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2024.05.02

話し方の学びを義務教育に! カエカ・千葉佳織が考える“生きやすい”社会をつくる教育システムとは

「すべての人生にスポットライトを」をコンセプトに、さまざまな職業や年齢に合わせた伝え方トレーニングを行うカエカ千葉佳織氏。短期連載第3回は、千葉氏がスピーチライターになった原体験である「弁論」との出合いや、日本の教育システムの問題点とその解決策について。【他の記事を読む ※順次公開】

カエカの千葉佳織氏

中学校で学んだ“話すことの価値”

大学生時代に、全国弁論大会で3度の優勝。内閣総理大臣賞を獲得するなど、これまで輝かしい成績を残してきた千葉佳織氏。しかし、幼少期の千葉氏は、人とのコミュニケーションがあまり得意ではなかったという。

「子供の頃は、話すことに少し苦手意識がありました。例えば、角の立つ言葉でスピーチをして嫌な想いをさせてしまったり、対立を恐れてはっきりと意見を言えなかったりなど、失敗をしてしまった経験があります。人とのコミュニケーションで、誤解を生んでしまうことがありました」

そんな千葉氏が“話すことの価値”に気づいたのは中学生時代。国語の授業がきっかけだった。

「私が通っていた中学校は、他の学校に比べて少し特殊で、国語が『書く』『聞く』『話す』の3つに分かれていたんです。『話す』の授業では、120人くらいの生徒の前で突然指されて、その場で自分の考えを語らないといけなくて。

でも、自分の意見を上手く伝えられた時は、周りから大きな拍手で認めてもらえるし、友達からも一目置いてもらえる。そんな環境で育っていたので、自然と人前で話すことがカッコいいと思うようになりました」

カエカの千葉佳織氏
千葉佳織/Kaori Chiba
1994年北海道生まれ。15歳から弁論をはじめ、全国弁論大会3度優勝、内閣総理大臣賞獲得。大学卒業後はDeNAに入社し、同社初のスピーチライター事業を立ち上げ、登壇社員の育成や社長のスピーチ執筆などの課題解決に取り組む。2019年にはカエカを起業し、話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を開始。2023年、東洋経済新報社「すごいベンチャー100」、Forbes JAPAN「次代を担う新星たち 2024年注目の日本発スタートアップ100選」に選出。著書に『話し方の戦略』(プレジデント社)。

高校受験の挫折と弁論との出合い

その後、高校生になった千葉氏は、学内で人気のなかった弁論部に入部。そこには、中学生の時に経験した初めての挫折が関わっているという。

「中学生の時は、生徒会長を務めていました。当時、私の中学校では、生徒会長は学力がトップクラスの高校に進学するのが暗黙の了解だったのですが、私は勉強ができなかったので落ちてしまったんです。それまで合格者が続いていた流れを断ち切ってしまいました」

第一志望だった高校に受かることができず、中高一貫校の高等部に入学することになった千葉氏。そんな彼女の運命を変えたのが、担任を務めていた教師からの弁論部への誘いだった。

「担任から『弁論で結果を残せば、推薦入試で早稲田大学や慶應義塾大学を目指せる』と言われて。半分は、中学生の頃から人前で話すことに憧れていたこともあったのですが、もう半分は『行きたい大学に入れる!』という安直な理由で入部しました(笑)。

でも、そこからは本当に辛く厳しい毎日。顧問からたまに助言を受けることはあるものの、基本的に生徒同士でお互いの問題点を指摘し合うのがルーティーンで。中高一貫校だったので、中学1年生の後輩から『先輩の言っていることはよくわからないです。話の内容が繋がってなくて』と心が折れそうなことも言われながら、何度も何度も練習しました」

弁論大会に出場した高校生時代の千葉氏。

初めは他の生徒から、『弁論はつまらなそう』や『地味な人が多くいる部活』と笑われていたという千葉氏。しかし、1600字程度の原稿を幾度となく書き直し、1日3時間以上の練習と暗記を繰り返すことで、いつしか全国の弁論大会で優勝を果たすほどまでに成長していたそう。

