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2024.02.14

伊達政宗を支え続けた最強のNo.2、片倉景綱【歴史好き芸人・ロバート山本の偏愛武将②】

お笑いトリオ「ロバート」として活躍する傍ら、大の歴史好きとしても知られる山本博さん。戦国時代を愛する山本さんが推薦する「生き様がカッコ良すぎる武将」とは? 今回は、片倉景綱(かたくらかげつな)について。#1#2

片倉景綱のイラスト
Illustration=山本博

何があっても主君を守るという、武士としての美学

「片倉景綱(かたくらかげつな)は伊達政宗より10歳ほど年上で、子供の頃からその教育係となり、軍事、外交、内政などあらゆる面で政宗を支えた人物です。伊達政宗は破天荒で大胆なエピソードが多い人物ですが、それを裏で上手く収めていたのが景綱なんです」

そんな景綱の政宗への忠義を物語る、以下の逸話が山本さんは特に好きだそう。

「豊臣秀吉や徳川家康が一目置く“豪気の人”であった政宗ですが、実は小さな頃は病気がちだったといいます。ある時、政宗の脇腹に出来物ができてしまい、痛くて夜も眠れない時期が続いた。政宗は自分でそれを切り取りたかったんですが、当時の武将にとって腹の傷は切腹を連想させるため不名誉なことで、『病気を苦に切腹したと思われるのは嫌だ』と景綱に相談したそうです」

それを聞いた景綱は、真っ赤に熱した金属の棒を持ってきて自分の太ももに突き刺し、命に別状がないことを自分自身で確かめてから、それを政宗の腹に刺して出来物を焼き切った。

「政宗の腹の傷は1ヵ月程度で治ったそうですが、景綱の足の傷は3ヵ月治らず、さらに後遺症として引き攣(つ)れが残ってしまったといいます。自分を犠牲にしてでも、主君である幼い政宗を勇気づけるその姿、まさに“忠義の士”ですね」

ロバート山本さん 話しているカット
山本博/Hiroshi Yamamoto
1978年群馬県生まれ。1998年にお笑いトリオ「ロバート」を結成。テレビ番組『はねるのトビラ』のレギュラーに抜擢され、ブレイク。2011年のキングオブコントで優勝。近年ではプロボクサーとしての活動や、2018年に初の絵本『むちゃぶり かみしばい』(文芸社)を出版したことでも話題に。大の歴史好きとしても知られ、趣味の城巡りでは日本100名城を70以上巡っている。

また、こんなエピソードもある。

1590年、豊臣秀吉は天下統一の仕上げとして北条氏を討つべく、小田原征伐を決行。政宗にも出陣命令が下るのだが、伊達家は北条氏と長らく同盟関係にあったため、政宗は出陣を躊躇し、ようやく政宗が軍を動かした時にはすでに戦がほぼ終わっていた。これは秀吉からしてみれば、政宗が裏切ったと考えてもおかしくない状況だ。

「その時に政宗が取った行動は、死装束を着て秀吉に謝罪に行く、でした。死を覚悟して、『まさに今秀吉に殺されても文句は言いません。それくらい反省しています』という気持ちを見せたんですね。ある意味で政宗は大芝居を打ったと言えると思いますが、面白いことが好きな秀吉ですから、パフォーマンスであることは理解しつつ、政宗のその姿を見て許した。この“死装束で謝りに行く”ことを助言したのも景綱だ、という説があるそうです」

絶体絶命の危機を「とっさの機転」で切り抜けるというのは、お笑い芸人の世界でもありそうなエピソードだ。

「相当な力の差があったからこそ、秀吉も許しちゃったのかも。芸人でも、『若手が超大御所の芸人さんの前でメチャクチャなことをして、その思い切りのよさを逆に面白がってもらえる』みたいなことがありますから(笑)」

こうした政宗を支える景綱の手腕は、秀吉も大いに評価。秀吉は景綱を大名に取り立てようとした、という逸話も残っている。

「その誘いも、景綱は丁重に断るんですよ。大名に取り立てられるということはつまり、秀吉の家臣になることと同じ。景綱は政宗への忠義を貫いたわけです。その後、天下を治めた徳川家康も景綱のことを気に入って、伊達家の屋敷とは別に片倉家の屋敷を用意しましたが、これも景綱は一度受け取った後に返上しています」

こうした景綱の生き方は、山本さんの愛読書である新渡戸稲造『武士道』で紹介されている、日本人の精神性、倫理観と重なる部分も多い。

「景綱の生き様には、武士道の美学を感じますよね。主君をひたすら忠義を尽くし、No.2として支え続ける。その一途さに、惚れてしまいます」

その政宗と景綱の絆は、現代にまで受け継がれているという。

「仙台に御祭神が政宗公の青葉神社という神社があるんですが、その宮司は今も片倉家の末裔の方が務められています。伊達政宗も人を惹きつける魅力的な武将でしたが、片倉景綱もやっぱり素敵だなと思います」

山本さん私物の「武士道」
高校生の時に読みはじめて、大人になって買い直したという新渡戸稲造の『武士道』。「東京に出て芸人として生きていくなかで、僕の支えになった本です。この本で武士道の精神を知って、僕はますます日本の歴史を好きになりました」

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=鈴木大喜

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