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2023.08.03

高さは9階建てのビル、衝撃は交通事故レベル! ハイダイビングに挑む日本唯一の男

高さ27mの台(9階建てのビル相当)から飛んで演技を競うハイダイビング。日本人で唯一の競技者である荒田恭兵(27歳・高岡SC)が福岡で開催された世界選手権に日本人として初出場した。エクストリームな競技にどっぷりとハマる自称「クレイジー」なハイダイバーに迫った。連載「アスリート・サバイブル」

ハイダイビング・荒田恭平
世界水泳福岡2023、ハイダイビング男子決勝。

“クレイジージャーニー”荒田恭兵「飛ぶ時はめちゃくちゃ怖い」

ハイダイビングはハワイの王が戦士たちに勇気を示すため、自ら崖に飛び込んだのが起源とされる。9階建てのビルに相当する、高さ27mの台からのダイブ。入水の衝撃は「交通事故」と例えられるほど大きい。

体に回転やひねりを加え、技の美しさを競う採点競技だ。踏切から入水までは約3秒。下降速度は時速約90kmにも達する。非五輪種目だが、世界選手権では2013年バルセロナ大会から実施されている。

危険を伴うため、入水は手からではなく、足から行う。落下地点にはダイバー4人が待ち構え、選手の入水と同時に潜って異変がないかを確認。選手は演技後に「OK」などのサインを出してケガがなかったことを示す必要がある。

日本のパイオニアである荒田は「今でも飛ぶ時はめちゃくちゃ怖い。でも日頃のトレーニングや準備を積み重ねて、恐怖心を乗り越えて成功した瞬間は、何よりも爽快感を感じる。“生きている”って感じがするんです」と競技の魅力に取り憑かれている。

趣味は崖探し、ホームは東尋坊

2023年7月に福岡で開催された世界選手権に日本人として初出場。4本の演技の合計点で順位を争うが、体の負担が大きく、ジャンプは1日2~3本程度が限界であるため、2本ずつ2日間に分けて実施された。

1、2本目を終えて23人中22位。中1日で迎えた3、4本目で順位を20位まで上げた。最終4本目は自身の演技で最高難易度の5264B(後ろ宙返り3回2回捻りえび型)を成功。

荒田は「現時点の最大限のパフォーマンスは出せた」と充実の表情を浮かべた。

予選を兼ねた5月のW杯で順位条件を満たせなかったが、自国開催が追い風となり、世界水連から推薦枠を得て代表権を獲得した。

「出場するチャンスをいただいたからには、ハイダイビングを皆さんに知ってもらうのが使命だと思っている」

競泳で“水の怪物”と称されたマイケル・フェルプス(アメリカ)も観戦する前で、日本のパイオニアとして歴史的なダイブを演じた。

小学4年で飛び込みを始め、日体大4年時の2017年に日本選手権のシンクロ高飛び込みで優勝。五輪を目指す選択肢もあったが「誰もやったことがない道へ行きたい。ハイダイビングって誰もやってないじゃん」と、動画を見て以前から興味を持っていたハイダイビングに転向した。練習中に入水角度がずれて気を失い、溺死しそうになったこともある。

「練習環境の発掘は課題です」

十分な高さと水深が必要な練習場所は限られ“ホーム崖”は福井県の東尋坊。自殺願望者が訪れる場所として知られるが、高さは15~20m程度で本番と比べると10m近く低い。

趣味は崖探し。検索サイトに「日本 崖」、「断崖絶壁」などと打ち込んだり、グーグルマップで海岸沿いを入念にチェックして、飛べそうな場所を探す日々。実際に訪れて水深などを確認し、好条件の場合は、ダイブの許可を得る作業に入る。

世界選手権前からTBS系列『クレイジージャーニー』などメディア露出が増え、外食先で店員に声を掛けられるなど知名度は格段にアップ。現在は富山県スポーツ協会に所属してフルタイムで働くが、10以上の企業や個人から競技活動を支援するスポンサーの打診も来た。

水面下ではハイダイビングの五輪種目採用に向けた動きもあり、荒田は「(2024年)パリ五輪の次の(2028年)ロサンゼルス五輪で『もしかしたら採用されるんじゃないか…』という話も出ている。五輪種目になったら、自分もそこに照準を合わせたい。飛び込みでは叶わなかった五輪選手になれるかもしれない。あと10年は競技をやりたい」と意欲を見せる。

「僕にとってクレイジーは褒め言葉。注目していただいて、素直にうれしい。ハイダイビングがどういうものかを正確に伝えるチャンスだと思うので、正しい印象や情報を持ったうえで応援してくれたらうれしい」

クレイジーなのは荒田自身や競技の内容ではない。荒田がハイダイビングにクレイジー(夢中)なのだ。

荒田恭兵/Kyohei Arata
1996年3月9日、富山県生まれ。高岡第一高校、日本体育大学。小学4年から大学4年まで飛込競技に打ち込み、2017年日本選手権ではシンクロ高飛込で優勝。大学卒業を機にハイダイビングに転向した。趣味はサウナ、崖探し。身長174.5cm、体重70kg。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

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