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2024.04.30

話し方を強みに当選! 日本最年少の芦屋市長をサポートした凄腕スピーチライターとは?

創業からわずか5年で、有名政治家や経営者も愛用する“話し方トレーニング”のシステムを築き上げたカエカ千葉佳織氏。今、多くのメディアにも取り上げられている凄腕スピーチライターに独占インタビュー。全4回に渡って人に伝わる話し方のマル秘テクを教えてもらった。第1回。【他の記事を読む ※順次公開】

カエカの千葉佳織氏

大物政治家も利用するスピーチトレーニング

「話し方ひとつで、人生は一発逆転できるんです」

そう語るのは、話し方トレーニングサービス「kaeka」を運営する企業、カエカの代表取締役である千葉佳織氏。大手企業の経営者や現役の政治家にも“話し方”の指導をしてきた敏腕スピーチライターだ。

最近では、全国歴代最年少である26歳で芦屋市長に就任した髙島崚輔氏に、選挙演説の指導をしたことでも話題に。多くの有権者の心を掴んだ髙島氏のスピーチは、XやTikTokなどのSNSでも大きな注目を浴びた。

他にも、富山県知事の新田八朗氏や品川区長の森澤恭子氏など、激戦区と呼ばれる選挙区で多くの候補者の当選をサポートしてきたという。

カエカの千葉佳織氏
千葉佳織/Kaori Chiba
1994年、北海道生まれ。15歳から弁論をはじめ、全国弁論大会3度優勝、内閣総理大臣賞獲得。大学卒業後はDeNAに入社し、同社初のスピーチライター事業を立ち上げ、登壇社員の育成や社長のスピーチ執筆などの課題解決に取り組む。2019年にはカエカを起業し、話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を開始。2023年、東洋経済新報社「すごいベンチャー100」、Forbes JAPAN「次代を担う新星たち 2024年注目の日本発スタートアップ100選」に選出。著書に『話し方の戦略』(プレジデント社)。

2019年に創業したカエカは、「すべての人生にスポットライトを」をコンセプトに、独自のトレーニングプログラムで人々の「話す力」を磨き、コミュニケーションのスキルを総合的に育むスタートアップ企業。

人工知能(AI)で個人の語りを数値化する評価ツール「kaeka score」を使用し、「言語力」「構成力」「音声」などを細かく分類した8つの要素を分析。スコアの結果から話し方の癖や課題に合わせたトレーニングのカリキュラムを構成してくれる。

「日本には、話し方のスクールはたくさんあります。でも、さまざまな要素を体系的に学習できるものは少なく、元アナウンサーの方が立ち上げたスクールでは滑舌を重点的に教え、演劇出身の方だと発声の仕方、心理学を学ばれた方だと緊張しないマインドの作り方を教える、といった具合に教えるポイントがバラバラなんです。

だけど、それでは課題を見極めた解決策になっていないので、“話し方を変える”ための根本的な解決にはならず、どこかモヤっとした気持ちのまま帰っていくというようなことが起きていました。そんな状態を打破するために、カエカでは話し方全体を総合的に改善できるサービスを築き上げてきました」

体系化されたkaekaのカリキュラムでは、「話し方」を内容の構成や一貫性などの「CONTENTS(言葉)」の分野と、声の工程や表情・ポージングなどの「DELIVERY(音声・動作)」の分野にカテゴリー化。

AIを使って話す力を数値化し、話し方の特徴を可視化できるシステム「kaeka score」を開発したことで、定量的・定性的にトレーニングによる話し方の成長を確認できる。まさに新時代の話し方トレーニングサービスなのだ。

「kaeka score」の診断テストでは、その場で出題されるテーマについてスピーチを行い、録音したデータをもとにAIと専門の採点官が採点する。

多くのビジネスパーソンが抱える悩み

kaekaのサービスに注目しているのは、政治家や経営者だけではない。一般企業のビジネスパーソンのほか、近頃では高校生などの学生の入会者もおり、年齢や職業に関わらず幅広い層に利用されている。

「総合型選抜が大学入試に取り入れられるようになってから、学生の方の相談も受けるようになりました。ご両親と一緒に相談会にいらっしゃって、入試の面接に向けて自らの意見をしっかり言えるようになりたいと、kaekaに入会していただいています。

