卓球の2024年パリ五輪日本代表の予定選手が2024年2月5日に発表され、早田ひな(23歳・日本生命)が女子シングルス、混合ダブルス、団体戦のメンバーに選ばれた。2021年の東京五輪は補欠。前回の悔しさを糧に臨んだパリ五輪選考レースを断トツ1位で勝ち抜き、初の五輪出場を決めた。連載「アスリート・サバイブル」
憧れであり目標だった石川佳純
約2年間に及んだパリ五輪選考レースで、一度も1番手の座を譲らなかった。
2枠のシングルス代表を確実にして臨んだ2024年1月の最終選考大会、全日本選手権も優勝。2位の平野美宇(23歳・木下グループ)、3位の伊藤美誠(23歳・スターツ)を寄せつけず、圧倒的な力を示して選考レースを制した。
「選考レースが始まった時にオリンピックに出場することを目標とはせず、オリンピックで金メダルを獲れる選手を目指し、世界一の選手になることを、目標に頑張ってきた。ライバルではありましたが、沢山の素晴らしい選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)してきたことで強くなることが出来た」
2021年東京五輪は補欠。石川佳純と、同じ2000年生まれの伊藤、平野をサポートし、女子団体戦の銀メダル獲得を支えた。
長年日本卓球界を牽引した石川が、2023年5月に現役を引退。同じサウスポーの早田にとって憧れの存在だった。
東京五輪でチームを引っ張る姿を間近で見ていただけに「“石川さんがいるから大丈夫”と思っていた部分がある。安心感があって、空気で引っ張ってくれた。次は自分自身がそういう存在になりたい」と思いを強くした。
本来は右利きで、食事や字を書くのは右手だが、競技は左手でプレー。卓球はサービスなどのボールの回転が逆になるため、相手を惑わせる稀少なサウスポーが有利とされる。
早田は地元北九州市の名門クラブ・石田卓球N+で4歳から卓球を始め、当時の指導者の勧めでサウスポーに転身。五輪代表決定直後に出したコメントでは恩師への感謝の思いを綴った。
「石田卓球N+では女先生(石田千栄子氏)にラケットの握り方から教わりました。本来右利きの私ですが体のバランスを見て左に勧めてくれたのも女先生です。女先生との出会いがなければ、今の卓球選手の私は存在していないと思っています」
最年長として、チームを引っ張る存在に
現時点ではパリ五輪代表の予定選手。2023年2月16日開幕の世界選手権団体戦(韓国・釜山)で日本が準々決勝に進めば、五輪出場枠を獲得し、正式な五輪代表となる。
平野とともにチーム最年長となった早田は、3大会連続で挑む世界選手権団体戦へ「エースとして自分の役割を全うしたい。性格的にもみんなをまとめるのが好きなタイプ」と、コート内外で日本女子を引っ張る覚悟を口にした。
パリ五輪では女子シングルス、男子エースの張本智和(20歳・智和企画)と組む混合ダブルス、女子団体戦の3種目に出場予定。女子団体戦では平野に加え、15歳の張本美和(木下グループ)との3人で打倒中国、金メダルを目指す。
「私の目標はオリンピックで金メダルを獲って、両親をはじめこれまで支えてくださった沢山の方に恩返しをすることです。応援してくださる沢山の方に喜んでもらいたい。そういった感謝の気持ちをもってオリンピックに臨みたい」
幼少時代から天才と言われた伊藤、平野の影に隠れてきた早田が、日本のエースとして臨む初の五輪舞台。花の都で大輪の花を咲かせる。
早田ひな/Hina Hayata
2000年7月7日福岡県生まれ。4歳から卓球を始める。2021年アジア選手権でシングルス優勝。2023年の全日本選手権はシングルス、女子ダブルス、混合ダブルスの3冠を達成。2024年全日本選手権はシングルスのみに出場して連覇を果たした。2024年2月6日発表の世界ランキングは中国勢4人に次ぐ5位。身長1m66cm。
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。