真のグローバル人材を育むべく、日本初となる全寮制小学校として開校し話題を集める、広島県にある神石インターナショナルスクール、通称「JINIS」。年間費用800万円にも納得の、充実した教育や体験、施設などを、創設者であり、理事長を務める末松弥奈子さんに紹介してもらおう。
神石インターナショナルスクールの授業は日本式とイギリス式の2本立て
周囲を山々に囲まれた広島の雄大な自然の中で、日本をホストカントリーにバイリンガル教育を授けるインターナショナルスクールがJINIS。日本初の全寮制小学校であるJINISで行われているのは、文部科学省の学習指導要領と、イギリスのナショナルカリキュラムをベースにしたIPC(インターナショナル・プライマリー・カリキュラム)を統合したオリジナルのプログラムだ。卒業後は、海外のボーディングスクールに進学を希望する生徒が大半なものの、日本の一条校(学校教育法の第一条に書かれている教育施設のこと。国が学校だと認めた施設を指す)でもあるため、国内の私立や公立中学校に進学することもできる。
「日本の理系教育は、世界的にみてもレベルが高く、優秀ですので、JINISでも積極的に行っています。また、日本的な価値観や振る舞いを学べる道徳や、町役場や消防署を訪れる社会科見学など、日本で当たり前に行われている授業も取り入れ、日本人としてのアイデンティティを育むことにも力を入れています」と、理事長を務める末松弥奈子さんは説明する。
一方、イギリスのナショナルカリキュラムをベースに、世界中にあるインターショナルスクール向けに開発されたIPCは、主体的かつ創造的、協同的に探究活動に取り組むことに重きを置いている。
「教科横断的な授業を通じて、子どもたちの探求心を育むのが特色だと思います。週末は、敷地内のファームでの農業体験や、学校の牧場での教育を行っていますが、これらはIPCがベースなんですよ。また、恵まれた広島の自然を生かし、アウトドア教育を通して安全教育や防災教育も行っています」
授業は1日9コマでも、詰め込み感ゼロ
実際、子どもたちはどんな生活を送っているのか、1日のスケジュールをもとに見ていこう。
平日のスケジュールで、まず目を引くのは授業数の多さだ。授業は1回30分と、日本の一般的な小学校の45分に比べ短いものの、9時間目まで設定されている。これは、JINISが日本の学習指導要領に基づいたカリキュラムのほかに、IPCを導入しており、学ぶ内容が多いためだ。ただし、昼食時間以外にスナックタイムを設け、育ち盛りの子どもたちの栄養補給やリフレッシュにも気を配っている。これは、インターナショナルスクールならではと言えよう。
「1日9コマは確かに多いと思います。ですが、IPCは体験型の授業が多いので、子どもたちは楽しんで学んでいますよ」
9時間目の終了後、夕食までの2時間に、プライベートレッスンなるものが設定されている。学校が用意したクラブ活動以外に、子どもが希望するものがあれば、講師や指導者を探し、個人レッスンを施すのだという。現在は、ピアノやヴァイオリン、お琴といった音楽系と、ボルダリングや総合格闘技などスポーツ系を習っている子どもたちがいるそうだ。
プライベートレッスンを設けていることについて、「幼少期にさまざまな体験を積んでいれば、何に対しても臆することなく、『やってみよう』という気持ちになるのではないかと思います。人生を楽しむことを学ぶという意味でも、子どもが興味を持ったことは、全力でサポートするつもりです」と、末松さん。
「とくに音楽とスポーツは、世界中の人々と言語を介さずにコミュニケーションできるツールなので、子どもたちには積極的にチャレンジしてほしいですね」
週末は、スポーツやフィールドワークといった課外活動に加え、時にはショートトリップに出かけることも。瀬戸内海に浮かぶ島々を巡ったり、古い街並みが残る尾道を散策したり、地元に本拠地を置くプロ野球チームやサッカーチームの試合観戦に出かけたり。岡山県にある大原美術館や、香川県で開催される瀬戸内国際芸術祭など、本格的なアートに触れる機会も設けるなど、情操教育も万全だ。
音楽、スポーツ、アート、自然体験。これだけのことを、家庭で子どもに与えるのは、かなりハードルが高い。24時間プロに教育を任せる魅力は、こんなところにもあるのだろう。
食事は松嶋啓介監修、制服は芦田多恵デザイン
魅力的な教育プログラムが整っているJINISだが、驚くのはそれだけではない。広大な敷地には、学校・寮エリアやスポーツエリアのほか、本格的な日本庭園を設け、寮内には、広くて清潔な大浴場も完備。このままホテルに転用できそうなほどの充実ぶりだ。
また、寮で提供される食事は、フランス・ニースと東京に店を構える松嶋啓介氏が監修し、制服は、芦田多恵さんがデザイン。幼い頃から、“本物”に囲まれて暮らすことで、感性もまた磨かれるのだろう。
2020年に、1~3年生でスタートし、3年目の現在は、5年生を筆頭に42名の子どもたちが、共に暮らし、学んでいる。子どもたちが生活する寮には、海外経験を持つ5人のハウスペアレントがおり、基本的な生活習慣やマナーを身に着けるサポートもしているという。
第二の家庭をコンセプトに、ハウスペアレントたちが家族的な雰囲気で接しているとはいえ、小学生の子どもたちだ。家が恋しくなることはないのだろうか。
「新入生のなかには、ホームシックにかかるお子さんもいらっしゃいますが、“先輩”が『私も最初はそうだったよ』などと、やさしく寄り添っていますね。そうするうちに、だんだん寂しさは克服されていくみたいです。週に1度・30分間、ご家族とビデオ通話をする時間もとっていますが、なかには、まだ時間が残っているのに、『みんなと遊びたいから、もう切るね!』なんてお子さんもいらっしゃるんですよ(笑)」
何から何までビッグスケール、至れり尽くせりの小学生向けボーディングスクール。費用を考えると、誰にでも開かれているとは言い難いが、日本における教育の選択肢がひとつ増えたのは歓迎すべきことだ。ここで育った子どもたちが、いつの日か、真のグローバル人材として世界に羽ばたくのを期待したい。
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神石インターナショナルスクール
住所:広島県神石郡神石高原町時安5020-77
Minako Suematsu
1993年学習院大学大学院修士課程修了後、インターネット関連ビジネスで起業。2001年ニューズ・ツー・ユー(現ニューズ・ツー・ユーホールディングス)を設立。'17年ジャパンタイムズの代表取締役会長・発行人に就任。'20年4月、日本初の文科省認定の全寮制小学校・神石インターナショナルスクールを広島県神石高原町に開校、運営母体である学校法人神石高原学園・理事長に就任。