放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「最近、平気で先輩の悪口を言う芸人さんがいますが、私の会社でも、似たような若手が増えているように感じます。どうやって向き合っていけばいいんでしょうか?」という相談をいただきました。
たしかに、「逆パワハラ」というワードも認知されはじめたし、芸人さんだけでなく社会全体がそうなってきましたね。
では今回はそのあたりをほぐしていきましょう。
だから、リーダー世代が狙われはじめた
いまの中間管理職世代は、上下関係や礼節を叩きこまれたけど、コンプラやハラスメントによって厳しく言えない。
若手は、それを知ったうえで「どうせ言い返せないだろ?」「礼儀世代はコレをされたら腹立つでしょ?」と、痛いところを突いてくる。
また、最近の記者会見のインタビュアーは、必ず相手を困らせる質問を用意しているし、受ける側も「石丸構文」のような論法で返り討ちにする。
そういった“相手を負かす論法”を、PVを稼ぎたいメディアが切りとって拡散し、デジタルネイティブ世代がいち早く吸収していく。
そして、獲得した論法は誰かに試したくなるもの。その的になりはじめたのがリーダー世代……というのが僕の見立てです。
芸人学校の生徒は、そういった“会話のトレンド”に敏感な若者の集合体。ちなみに彼らは、1年以上も前から、ネットで見つけた「石丸構文」的な話法を用いて他者をからかっていました。
昔から僕の授業では、より生徒たちを知るために「同期の暴露やクレーム」をテーマにしたトークをさせるのですが、最近は、おのずと先輩芸人や、学校を仕切る吉本興業の社員(リーダー)に矛先が向かっていく傾向にある。
なかには、クレームでなく、ただの悪口や人格否定になっているものもあり、さすがに笑えません。
こういった“流れ”を読むと、リーダー世代への突き上げはしばらく続くのではないかと思っています。
では、そんな社会状況のなか、私たちはどのように対応していけばいいのでしょう?
しょせん、悪口や批判は「ただの音」
「まだ身についてないもの」は、すぐに実生活で「武器」にはなりません。
例えば、英語力をつけるには数年かかりますし、腕っぷしを強くするにはジムに通い続ける必要があります。
なので、若手と同じ論法を磨いて「いつか相手を負かしてやろう」という思考は、大人気ないしおススメしません。
ちなみに僕は、上下関係を叩きこまれた世代なので「礼節」は身についている。それを「武器」にしています。
「失礼なことをしてくる相手」だからこそ、礼節という武器で“いなす”。そう、最低限の敬意は払って相手にしないんです。
そうは言っても、怒りがおさまらない。もちろん、そういった方もいるでしょう。
そんなときは「相手の狙い」を知りましょう。
これは若い世代にかぎったことではないですが、他者に悪口や批判を浴びせる人の最大の目的は“相手のパフォーマンスを下げること”です。
気に食わない相手が、自分の言葉によって、「取り乱す」「仕事効率を下げる」「怒ってまわりに迷惑をかける」など、パフォーマンスが低下することが狙い。
そんな術中にわざわざハマってやるなんてアホらしくないですか?
悪口や批判は、失礼な人の体にたまった“負のガス”が、口から出てくる“オナラ”みたいなもの。
他人のオナラは腹が立つけど、気になるかどうかはこちらの反応しだい。
僕は、悪口や批判は“ただの音”。人生のBGMくらいに思って生きています。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。