「全国大会で優勝した頃には、友達から『実は弁論部に入りたかったんだ』とか『人前で堂々と話すのってカッコいいよね』と言ってもらえるようになって。明らかに周りの反応が変わったことを感じました。この経験が起業のきっかけとなっています。私自身がスピーチで人生一発逆転できたように、話し方で人々の人生を変えたいなと」

高校受験で経験した挫折から、再び自信を与えてくれた弁論。話すことで自らを表現し、厳しい状況のなかでも新たな道を切り開くことができる。千葉氏はそんな経験をバネに、今もカエカの活動を続けている。

カエカのロゴ
カエカという社名は、大学時代にアイヌ民族を研究していた千葉氏が、アイヌ語で「糸を縒(よ)る」という意味の言葉から命名。木を細かく裂いて紡がれた糸のように、強くてしなやかな“人間の根本”をつくるという想いが込められている。

話し方の教育が一般的になる社会へ

大学卒業後、新卒でDeNAに入社した千葉氏は、社内にスピーチトレーニングのプロジェクトを立ち上げ、営業職の社員の話し方指導や社長のスピーチ原稿の執筆など、スピーチライターとしてのキャリアを積み始めた。

しかし、会社の外に出ることで事業のスピードを加速させ、社会に大きなインパクトをもたらしたいと考え独立を決意。2019年に現在のカエカを創業した。

一方、千葉氏がカエカを起業したことには、もうひとつ大きな理由があったという。

「アメリカの幼稚園や小学校では、『Show and Tell』という子供たちが自宅から持ってきたものなどを紹介して、それを選んだ理由やエピソードなどを語る教育メソッドがあります。

また、アメリカの大学では、プレゼンテーションの実習が、授業のカリキュラムに組み込まれている。でも、日本の学校教育では、国語の読み書きに対する比重が大きい。それでは、子供たちの“話し方”が十分に育まれないと思います。そんな状況を変えたいという想いもありカエカを立ち上げました」

そこで、千葉氏はさまざまな受講者のスピーチ動画を分析しながらトレーニングを体系化。自分の人生が弁論で大きく変化したように、より多くの人に話すことの価値を知ってもらいたいと、効率的に話し方のスキルを学べるメソッドを築き上げた。

千葉氏は「kaeka」のサービス以外に、企業の社員教育のセミナーなどでもスピーチの講習を行っている。

「kaekaは当初“スピーチ教室”としてサービスをスタートしましたが、日本だと自分の仕事や生活に、スピーチは関係ないと興味を示さない方も多くいました。そこで、顧客のニーズや成長データを分析しながら、社会人全般の人たちがスピーチだけでなく、商談や会議なども含めた『話し方のすべて』を改善することができるサービスへとアップデートし、現在の“話し方トレーニング”の形態を確立したんです。

その結果、多くのお客様からコミュニケーションの悩みを相談していただけるようになりました。グローバル企業の方だと、海外のクライアントと文化の違いがあり、情熱が伝わるプレゼンテーションの仕方を教えてほしいなどのご依頼をいただくこともあります。ご自身のビジネスをより発展させるために受講するお客様が増えていったのです」

大勢の人前で話すことはなくても、チームを率いる管理職や、面接で自らの強みをアピールしたい学生にも、話すことの力を実感してもらいたい。それが活動の原動力になっているという千葉氏。最後に、今後やりたいことについても聞いてみた。

「私は、いつか“話し方”の学びを日本の義務教育に組み込みたいと考えていて。自分の人生が変わった話し方のトレーニングを、ひとりでも多くの人に知ってもらいたい。また、何十年、何百年先の世界にスピーチの教育システムを残していきたい。

最新テクノロジーを駆使して、多くの人のコミュニケーションの取り方を蓄積していき、より良いトレーニングプログラムを開発するなど、カエカはその第一人者になれるような団体を目指しています。人々が自らの意見を伝えやすい世の中にしていけば、もっと生きやすい社会になると思います」

日常生活において欠かせないスキルであるコミュニケーション。しかし、我々の生活の中に当たり前のように存在しているがゆえ、その価値や大切さを忘れてしまいがち。

人間社会の基盤としてあるものだからこそ、改めて話すことの意味を見つめ直し、自分らしい言葉で人々に想いを伝えたい。千葉氏のインタビューは、そんな気持ちを奮い立たせるものだった。

※続く

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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