国内外の観光客のみならず、ビジネスパーソンも熱視線を送るのが、今の北海道だ。今回は別荘の新しいカタチに迫るべく、建築家の谷尻誠氏に話を聞いた。【特集 北海道LOVE!】
都市生活者の終の住処を造る
きっかけは釣り竿だった。
「上富良野町に望月雄太さんという竹竿作りの名人がいるんです。2年前、彼に竿を作ってもらおうと現地を訪ね、2泊3日の釣り旅をしたんです。キャンピングカーを借りて、あちこちまわっているうちに素晴らしい景色に魅了され、その時釣りとスノボの拠点になる小屋でも造りたいなと思ったんです」
建築家の谷尻誠さんは、現在富良野の隣の美瑛町に2ヵ所、計約6万㎡の土地を所有。小屋を建てたり、畑を造ったりしながら、さまざまなプロジェクトを進めている。
「最初は本当に小屋程度の建物を造れる土地を探したんですよ。条件は、景色がよくて、人が少なくて、井戸水がとれること。でも富良野とか美瑛だと小さな土地は売っていない。ネットで調べても情報が出てこないから、何度か足を運んで現地の人と交渉を続けました。こちらの本気度がようやく伝わった時に『かなり広いけど、いいところあるよ』と言って連れていってもらったのが最初の土地。そこは約2万㎡だからサッカーコート3面分くらいの丘。そこからは向こうの山が見えて、下には川が流れている。そんな景色、他では見たことがない。一発で気に入って購入することにしました」
もともとは何もない土地。もちろんインフラも整備されていない。「思ったよりも安かった」とはいえ、そういう条件を恐れないところはさすが建築家だ。
「自然に囲まれた土地ですけど、コンビニまでクルマで20分あれば行ける。なるべく自然のもので暮らしたいけど、あまりにも不便なのも困る。そういう意味ではちょうどいい場所でした」
肌が生き返るように感じる「天然のサプリメント」
この土地は、5区画に分けて別荘を建てる構想。そのプロジェクトを進めていたところ、別の土地の話が舞いこんできた。
「最初の土地を紹介してくれた方が『キャンプ場とか造ってみない?』と教えてくれたのが4万㎡の土地。そこを見た時に、妻が共同生活で自給自足できるような未来のケアホームを造りたいと言っているのを思い出したんです。ここを自分も含めて都市生活者の“終(つい)の住処(すみか)”にするのもいいなと。土地も広いから畑も造れるし、20組くらいが生活する小さな村が造れそうだなと思ったんです」
冬場は雪に閉ざされるため、工事などの作業ができるのは1年のうち半分だけ。
「ゼネコンみたいにふんだんにお金があるわけじゃないので、土地と向き合い、少しずつ構想を固めながら進めていければいいと思っています。とりあえず2023年は1〜2軒、泊まれる小屋を造って水回り、キッチン、サウナあたりを整備する予定。あとは畑の土づくりを進めています」
サウナーとしても知られる谷尻さん。実はこの土地が気に入った大きな理由も……。
「とにかく水がいいんです。特にサウナでは違いが歴然。肌が生き返るような感じになります。天然のサプリメントだと思っています。釣りをしていても魚がイキイキ、キラキラしているんですよ。この水で育つ魚や野菜を食べれば、人間もきっと健康的になれるはずです」
美しい景色があり、清らかな水がある。それこそ北海道の何よりの魅力なのだろう。
Recommended Restaurant&Place in Hokkaido 3選
①美瑛|ちゃい
「店はプレハブ造りで簡易的ですが、担々麺が絶品。美瑛に行ったら毎日食べてます」
住所:北海道上川郡美瑛町旭町1-1-4
TEL:0166-73-9621
instagram:@chai_biei
②美瑛|SSAW BIEI
「毎日顔を出します。気持ちのいい店なので、お茶を飲むためだけでも行く価値がある」
住所:北海道上川郡美瑛町拓進
TEL:080-4076-4413
③富良野|吹上温泉保養センター 白銀荘
「とにかくサウナが最高。サウナ好きの間では有名で全国からサウナーが集まってきます」
住所:北海道空知郡上富良野町吹上温泉
TEL:0167-45-4126
この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら