霧雨(きりさめ)のなかに佇む森香澄は、テレビやSNSで見る彼女と別人のようだった。
「自分の感情を重視して動くようにしています」
「雨に濡れながら笑顔というのも変かなと(笑)。カメラマンの方と話しながら、しっとりした表情にしてみました。まだ自分ひとりで引きだすことはできないので、周りの方にいろいろ教えてもらいながらやっています。そうやって新しい自分を見つけられると嬉しいですね」
2023年3月、4年間アナウンサーとして勤務したテレビ東京を退社。一歩踏みだし、新しい道を進んでいる。
「肩書きは……難しいんですよ。あまり肩書きにとらわれたくないので、タレントというのがいちばん幅広くいられるかなと思っています」
アナウンサー時代は、コロナ禍とほぼ重なる。
「研修を受けて2019年6月にデビューして、翌年にはコロナ。でもそのおかげで結構鍛えられました。外部のタレントさんを呼べないのでアナウンサーに任せられることが多かったんです。スタジオの人数制限もあったので、2年目から週に3、4回、ひとりで生放送を仕切って。最初はずっと手が震えるような状態でしたけど、それもそのうち慣れてきて、まあ、なんとかなるって度胸がついたし、緊張も楽しめるようになりました」
会社に不満があったわけでも、明確な目標があったわけでもない。ただ“次の道”に行きたいと思い、退社を決意した。
「アナウンサー時代もかなり自由に好きなことをやらせてもらっていたほうだと思います。ただもっと外の世界を見てみたいなと。こういう雑誌の撮影もやってみたかったし、他局のバラエティにも出てみたかったし、お芝居にも興味があった。
もちろん不安はありましたよ。他のタレントさんと並んで、そのなかから選んでもらえるのかとか。でも私、もともと前向きなタイプなので、夜も眠れないほどの不安ではなかったです。学生時代はアルバイトを5つ掛け持ちしてたんですよ。それはそれで楽しめていたので、もしダメだったらまたバイトでもなんでもして生活します(笑)」
タレントとしてやっていく自信はあったのだろうか。
「それも特にないんです(笑)。成功とか失敗とかあんまり考えないんですよ。自分が納得できればそれでいい。私は置かれた場所で咲きたいタイプ。もっと細かく言うと、置かれた場所を楽しめるタイプで、咲くように頑張るタイプなんです。
仮に思ったようにならなくても、どうしようかと考えて、楽しい方向に持っていく。だから落ちこんだりすることもない。思うような結果にならなかったら、“じゃあ、次!”ってどんどん方向転換しながら前に進むんです」
2023年6月で28歳になった。
「若く見られたいとは思わないし、かといって無理に大人ぶる気もない。ちょうどいい年齢かなと思っています。結婚とかもそうなんですけど、年齢とか、周りの状況とか関係なく、したいと思ったらするし、したくなければしない。
自分の感情を重視して動くようにしています。感情で動いてから、あとで自分はこうしたかったんだなと分析しています」
10年後の森香澄はどうなっている?
「今は何でもかんでも挑戦していてそれを楽しく感じています。10年後はもう少し目標が絞れていたらいいですね。それがタレントなのか俳優なのか、もしかすると制作側にいるのかもしれないですけど、これを極めたいと思えるものに出合えていたら嬉しいですね」
軽やかに、したたかに。自分を規定しようとしない彼女だからこそたどりつける場所があるような気がした。