バスケットボール女子のデンソーでチーム一筋16年の高田真希(34歳)が悲願の日本一を手にした。2023年12月の皇后杯全日本選手権ファイナルラウンド決勝で、10連覇を狙ったENEOSに89-56で快勝。過去に皇后杯で7度、Wリーグで2度の準Vを経験しており、10度目の決勝でついに頂点に立った。連載「アスリート・サバイブル」
デンソーが悲願の初優勝、チーム一筋16年の高田がMVP
ついに殻を破った。2023年12月12日、東京・代々木第2体育館で開催された皇后杯ファイナルラウンド決勝は3年連続の同カード。デンソーが序盤から主導権を握り、ENEOSの10連覇を阻止した。
21得点の活躍でMVPに輝いた高田真希はコート上の優勝インタビューで「やりましたー!」と絶叫。
「16年やってきて初めての日本一。なかなか結果を出せず、このまま優勝できずに終わるのかなと思ったことも何度もあった。何度も負けたけど、やり続けた。そこは自分を褒めたい」と歓喜に浸った。
「結果が出なくてもやり続けたこと、その過程に意味がある」
桜花学園高(愛知)卒業後の2008年にデンソー加入し、チーム一筋16年。皇后杯は7度、Wリーグでは2度の準優勝を経験したが、決勝はすべてENEOSに屈して優勝には縁がなかった。
「結果が出ないので辞めたいなと思った時期もある。何かに挑戦する時にすぐうまくいく人もいれば、なかなか結果を出せない人もいる。結果が出なくてもやり続けたこと、その過程に意味がある。この姿がいろいろな人に何か影響を与えられればいいと思います」
日本一まで16年を要したが、競技人生の実績は輝かしい。
Wリーグで2008年~2009年シーズンに新人王、2013年~2014年シーズンにはMVPを獲得した。2009年から日本代表で活躍し、2016年リオ五輪では主力として8強入りに貢献。2021年の東京五輪では主将を務め、五輪で男女通じて初の表彰台となる銀メダルを手にした。
34歳になった現在も日本代表の中心選手として活躍する。
2024年2月8~11日にパリ五輪世界最終予選を控えており、1月中旬からは合宿がスタートする予定。替えの効かないインサイドの選手として、絶対的な地位を確立している。
2020年にはイベント会社「TRUE HOPE」を設立し、自ら代表取締役社長に就任。スポーツ教室やトークイベントなどを通して子供たちの夢をサポート、スポーツの魅力を発信する活動を行っている。
ヘルスケアサービスの会社を展開するサッカーの長友佑都(FC東京)ら社長を務めるアスリートはいるが、女子バスケのようなアマチュアリーグ所属選手では異例の取り組みといえる。
高田は引退後のセカンドキャリアも見据えており「引退後に何をするかを考えるなかで、影響力のある現役のうちに活動を始めたいと思い、会社を設立した。培ってきた経験や技術、自分にしか伝えられないものを還元したい」と熱い思いを口にする。
キャリアで欠けていた“日本一”のピースが埋まった今だからこそ言えることがある。
「日本一だけがフューチャーされるのはよくない傾向だと思っていた。日本一以外がダメかといえば、そうではない。(2021年の東京)五輪は過程が素晴らしかった。五輪を経験したことで、結果が出なくても過程に納得すればいいのかなと、思えるようになった。自分のこういう姿を見て、みなさんの日々の活力になってくれたらうれしい。そこに日本一の意味があると思う」
優勝直後の公式会見で高田は「これで殻を破れたと思う。でも課題もあるので、満足せずにやっていきたい」と視線を上げた。
Wリーグ制覇、パリ五輪での金メダル獲得など2024年も大きな目標となる大会が続く。日本女子バスケ界の大黒柱の挑戦は終わらない。
高田真希/Maki Takada
1989年8月23日愛知県豊橋市生まれ。小学5年の時にバスケと出合い、中学から本格的に競技に取り組む。桜花学園高(愛知)から2008年にWリーグのデンソーに加入した。ポジションはセンター。コートネームは「リツ」で、“リ”バウンドを“つ”よく取るが由来。身長1m83cm。
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。