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2024.02.29

AIで仕事が消滅する時代に、河村真木子が「絶対に磨くべき」と考える2つの能力とは 

外資系金融機関でキャリアを磨き、現在は国内外でメンバー1万人超え、“最先端の情報が集まる”と人気のオンラインサロンを主宰する河村真木子さん。短期連載3回目は、AIによって職種の半分が消滅する時代が迫りつつある今、必要なスキルについて自説を語ってもらう。【その他の記事はコチラ】

河村真木子

ホワイトカラーはAIにとって代わられる

2017年、野村総合研究所とオックスフォード大学は、「10~20年後には、日本の労働人口の約49%がAIに代替することが可能」という共同研究を発表した。それから6年、セルフレジが急速に普及し、無人店舗なるものも登場。事務作業にAIが積極的に導入され、物流の現場ではロボットによる荷物の選別や運搬が行われるなど、その“推測”は現実を帯びつつある。

河村真木子さんも、「近い将来、今ある仕事の大半がAIにとって代わられるというのは間違いないと思います」と語る。

「なくなる可能性がとくに高いのは頭を使う仕事。記憶力やデータ分析力などは人間よりもAIの方がずっと優れているので、AIに任せた方が生産性は上がります。実際、アメリカなどの投資会社では、過去最高益を更新し続けている会社でさえ、トレーダーやアナリストたちが大量にリストラされているそうです。そう考えると、経営方針など大きなことを意思決定するエグゼクティブ以外のホワイトカラー、とくに事務職は、あと10年もすれば半減するのではないでしょうか」

では、どういった職種であれば、生き残ることができるのか。河村さんがまず挙げてくれたのが、クリエイティブな能力が必要とされるものだ。

「AIは過去のデータ活用などは得意だけれど、ゼロイチは苦手。だから、新しいアイデアや発想など、クリエイティビティが求められる仕事はなくならないでしょう。それも、世界で評価されるようなトップクリエイターだけでなく、SNSやYouTube周りの編集や創作をはじめ、ニッチな分野でのクリエイターのニーズが高まる気がします」

もうひとつは、現場で、主に自らの肉体を動かして仕事をこなすブルーカラーと言われる仕事だ。

「もちろんブルーカラーの中には、ロボットなど機械に代替される職種もあると思います。ただ、相手の気持ちをきめ細やかに汲んで行動するとか臨機応変な対応が重視されるもの、いわばハート・トゥ・ハート的な仕事は、人間だからこそできること。保育士や介護士、教師、看護士はその代表例。また、営業職のようなコミュニケーション能力が求められる仕事もなくならないでしょう」

実際、ドクター自身が『僕らの代わりはロボットに務まるかもしれないけれど、看護士の仕事は無理』と話すこともあるという。将来は、ブルーカラーが人気の職種になる可能性も高いのかもしれない。

クリエイティビティは学ばせるものではなく湧き出るもの

AIの台頭に脅かされない存在になるには、クリエイティビティとコミュニケーション能力が不可欠。となると、これから社会に出る子供たちに必要になるのも、そのふたつの能力だ。双方とも、昨今盛んに必要性が叫ばれ、幼少期の習いごととしてブロックや工作教室などが見直され、“創造力を培う”をスローガンに新しいカリキュラムを取り入れる学校も増えている。

「それも一定の効果があるかもしれませんが、私自身は、子供の中から自然に湧き出てきたクリエイティビティの方が断然強いと思っています。大人が“教育”として押しつけるのではなく、その子自らが興味を持って、取り組んだことで身に着けた創造力ですね。そのくらい強くて、揺るぎないものでないと、これからの時代に通用しなくなると思うんです。

クリエイティビティに限らず、自分が本当に好きなことでないと、突出した能力は磨かれないので、大人は、子供がもっと自由に、好きに学べる環境づくりに力を注ぐべきですよね」

コミュニケーション能力は、さまざまな人と交流する機会を増やすなどで磨かれそうだが、「英語力もコミュニケーション能力のひとつとして、伸ばしてほしい」と、河村さん。

「英語がコミュニケーション能力のひとつと捉えることに、違和感を抱くかもしれませんが、グローバル化が今後ますます加速すれば、日本語以外の言語を話す人たちと交流する場面は自ずと増えてきます。つまり、世界的な共通言語である英語力を身に着けているということは、コミュニケーションの面でアドバンテージになるということ」

だが、それこそAIの発達により、自動翻訳機が普及している。精度もかなり高くなっているので、今後語学力は不要という説もあるけれど?

「ビジネスの世界はもっとシビア。たとえばプロジェクトを共に遂行するパートナーを選ぶ際、共通言語を持っていて細かいニュアンスまで理解しあえる相手と、自動翻訳機を通じてでないとやりとりできない相手だったら、きっと前者を選びますよね。 実際、経営陣が自動翻訳機を介して意思疎通をはかっている場は、私は見たことがありません。

コミュニケーションは、人間に残された最大の能力。英語はその中のひとつの要素として、身に着けておいた方が絶対にお得だと思いますよ」

働く必要がない時代は“楽しんだ者勝ち”

今ある仕事の半分がAIに取って代わられるとしたら、失業に追い込まれ、苦しい生活を強いられる人が出てきそうだが、河村さんは、「働かなくてもいい時代がやって来ると思います」と、言い放つ。

「これまで従業員を雇って行っていた作業をAIに任せれば、人件費が削減でき、収益が大幅にアップする企業が増えるでしょう。そうした企業に、法人税などなんらかの形で国に収益を納めてもらい、国はそれを国民に還元する。いわゆる“富の再分配”を行えば、国民は生活のために働く必要はなくなります。今は1日の大半を仕事に充てるのが一般的ですが、ボランティアや趣味に時間を費やすのがスタンダードになるかもしれません。

そうなった時、最も幸せなのは、夢中になれるものを持っている人。それを見つけるためにも、子供たちには、自由にやりたいことをやらせてあげる環境づくりは必須だと思います」

河村真木子/Makiko Kawamura
1976年奈良県生まれ。父の転勤に伴い、10歳~15歳をシンガポールで過ごし、'92年に帰国。大阪府の公立高校に入学したものの、'94年、単身でアメリカに渡り、ロサンゼルスのLe Lycee Francaise de Los Angels高校に編入。'96年同校卒業後、関西学院大学に入学するも自主退学し、再び渡米。コミュニティカレッジを経てUCバークレーに編入し、2000年に卒業。外資金融機関などでキャリアを積んだ後、2021年、オンライン事業Holland Village Private Communityを設立。著書に『超フレキシブル人生論 ”当たり前“を手放せば人生はもっと豊かになる』。現在は、会員制Holland Village Private Caféの運営も手がける。

TEXT=村上早苗

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