また、新卒で社会人になったばかりの20代の方の受講も増えています。真面目に仕事をしているけど、お客さんの前だとどこか自信がなく見えてしまい、上司から『話すのが上手くないね』と言われてしまった方など。営業やプレゼンのスキルを上げるために話し方をトレーニングされています」

カエカの千葉佳織氏
スピーチをする時のように、明るい表情で話しに抑揚を付けながらインタビューに答える千葉氏。

ビジネスにおける話し方の悩みは、駆け出しの若手社員だけでなく、キャリアを積み重ねるなかでも生じるもの。それはメンバーを率いる中間管理職、さらには企業を率いる経営者にとっても“課題”となって現れるという。

「役職が上がってチームを指揮するようになると、今度はリーダーとしての話し方に悩む方が多いんです。メンバーに向けてなにかを話しても、聞いている側に響いていない。どうやったらメンバーに伝わる話ができるかがわからない、という悩みですね。

今までは会社から与えられたミッションをこなして、数字を追っていれば成果が得られた。でも、管理職になったからには、一丸となって果たすべき目標を示さないといけない。ひとりひとりを鼓舞しながらチームの役割を伝えるって、実際にやってみると難しいことが多いんです」

この悩みは、会社全体を指揮する経営者ともなれば、より一層大きなものとなる。ある上場を目指す企業の社長がkaekaを受講した際には、社員数を急激に増やしたことで、社内コミュニケーションがうまく取れなくなった、と相談されたそうだ。

個人の生き方だけでなく、働き方にも“多様性”が求められるようになった今、さまざまな価値観や考え方を持つメンバーに対して、どのようにリーダーとしての想いを伝え、チームをまとめていけばいいのか。そう悩む管理職や経営者が、「話し方の秘訣」を求めてkaekaを訪れているというわけである。

講演会で自身の経験を交えながらスピーチのテクニックを教える千葉氏。

聞き手の記憶に残すテクニック

そこで千葉氏に、同じ目標に向かってメンバーを鼓舞する際に、最も意識すべき話し方のコツを教えてもらった。

「会議や打ち合わせで、リーダーとしてメンバーに語りかける際に大切なこと、それは『ファクト』と『ストーリー』の見極めです。ファクトとは、いわゆる数値や社内で意識決定があったものなどの事実情報。ストーリーは、個人が経験したことや湧き上がってくる感情とか想いのことを指します。

日本だと“ファクト偏重”になってしまう人が多いんです。でも、予定調和的に事実項目を並べると、その人がなにをやりたいのかが伝わらない。そんな時は、プロジェクトへの想いを交えて話すことで、チームとして向かうべき方向性が見えてきます」

一方、話す内容がストーリーばかりになってしまうと、企業としてプロジェクトを進める意義が不明瞭になってしまう。重要なのはその塩梅。達成すべき数値や目標を示しながら、メンバーに自らの熱意を表すことがリーダーには求められる。

また、ストーリーを交えて話すことは、聞き手の記憶にも残りやすくなるというメリットがある。“誰にでも言えること”を伝えるのではなく、その人にしか語れない内容を意識した方が、話すことの力をより発揮できると千葉氏は語る。

「スタンフォード大学の論文では、ただ事実や数値を並べるのではなく、ストーリーを交えながら話すことで、通常の22倍も聞く人の記憶に残ったということが証明されています。ここ数年、Z世代への接し方に悩んでいる管理職の方が多くいらっしゃるのですが、そんな方には、ぜひ試してもらいたいです。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんがいて、3人とも同じように決まり切ったことを話すのでは意味がない。ならば、Aさんにしか言えないような、個人の経験や想いを語った方がより一層、話す内容に説得力が生まれてくる。その人だけが伝えられる言葉にこそ、本当の価値があるのだと思います」

これまで“話すことの価値”を多くの人に知ってもらうため、スピーチライターとしての活動を続けてきた千葉氏。その人ならではの話ができることが、人々の心に響くスピーチのカギとなる。それが“情報量の多い現代社会”において最も求められる話し方のテクニックなのだろう。

※続く

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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