国内外の観光客のみならず、ビジネスパーソンも熱視線を送るのが、今の北海道だ。今回は教育の新しいカタチに迫るべく、CEAグループ代表のフェイフェイ・フウ氏に話を聞いた。【特集 北海道LOVE!】
英国王室で体感した学びを次世代に伝える
ラグジュアリーホテルが続々開業し、とりわけ海外から注目を浴びるニセコ。現在、隣接する共和町ワイス地区になんと東京ドーム約49個分という広大な敷地を得て、ボーディングスクールを含めたラーニングコミュニティの開発が進行中だ。
そのキーパーソンが日本で英国カリキュラムを基盤とするインターナショナルスクール3校を運営するCEAグループ代表フェイフェイ・フウさん。
実はイギリス王室でチャールズ現国王陛下(当時皇太子殿下)の側近として稀有な経歴を持つフェイフェイさん。教育や北海道に深く携わるきっかけも、その経験にあるという。
「国王が設立した子供のための財団『Children&the Arts』では、美術館の中で自由にデッサンをしたり、ヴィヴィアン・ウエストウッドの型紙で洋服を作るなど、幼児といえども触れるのはトップレベルの本物。かたや自分は、クラシックを初めてちゃんと聴いたのがオックスフォード大留学中の20歳の頃(笑)。世界に通用する人間には、ビジネスの交渉術だけではなく、言葉やロジックを理解する前から、素養として本物の文化を体感する必要があると実感しました」
さらにチャールズ国王の「社会や環境の問題の根源は、人間と自然とのディスコネクト(乖離)にある」という哲学も、学びの指針になったという。
「自然を愛する気持ち、自然に潜むリスクや対処も実際に体験しないと理解できない。その体験がこの社会に生きる人間性を育むことになると思いました」
その王室での学びをもとに、他にはない可能性を秘めている場として彼が選んだのが北海道。
「世界が認める豊かな自然環境があり、スキーや乗馬などのスポーツ環境も充実し、2030年の新幹線開通などインフラも整っている。現在、経済成長的に注目されているアジア全体のなかでも、これだけのコンテンツが揃う場所はどこにもありません。そして都会から離れた辺境地ゆえ、空間も考え方も自由度が高い。だからこそ、ここからいろいろな変化を起こすことができる可能性があるんです」
20年をかけて広がるラーニングコミュニティ
「学校が中心ということは、子供が中心になり家族が中心になるということ。そこから必要な機能は有機的に広がっていくはずです。機械的な考えでつくられた街ではなく、ヒューマンスケールで自発的に発展していく街にしたいと考えています」
ゆえに、計画は20年という長いスパンで考えている。
「少なくとも2シーズンは地元に通って四季を経験し、いろいろな人と話をしてアイデアを集めてから、本格的なマスタープランを練る予定です」
例えば校舎を子供たちと一緒に設計するなど、ここでならさまざまな構想も広がるという。
「自然を実体験し、湧き上がる好奇心を自分なりに追求できる、温泉で言えば薄められていない源泉かけ流しのような人材を育てたいですね(笑)。そんな彼らはサイエンスでもアートでもビジネスの分野でも、あるいは哲学や音楽の世界でも、いつかユニコーンとなって社会変革を起こすはず。人間も自然の一部だと感じさせてくれる豊かな自然環境の北海道は、そんな人間性を持ち、世界に羽ばたくユニコーンの卵を育むために必要不可欠な場所だと思っています」
Recommended Restaurant&Place in Hokkaido 3選
①安平町|そば哲 遠浅店
「蕎麦の実も自家製。離れから蕎麦畑を眺めながらお蕎麦や冷酒を味わうのが至福の時間」
住所:北海道勇払郡安平町遠浅594
TEL:0145-22-3733
Instagram:@sobatetsu_toasa
②ニセコ|SHIGUCHI/シグチ
「すべてが本物で構成された空間。石をくり抜いた湯船に入れば、いつもより深い睡眠に」
住所:北海道虻田郡倶知安町花園78-5
TEL:0136-55-5235
③共和町|ワイス高原
「プロジェクトを展開するワイス地区の高原からは360度パノラマビューの山々が望める」
住所:北海道岩内郡共和町ワイス
この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら