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2024.03.31

河村真木子 鬱を経験・克服「自分を責めない。次なってもサクッとプロのお世話になるつもり」

外資系金融機関でキャリアを磨き、現在は国内外でメンバー1万人超え、“最先端の情報が集まる”と人気のオンラインサロンを主宰する河村真木子さん。短期連載最終回は、3度経験した自身の「鬱への向き合い方」について教えてもらった。【その他の記事はコチラ】

河村真木子

20歳、31歳、40歳で短期の鬱を発症

世界では成人の約5%、3億人以上もの人が罹患しているとされる鬱病。日本では年々患者数が増えており、15人にひとりが生涯1度は鬱にかかると言われる。河村さん自身も、過去3回、鬱病を発症していることを告白している。

「1度目は、アメリカの大学に通っていた20歳の時。3回経験した鬱のなかでも、あの時が最も辛かったですね。当時はまだ鬱という病気を知らなかったから、私はいったいどうしちゃったんだろうと毎日悶々としていて。それが1年ほど続きました」

何に対してもやる気が起きず、将来への希望も見出せなくなっていました。その苦しみから救ってくれたのが、発症から1年近く経ってから受けたカウンセリングで言われた「あなたのせいではなくホルモンのせい」という言葉だ。

「アメリカでの大学生活や将来への不安からくるストレスも影響しているだろうけれど、それ以上にホルモンが大きく関係していると言われたんです。とくに女性の場合、生理があるからホルモンバランスが乱れやすいもの。『あなたが弱いわけでも悪いわけでもなく、ホルモンが、そういう状態にさせているんだ』というカウンセラーのその言葉で、気持ちが少し軽くなりました」

この時はカウンセリングと投薬の併用、そして、住む場所の環境を変えたことで完治したが、10年後、河村さんは2度目の鬱病を発症してしまう。31歳、シングルマザーになったばかりの頃だった。

「結果が全ての外資系金融に転職したばかりで、貯金もほとんどないのに、娘にインターナショナルスクールを受験させてと、いろいろ綱渡りだった時期です(苦笑)。でも、20歳の時の経験があったから、自分が鬱だとすぐに自覚し、会社の先輩に『名医がいる』と心療内科クリニックを紹介してもらいました。そこで、薬とカウンセリングに加え認知行動療法も受け、1ヵ月ほどで症状は改善。3ヵ月もしたら、すっかり元の自分に戻っていました」

3回目の発症は子宮全摘手術をした後、40歳の時だったが、すぐに心療内科を受診。

「過去2回の経験で、どうすれば治るかわかっていたので、即カウンセリング、即投薬。どの薬をどんなスケジュールで飲みたいかまでドクターにリクエストしていたくらいです(笑)」

鬱になるのは恥ずかしいことではない

これまで鬱を3度経験している河村さんだが、「最初が、アメリカに住んでいた時だったのは本当にラッキーでした」と振り返る。

「カウンセリングを受けるまでに1年近くかかってしまったけれど、これがもし日本にいた時だったら、治療を受けることすら思いつかなかったかもしれません」

当時からアメリカでは、ハードワークが日常のエグゼクティブたちにはお抱えのカウンセラーがいたり、企業や学校にカウンセリングルームがあったりと、カウンセリングや心療内科の受診がポピュラーだった。鬱も病気だと広く認識されていたため、治療を受けることへの偏見はほぼ皆無。そんな環境だったからこそ、20歳の河村さんも、さほど抵抗感なくカウンセリングを受診できたという。

対して日本では、20年くらい前まで「鬱は甘え」とか「変な人がなる頭のおかしな病気」という偏見がはびこっていた。周囲からは「もっと気持ちを強く持て」とか「気力で乗り越えろ」とハッパをかけられ、ともすると患者自身も、「鬱になるのは自分のせい」と自己嫌悪に陥りがちに。最近はそうした偏見がなくなりつつあるものの、メンタル系疾患で医療機関にかかるのは、欧米に比べるとハードルがまだまだ高いように思える。

「日本人はメンタル系の病気を隠す傾向がある気がしますが、そうした病気にかかるのは本人のせいではないし、恥ずかしいことでもありません。私の周りには鬱にかかった経験がある人がたくさんいますし、会社に勤めていた頃は、カウンセリングルームは多くの社員が利用していて予約がとりづらかったほど。『自分で何とかしよう』なんて考えず、身体的な病気と同じように、早めに、きちんと治療を受けてほしいと思います」

信頼できる医師にアクセスすることが大切

河村さんが「早めの受診」と共に強調するのが、「信頼できるプロフェッショナルのもとで治療を受けること」だ。

「適切な治療を受ければ治りますが、なかには間違った薬を処方され、症状が悪化するケースもあると聞きます。これは鬱に限りませんが、臨床経験が豊富で、知識も腕も確かなドクターにかかることが、すごく重要。一番信頼できるのは、実際に診療を受けた人からの“お墨付き”ですね。ただ、そうした情報は、残念ながらオープンになっていないのが現状。アメリカだと、ドクターの情報や評価が口コミで公開されていて、すごく参考になるのですが」

となると、人脈を駆使して情報収集するしかない。

「私は口コミのパワーを信じているんです、『この人がすすめるなら間違いはない』って。実際、ハズれることはほぼありませんね。皆さんの周りにもきっと情報通の人がひとりかふたりはいるでしょうし、もしいなければ、友人や知人に紹介してもらえばいい。苦しい思いから早く解放されるためにも、手間を惜しまず、正しい情報を得てほしいと思います。それだけの価値はきっとあるはず」

鬱の原因は特定されていないが、一説によると脳内の神経伝達物質で、“幸せホルモン“との呼び名もあるセロトニンの減少が関係しているとも。河村さんが、最初のカウンセリングで「鬱はホルモンバランスと関係している」と説明されたのは、そのためだ。

「大人になる20歳の頃と出産後、子宮全摘後と、環境や身体が大きく変わった時期なんですよね。それで起こる不調は人それぞれ違うと思いますが、私の場合は鬱という形で表れやすい。今はそう考え、日常的に対策をしています」

今はホルモンバランスがなるべく整うよう、毎日同じ時間に起床し、1日3回バランスの良い食事を摂り、同じ時間に就寝するなど、規則正しい生活を実践。適度な運動も欠かさないという。

「毎朝太陽を浴びるとか、身体によくないものは摂らないとか、他にもいろいろ気をつけています。そんな風に自分でできる対策はしているけれど、それでもなったら、サクッとプロのお世話になるつもり。どんな病気も初動が大切。早めに治して、毎日を自分らしく過ごした方が、ずっとハッピーですから」

メンタル系疾患に関しても、自分にプラスになると思えば、躊躇なく即行動する。河村流フレキシブルかつポジティブなマインド、これからも参考にしたい。

河村真木子/Makiko Kawamura
1976年奈良県生まれ。父の転勤に伴い、10歳~15歳をシンガポールで過ごし、'92年に帰国。大阪府の公立高校に入学したものの、'94年、単身でアメリカに渡り、ロサンゼルスのLe Lycee Francaise de Los Angels高校に編入。'96年同校卒業後、関西学院大学に入学するも自主退学し、再び渡米。コミュニティカレッジを経てUCバークレーに編入し、2000年に卒業。外資金融機関などでキャリアを積んだ後、2021年、オンライン事業Holland Village Private Communityを設立。著書に『超フレキシブル人生論 ”当たり前“を手放せば人生はもっと豊かになる』。現在は、会員制Holland Village Private Caféの運営も手がける。

TEXT=村上早苗

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