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2022.04.09

【平原依文】8歳で中国へ単身留学、培われた国際人としての嗜み──連載【起業家の星】Vol.01

志を高く持ち、夢を語り、世界に一石を投じるのは、いつの時代も若手の起業家たちだ。未来を形づくるその仕事に迫り、明るい社会を期待せずにはいられない起業家の想いに光を当てる本連載。第1回目は幼少期から大学まで、中国、カナダ、メキシコ、スペインへ留学してきた稀有な経験を持つ、WORLD ROADの平原依文さんへのインタビュー前編。

中国、カナダ、メキシコ、スペインへ留学して育まれた国際人としての意識

TBS「サンデーモーニング」の新しいコメンテーターに就任。その名が一気に全国区になったのが、平原依文さん(28)だ。

「若い人の意見を届けたいと思っているんです。若者だって、ちゃんといろんなことを考えていますよ、とお伝えしたくて」

2019年に設立した会社「WORLD ROAD」の共同代表を務める。「地球をひとつの学校にする」をミッションに、企業や自治体に対してSDGsのコンサルティングを行ったりして、教育機関、小中高大学で授業を行っている。世界中の社会起業家を、日本の子どもたちとオンラインでつなぐことも。

学校をつくることが夢なんです。しかも、年齢、世代、国籍、あらゆる境界線を溶かし、みんなが先生、生徒になれるような学校をつくりたいんです

ユニークな経歴を持つ。小2のとき、同じクラスにいた中国人の女の子との出会いをきっかけに、中国に留学した。驚かされるのは、小学生が自ら希望し、たった一人で全寮制の学校に入ったことだ。12歳からはカナダに移り、16歳でメキシコ留学も経験した。

「教育が人を苦しめることもあれば、豊かにすることもある。その2つの局面を留学したときに実感しました」

歴史をめぐって対立がある中国では、先生から新しい世代で新たな歴史を作ってほしい、と言われた。カナダでは、同級生たちが集まって、将来について真剣に議論していた。しかも、既存のレールにとらわれることなく、まったく自由に。

日本の幼なじみは、いつ会っても受験に追い立てられていました。教育の主軸が自分ではなく、どの学校に行くか、や、どの会社に入るか、になってしまっていたんです。自分が社会を豊かにできる、という考え方を、もっと日本に届けたいと思うようになりました」

その後、日本に帰国して大学へ。コンサルティング会社を経験してから起業しようとインターンとして働き、内定も得ていた。そんなとき、医療業界で働いていた父ががんで余命宣告を受ける。最後まで誇りを持って生きた父を見て、同じ道に進むことを決め、世界最大級のヘルスケアカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。デジタルマーケティングの仕事に従事した。

「とても大好きで、素晴らしい会社でした。だからこそこのままでは自分の夢を忘れて、ずっとこの会社にいてしまいそうだったんです」

何のプランもなく退職した。そんなときに声をかけてくれたのが、元グーグルのピョードル・グジバチさんだった。大学在学中にスペイン留学を決め、スペインバルでアルバイトをしていたとき、常連客だったのが彼。ちょうど起業してプロノイアグループを設立するタイミングで、手伝わないかと誘われた。

仕事の必需品。Mac、AirPods、メモ帳(その人が大切にしている言葉を敢えて手書きで記録)、そして研修や講演が多いため自分用マイクも。

SDGsの最終的なゴールは境界線のない世界を実現すること

「未来創造企業を標榜していて、誰もが自己実現できる社会を作りたい、と彼から聞きました」

これは自分の夢の延長線上にあると感じた。自分がやりたいことを、一緒に作りたい企業に提案してやっていこう、というのが会社の考え方。ピョードルさんと同行するなどして、経営者との接し方などの学びを得た。折しもSDGsが世界的な話題になっていた。その最終的なゴールは、境界線のない世界を実現することだとわかった。

私が目指していたのは、境界線のない学校をつくること。企業のSDGsを支援していくことは、自分の夢にもつながっていくということに気づきました」

在職しながら起業準備を推し進め、会社を設立した。法人向けのSDGsコンサルティング・ブランディング事業では、SDGs達成に向けて、企業がどんな新規事業開発ができるかなどの相談に乗る。教育機関向け事業は共同代表が中心になって授業や、授業のためのコンテンツづくりを実施。教材として使われる書籍『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGSs』(いろは出版)も刊行した。

