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2024.02.29

“人生の夏休み”を経て強くなった、バスケ女子・馬瓜エブリン

バスケットボール女子日本代表は、2024年2月のパリ五輪世界最終予選(OQT)を勝ち抜き、3大会連続の五輪出場を決めた。パワーフォワードの馬瓜(まうり)エブリン(28歳・デンソー)がコート内外で存在感を発揮。1年間の休養を経てコートに戻ってきたムードメーカーが、金メダルを狙うパリでもキーマンになる。連載「アスリート・サバイブル」

バスケ日本代表の馬瓜エブリン選手

「子供たちのためにも絶対に勝たなくてはいけない」

同期からの言葉で目が覚めた。

2024年2月8~11日にハンガリー・ショプロンで開催されたパリ五輪世界最終予選(OQT)。日本は第2戦で地元ハンガリーに敗れて、1勝1敗となり崖っ縁に立たされた。

翌日の選手ミーティング。

意気消沈していた馬瓜(まうり)エブリンは、同じ1995年生まれの宮崎早織(28歳・ENEOS)から「お前の“吠え”が必要だ。ハンガリー戦は“吠え”が足りなかった」とゲキを飛ばされた。

第1戦のスペイン戦は途中出場で18分24秒プレーして、チーム最多タイ20得点の活躍。何度も雄叫びを上げてムードを盛り上げ、世界ランキング4位の格上(日本は世界ランキング9位)を撃破する原動力となった。

だが、勝てば五輪出場が決まるハンガリー戦(世界ランキング19位)は15分13秒出場で1得点と沈黙。最終戦のカナダ戦(世界ランキング5位)に勝たなければ、五輪出場権は極めて厳しい状況に陥り、馬瓜は「正直、生きた心地がしなかった」と持ち前の明るさを失っていた。

試合後は「ひとりになるといろいろと考えすぎてしまう」と初めて日本代表に同時選出された妹・ステファニー(25歳・スペイン1部モビスター・エストゥディアンテス)とふたりで過ごした。

前向きになれない精神状態を一変させたのが、2021年東京五輪も共に戦った宮崎からの言葉だった。

馬瓜は「リオ五輪(2016年)から始まって、東京五輪(2021年)、そして男子W杯(2023年)と続いているなか、これからバスケットを頑張りたいと思っている子供たちのためにも、このつながりを途切れさせてはいけない。絶対に勝たないといけない」と腹をくくった。

カナダ戦は23分48秒の出場でチーム最多タイ21得点と爆発。

チームがリズムに乗れない時間帯も大声で仲間を鼓舞し続けた。リードチェンジを12回も繰り返した接戦の末に4点差で格上を撃破。3大会連続の五輪切符を手にした。

「データやロジックを超えないといけない瞬間が絶対にある。それがカナダ戦だった。バスケットは雰囲気のスポーツ。自分が率先して雰囲気をつくることでチームにエナジーを届けられたと思う」

気持ちを新たに、再び日本代表の一員に

馬瓜は“人生の夏休み”を経て、精神的に成長した。

2022年夏に1年間の休養を宣言。コートから離れ、テレビ出演やバスケの試合解説などを中心に活動した。

ここ数年は所属チームと代表活動の両立でハードスケジュールをこなし心身ともに疲弊。バスケを嫌いになりかけたこともあったが、1歩引いた立場で競技に関わったことで、競技に対する気持ちを整理できた。

休養から約3ヵ月後。高崎アリーナで開催された男子代表戦でリポーターとしてコートに立つと、自然と目頭が熱くなった。

「自分もここでプレーしていたんだな。(休養を)1年って言わなきゃよかった。休んで3ヵ月目でバスケがしたくなった」

2023年6月にデンソーに加入して練習を再開。2023年10月に開幕したWリーグで主力として活躍すると、2023年12月の皇后杯ではチームの初優勝に貢献。2024年1月のOQTに向けた合宿で、2021年東京五輪以来の日本代表復帰を果たした。

「1年休みを取る恐怖心はあったが、今まで関わってこなかった方々といろいろな関わりができ、心に余裕が生まれた。いいことにも、悪いことにも動じなくなった。メンタル面が強くなったと思う」

2023年夏のW杯で男子日本代表もパリ切符を獲得しており、男女そろって自力での五輪出場は1976年モントリオール以来の快挙。五輪本番の女子代表は金メダルが目標になる。

馬瓜は「まずはパリに行けるように国内リーグで頑張らなくてはいけない。パリ五輪に行くことができたら、盛り上げ隊長としてしっかり仕事をしたい」と視線を上げた。

花の都でも、チームを上昇気流に乗せる叫びを上げる。

馬瓜エブリン/Evelyn Mauli
1995年6月2日愛知県生まれ。ガーナ出身の両親のもと、小学4年からバスケを始める。アンダーカテゴリーの日本代表として国際試合に出場するため、14歳の時に家族で日本国籍を取得。桜花学園高を経て、2014年にWリーグのアイシンに加入。2017年にトヨタ自動車に移籍した。2022年夏から1年の休養を経て、デンソーに入団。身長1m80cm。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=加藤誠夫/アフロ

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