そして、この数年をかけてポルシェとアウディは新たなBEV用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を共同開発してきた。

このPPEをもとに、アウディはQ6 e-tronを、ポルシェは新型マカンを市販化するという流れだ。PPEは後輪駆動と全輪駆動のどちらにも対応するもので、今後はVWグループのプレミアムブランド(ベントレーやランボルギーニなど)が、このPPEをベースにBEVを開発することになるはずだ。

BEV第2弾となる新型マカンのプラットフォーム「PPE」。床下のバッテリー容量は100kWh、最大出力495kWを発揮する。

ポルシェはこれより先、第3弾として718(ボクスター/ケイマン)のBEVの導入を予定しており、その後にはカイエンのBEV版、さらにアメリカと中国市場に向けて、カイエンの上位モデルとなるスポーティなラグジュアリーSUVが登場する、と今回のプレゼンの場で発表された。

ワークショップの場で披露された新型マカンは、ボディは黒一色でまだエンブレム類などは一切装着されておらず、リアまわりは偽装されたいわゆるプロトタイプカーだった。

新型マカン BEVのカットモデル。

エクステリアは、バンパーの形状が丸みを帯びている現行型に比べてエッジの効いたシャープなデザインになった。ヘッドライト内部には4本のLEDデイタイムライトが光っている。これもタイカンを彷彿とさせるものだ。ボンネット左右のフェンダーの峰はスポーツモデルのように高く、筋肉質になった。ルーフからリアにかけてのラインは明らかに傾斜が低く、クーペスタイルがより一層強調されている。

インパネの中央には10.9インチタッチディスプレイを、そしてオプションで助手席にも10.9インチディスプレイを装着することが可能に。ポルシェ初採用となるAR(拡張現実)技術を搭載したヘッドアップディスプレイも備わる。

インテリアはタイカン、そして新型カイエンの流れを汲んだものになった。メーターパネルは12.6インチのフルデジタルの自立型カーブディスプレイを配置。ギアセレクターも同様にステアリングの脇に移設されているのが新しい。このほか、拡張現実(AR)機能付きヘッドアップディスプレイや“Hey ポルシェ”で起動する音声アシスタントシステムなど、最新世代のインフォテインメントシステムを搭載している。

パワートレインはタイカンと同様に、800Vのアーキテクチャーと永久磁石式同期電動モーター(PSM)を採用。導入当初はエントリーモデルと最上級モデル(おそらくターボ)が投入される予定とのことだが、後者のリアアクスルには直径を増し大型化したPSMを搭載することで、システム出力は最大約450kW(約600ps)、最大トルクは1000Nm以上を発生。駆動方式は全輪駆動で前後重量比は48:52とややリア寄りになっている。トランスミッションはタイカンが2速なのに対して1速に。これによりコンパクト化が図られた。

施設内には総容量7メガワットを提供することが可能な急速充電パーク「ポルシェ・ターボチャージング」を設置。電力源は再生可能エネルギー源からの電力のみで賄っている。

アンダーボディには総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。WLTPモードによる一充電あたりの航続距離は500km以上に到達する。これは、前世代よりも約30%高いエネルギー密度を達成したものでタイカンのものに比べても冷却能力が向上しており、最大270kWの充電能力を実現する。

日本には未導入だが、欧州にある急速充電ステーションを利用すれば、22分以内にバッテリーを10%から80%まで充電することができるという。

テストコースの全長は3.7km。F1レーストラックの設計者であるヘルマン・ティルケが設計。

エクスペリエンスセンターで新型マカンを同乗体験

まだプロトタイプのため、今回はステアリングを握ることはできなかったが、助手席での同乗走行が許可された。ドライバーはポルシェのヴァイザッハ開発センターからやってきた社内のテストドライバーだった。

ライプツィヒ工場の敷地内には、日本にも約2年前にできた「ポルシェエクスペリエンスセンター」が併設されている。さすが本場だけあって日本のものよりもさらに大規模なもので、全長約6kmのオフロードコースと、全長約3.7kmのサーキットがある。

全長約6kmのオフロードコースには長さ100mを誇る川のセッションも。工場にある草原には、ポルシェが放し飼いにしている75頭のオーロックスや25頭のポニー、300万匹のミツバチなど、さまざまな野生動物が生息している。

まずはオフロードコースでの同乗試乗が行われた。新型マカンのドライブモードは『ノーマル/スポーツ/スポーツプラス/オフロード』の4種類が設定されている。『オフロードモード』を選択し、未舗装で砂利だらけで、ところどころに大きな水たまりのあるダートコースをアクセル全開でスライドさせながら走る。

大きな突き上げなどなく足回りがしなやかに動く、まるでラリーカーのようだった。あとで確認してみたところ、最上級モデルに設定されるエアサスペンション装着車だった。リアアクスルに電子制御式ディファレンシャルロックのポルシェトルクベクタリングプラスも装備。

多彩なテストモジュールを用意するオフロードコース。BEVのマカンとは思えない、アグレッシブな走り。BEV化と同時に悪路走破性も高められているという。

マカンでは初となるリアアクスルステアリングも設定され、80km/h以下の速度では前輪と後輪は逆位相に、走行安定性と駐車時などの小回り性能を両立している。

コースの途中にはいくつものテストモジュールがあるのだが、勾配約40°の急斜面もなんなく登りきった。「ここは現行マカンでは登れないんだ」とテストドライバーが教えてくれた。そして水深50cm、長さ100mもある川のセクションにもためらいなく侵入し、水しぶきをあげながらわたりきった。最大渡河性能についての詳細はまだ明かせないということだったが、50cmを渡ることができるとなれば、まさに本格オフロードSUV並みの性能だろう。

BEVというヘビーな車重にもかかわらず、ドリフトをしながら急勾配を駆け上がる。

オンロード体験は、もちろんハードな『スポーツプラスモード』だ。いきなりの全開加速、そしてギュッと4つのタイヤが均等に路面をつかむようなブレーキングののち鋭くターンインし、きれいにドリフトする。「この速さ、揺り戻しのない俊敏な動き、この車両ってきっとターボだよね」とテストドライバーに尋ねると、あぁ、そうだと教えてくれた。

新型では全ラインナップがBEVとなる「ポルシェ・マカン」。現行の内燃機関モデルも併売予定。

試乗後に行われたプレゼンテーション。登壇した開発者は冒頭、「私たちは再びこのセグメントで最もスポーティなモデルを発表したいと思います」と述べた。そして通称“マカンE”とも呼ばれるこの新型BEVの“E”が何を意味するのかをこのように説明した。「“E”とは、Exhilaration(わくわく感)、Experiences(経験)、Endorphins(エンドルフィン)を意味するものです」と。最新マカンによるオンロードとオフロードの同乗体験を経て、SUVであれ、電気自動車であれ、ポルシェがつくるのはやはりスポーツカーなのだという矜持を感じた。

TEXT=藤野太一 EDIT=ダニエル利樹(ANGIE Castro)

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