SDGsをめぐる状況は、この2年で大きくフェイズが変わりました。わかりやすいところでは、問い合わせをしてくる窓口の変化です。以前は、サステナビリティ推進室や広報だったものが、今では経営企画やマーケティングの部署からになっています」

企業はもはやSDGsをお題目だけにはできなくなってきている。そこで組織や予算を変え、かつての本業とは別のCSR的な取り組みではなく、本業がそのままSDGsに直結するような新しい取り組みが求められてきているのだ。

「すでに投資家や金融機関の評価指標の一つにもなっています。その企業や事業は何のために存在しているのか。存在意義をたどって、新たにできることを見つけていくことが求められています」

これまでの企業の経営戦略は、中長期といいながら短期の数字ばかりを見ていた。しかし、SDGsを指標にすれば中長期で考えなければいけなくなる。

「リターンも1〜2年から、5年、10 年という期間を見据えて事業戦略づくりをしていく必要があります」

そのサポートをする。クライアントの5割は大企業、中小企業からの相談も増えてきているという。青年会議所などの組織からの問い合わせも多い。だが、実はWORLD ROADの社員は3人しかいない。それを可能にしている経営術とは、どのようなものなのだろうか。

※後編「中高生と企業をマッチング! ビジネスとSDGsの境界線を溶かす先導者」はこちら

平原依文さんの素顔が垣間見える一問一答!

Q1 朝ご飯は食べる派?
はい、プロティンシェイク「モーニングルーティン」を飲んでいます。

Q2 朝のルーティンは?
起きて、すぐにシャワーを浴びて、お茶を飲みながら、よく考えてから返信しようと思っていたメールに返事をします。

Q3 食事で気をつけていることは?
ないです。好きなものを食べています(笑)。

Q4 移動時間や隙間時間は何をしますか?
犬2匹と遊んだり、UKアーティストのRUDIMENTALの音楽を聴いたりします。

Q5 今、何料理が食べたいですか?
韓国料理!

Q6 好きな本は何ですか?
「ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち」

Q7 好きなYouTubeは?
「旅する家の物語」

Q8 語学の勉強で大切なことは?
どう伝えるかよりも、何を伝えるかが大切です。

Q9 1日で一番好きな時間帯はいつですか?
夜寝る前。ワンコに触りながらの読書タイムが好きです。

Q10 1日の終わりにすることは?
自分への手紙を毎日書いています。
今日1日の喜怒哀楽、相手から言われて嬉しかったことなど。

Q11 1週間休みがあったら何をしたいですか?
ニュージーランドに星を見に行きたいです。

Q12 自己投資するなら何をしたいですか?
健康寿命を伸ばすためのカラダづくり。

Q13 何か運動はしていますか?
週に1回のセミパーソナル。アニマルフローを学んでいます。

Q14 最近行った場所で素敵だったところは?
広島県・尾道。

Q15 睡眠時間はどのくらい?
5時間

Q16 仕事以外で挑戦してみたいことは?
2ヵ月おきに色々な国に住んでみたい。1年で6ヵ国、ニュージーランド、モンゴル、フィンランド、デンマーク、韓国、そして最後は留学先だったスペインに戻りたいです。

Q17 旅行に行く際の必需品は?
なし。どこに行くにせよ、リュックひとつ。

Q18 もう一度訪れたい場所はどこ?
スペイン・バルセロナ。原始時代みたいにいまだに物々交換がある街でその人間味あふれる雰囲気が好き。

Q19 私こう見えて○○なんです
めんどくさがり屋です。プライベートは動きません(笑)。

Q20 今ハマっていることは?
韓国ドラマ「結婚作詞、離婚作曲」

Q21 両親の教育方針で感謝していることは?
自己責任

Q22 これがないと生きていけないと言うものは?
家族

Q23 精神的に強くなるために意識していることは?
比較しない。引きずらない。

Ibun Hirahara
平原依文(ひらはらいぶん)/World Road 共同代表取締役
早稲田大学国際教養学部卒業。新卒でジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。その後、長年の夢である教育ビジネスを実現するためプロノイア・グループに入社。2019年に、幅広い世代へのSDGs教育のため「地球をひとつの学校にする」をミッションに掲げるWorld Roadを設立。ひとりひとりが自分の軸で生きる境界線のない社会を目指し活動を行う。Twitter:@ibunhirahara

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TEXT=上阪 徹

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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