「風を切って、車体を傾けろ」元暴走族総長という異色の経歴ながら今や実力派真打、特攻する落語家・瀧川鯉斗がハーレーダビッドソンの新型モデルで日常をブレイクスルー。創立120周年という節目にさらなる進化を遂げたハーレーの最新鉄馬を駆る。その真価はいかに!? 瀧川鯉斗の新連載【RIDE ON TIME!】vol.1。
日常を飛び越えろ! 新型ブレイクアウトを瀧川鯉斗がライド
キング・オブ・モーターサイクルことハーレーダビッドソンが誕生したのは、今から120年前の1903年のこと。そう、今年2023年はハーレーのアニバーサリーイヤー。
特別なモデルが多数リリースされる2023年新型のなかでも、大注目ともいうべき一台がこのブレイクアウトだ。初代モデルの登場は2013年と、発売から10周年を迎える。
さらなる進化を遂げた新型ブレイクアウトにおいても、これまでのロー&リーンなチョッパースタイルを踏襲。クローム加飾が増えたことにより、カスタムバイクさながらのコントラスト際立つ、マッチョな造形美を纏(まと)っている。
「各部のディテールの造りこみもトンガっているし、ビルダーが手がけているみたい。これが吊るしのファクトリーメイドとは驚きです! こんなに格好よく仕上げて市販をするなんて、さすがカスタムを知り尽くしたハーレーですね(笑)。もはやカスタムを加えていく余力がないような……とても気分があがります」
開口一番、実車を目の当たりにした瀧川鯉斗が答える。
気分あがる、大排気量クルーザーのハートビート
ブレイクアウト最大の特徴は、威風堂々のビッグVツインエンジン。そして、鯉斗も魅了された、男心をくすぐられる大迫力の体躯にある。
心臓部には排気量1923ccを誇る、通称ミルウォーキーエイト“117キュービックインチ”を搭載。ブレイクアウト史上最大排気量を引っ提げての新登場だ。
さらにエルボーシェイプの突きだしたフィルターエレメントも特徴のひとつ。より多くの空気を送りこむヘビーブリーザーインテークが標準装備となり、最高出力102HP、最大トルク168Nmを発揮。“ミルウォーキー114”を積んだ従来モデルと比べて2023年の最新モデルでは出力8HP、トルク13Nmと、それぞれ向上している。
デザインフィロソフィに対するハーレーのこだわりを感じる、生き生きとしたスタイリング。ワイルドな雰囲気を印象づける21インチのフロントタイヤに加えて、スポーツカー顔負けの240mmというドラッグテイスト溢れる極太扁平のリアタイヤも見逃せない。
鯉斗は、極太のフラットバーハンドルを切り直し、ブレイクアウトに飛び乗る。
前傾姿勢でハンドルを押さえつけるようなライディングポジション。そして、足を前に投げだす古きよきスタイルのフォワードステップは、身長182cmの彼だからこそよく似合う。
エンジンをひとたび吹かすと、あっという間に駆けだしてしまった。
「リジットフレーム風で意図的に隠されたリヤサスペンションのおかげか乗り心地は悪くないです。ただし、クラッチレバーはかなりヘビーでしたけど。見た目どおり、バイクを寝かせても直進安定志向でいわゆる直線番長なんですね。“曲がるぞ”ってバンクさせて、ようやくフロントまわりが一気に切れこむような感覚。車体をバンクさせて攻めるとステップが地面に擦れてしまうのはご愛嬌ということで。ブレイクアウトをカッコよく乗りこなすには所作が必要。周囲から見られているぞ! ってことも意識しなくてはいけません」
管楽器のように響くバリトンサウンド
一枚看板として、日々演目に身を置き、身振り手振りや、言葉の抑揚と音色でリズムよく観客を魅了する鯉斗は、なにより、Vツインエンジンのサウンドとフィールが気に入ったようだ。
「エンジンの堂々たる存在感。乾いた低音の排気音と小気味のよいバイブスがまるでバリトンサウンドのように響くんですね。スロットルを解放すると、力強い音を響かせながら鋭くダダダっと加速する。まるで管楽器のように音を奏でる、ビッグVツインにそのまま跨るみたいなスタイルと感覚が心地よくて」
排気量の拡大に合わせて、従来モデルよりも燃料タンクが大きくなったのも嬉しいポイント。ハイオク指定の燃料タンクの容量は12.3ℓから18.9ℓへと大幅に拡大し、航続可能距離を大きく伸ばしている。
「発進時は低回転域から湧きだす、大きなトルクにまかせて走らせるのは最高です。やんちゃっぽい雰囲気ながら、意外とキビキビ走れる一方、高速路といったハイレンジ・ストレートを余裕あるビッグVツインエンジンで、ゆったり流す乗り方も気持ちよいかも! どこまでも走っていけそうなクルーザー的雰囲気があり、ただひたすら真っ直ぐ走りたくなる」
興奮気味の鯉斗が続ける。
「誤解を恐れずいえば、ブレイクアウトの神髄は”魅せる”ことかも。ハレの日に纏(まと)う特攻服よろしく日常をブレイクアウト(脱却)するには、もってこいですね。バリトンサウンドを響かせながら、ギラギラした造形美を周囲にチラつかせる。乗って楽しいのはもちろんですが、”見る”だけでも所有欲を満たす満足感がある。天気のよい週末のパーキングエリアに停めようものなら、積極的に話かけられるのは間違いないはず。今回の試乗中も周囲からの視線が気になっていました(笑)。落語は耳だけでなく目でも楽しむ芸術だと思っているのですが、この新型ブレイクアウトもまさに落語と似ている部分があるなって」