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2024.02.19

「湯道」生みの親・小山薫堂、こだわりの湯室を公開

第一線を走り続ける仕事人には人知れず、心を鎮める場所がある。今回は、放送作家・小山薫堂氏が大切にする「湯室」をご紹介。日々の荒波をくぐり抜けるために必要不可欠な趣味部屋の正体とは。【特集 多拠点邸宅】

小山薫堂の湯室
手前の屏風は、画家・高橋信雅氏の作品を屏風に仕立てたもの。窓を閉じればスクリーンを下ろすこともでき、好きな映画を投影できる。

ひとりじっくりと「湯室」で湯に浸かり夢をととのえる

「ここで湯に浸かっていると、茶室でひとり茶をいただいているような、そんな静謐(せいひつ)な気持ちになるんです」

放送作家・小山薫堂氏の京都の別邸、その離れには窓を開け放てば半露天風呂になる「湯室」が設けられている。

江戸時代に使用された黒い敷瓦(しきがわら)が敷き詰められた床面。その上に置かれるのは建築家・隈研吾氏と、岐阜の職人集団、檜創建による檜風呂だ。湯室内にあるBang&Olufsenのスピーカーからはジャズやポップスと気分に合わせ、音楽を響かせる。窓を開ければ目の前に川が流れ、夏は蛍、秋は紅葉など、豊かな自然を全身に感じるのだという。

茶道や華道のように「風呂」という日常の習慣を慈しむことで、そこに「道」が拓けるのではないか。そう考えた小山氏が「湯道」を提唱したのは2015年。京都・大徳寺、真珠庵の山田宗正住職から「湯によって心を温める」という意の「湯道温心」という言葉を受け取り、「湯道」は始まった。現在、小山氏は湯道文化振興会を立ち上げ、日本の風呂文化の啓蒙に努めている。

「湯道」の提唱者でいわば家元である小山氏、この湯室では茶会ならぬ湯会も開くという。「湯室中央に屏風を立て、一方は服を着て食事、一方では入浴をする。ひとり湯船にいても屏風の向こうの会話には参加できますし、湯の中の心地よさは食事をしている人にも伝わります。一服の茶を回し飲みするように、ひとつの湯船に順繰り浸かり、同じ時を共有するのです」

これからすべきこと、したいことに向き合う時間

もともと、昭和2年に建てられた古民家、その倉庫を改築した。元の持ち主が馬主であったことと、時折付近の山から鹿がやってくることにちなんで、小山氏が「馬鹿庵(ばかあん)」と名づけた。さらに茶道や華道で、器にこだわるように、道具にもこだわっている。手桶は木工職人でアーティストの中川周士氏、手洗い鉢は世界的に評価の高い陶芸家・辻村史朗氏による一級品だ。

「ここでひとり、湯の中にいると、これからすべきこと、したいことに、じっくり向き合うことができます。この湯室は、私にとって“夢をととのえる場所”なんですよ」

映画『湯道』のアイデアはじめ、さまざまな企画がこの湯の中で生まれた。これからも小山氏の新たな道を切り開くきっかけの場所となるはずだ。

小山薫堂/Kundo Koyama
1964年熊本県生まれ。放送作家、脚本家、地域・企業のプロジェクトアドバイザーなど多彩なジャンルで活躍。2025大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー。2023年に公開された映画『湯道』では企画・脚本を務めた。

【特集 多拠点邸宅】

この記事はGOETHE 2024年3月号「総力特集:多拠点邸宅」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=杉本圭

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